KAKERU「ちぬれわらし」(2022年2月20日初版第一刷発行)

 どこにでもある怪談話の一つ「ちぬれわらし」。
 「ちぬれわらし」は「血塗れでおかっぱ頭で顔のない女の子」で、鏡の中や曲がり角、窓の隙間などからこちらをじーっと見つめるという。
 そして、この話を聞いた人は「ちぬれわらし」にとり憑かれ、別の三人の人に話さないと、とり憑かれたまま死んでしまうという。
 他にも退散の方法があり、それは「安産祈願のお守りを両手でしっかり包んで『ちぬれわらしさん どうぞ中にお入りください』って三回唱えてお守りを燃やす」というものであった。
 単なるネット怪談のようだが、その裏に潜む想像を絶する恐怖とは…?

・「第1話 ちぬれわらし」(上巻)
「埼玉県のある高校。
 御門みもり(眼鏡っ子)、丸山まどか(子供っぽい)、宿儺えあ(クール&利発)、月野なかば(男っぽい)は仲良し四人組。
 ある日、帰りのバスの中で、まどかが「ちぬれわらし」の話をする。
 陳腐な怪談話ではあったが、彼女たちは大盛り上がり。
 ただ一人、みもりはバスの中で着物姿の女の子の姿を見たような気がする。
 これが恐怖の始まりであった…」

・「第2話 確認」(上巻)
「みもりは何度も血まみれの着物姿の女の子を目にするようになる。
 両親は彼女を心配し、病院で検査してもらう。
 結果は正常で、彼女は安心して学校に行くが、そこでまたもや女の子を視る。
 しかも、今回は宿儺えあも彼女と同じものが視えていた…」

・「第3話 摸索」(上巻)
「みもりとえあが恐慌を来す中、月野なかばが状況の整理する。
 まず、「ちぬれわらし」が視えているのは、みもりとえあの二人。
 丸山まどかは一年前からこの話を知っており、「別の三人に話さないと死ぬ」はどうやら嘘。
 視える視えないを分ける基準は何なのであろうか…?
 次に、彼女たちは「ちぬれわらし」についてネットで調べる。
 この話は四年前に「怖い話のまとめサイト」で紹介されており、閲覧者は数十万人にのぼる。
 しかし、「ちぬれわらし」で変死したという話はなく、助けを求めている人もいない様子。
 また、掲示板で「ちぬれわらし」について尋ねても、実のある回答は返って来ない。
 その晩、彼女たちはまどかの家に泊まる。
 入浴後、まどかの携帯電話で掲示板をチェックすると…」

・「第4話 復讐者」(上巻)
「彼女たちにアクセスしてきたのはオカルト雑誌の記者の狩谷真弓(32歳)であった。
 彼女たちは彼とファミリーレストランで会い、彼から「ちぬれわらし」についてわかっていることの資料を渡される。
 狩谷真弓の婚約者は「ちぬれわらし」を視るようになってから三か月後に変死していた。
 しかも、その死に方は腹部に大量の腫瘍ができ、それが下腹部を吹き飛ばしたという凄惨なものであった。
 ただし、実際には「ちぬれわらし」については不明なことの方が圧倒的に多い。
 狩谷には宇野麗という霊能者の知り合いがおり、協力を仰ぐ…」

・「第5話 霊能者」(上巻)
「宇野麗によると、「ちぬれわらし」は「水子霊」や「幼児の霊」の集合体らしい。
 とり憑かれないためにはとにもかくにも拒絶するしかないが、相手は子供の霊で決して諦めることはない。
 みもり達を救うために、宇野麗は静岡から埼玉に出てくる…」

・「第6話 浸蝕」(上巻)
「宇野麗が考える「除霊」は結界の中にみもりとえあに入れ、お祓いをした後、彼女たちの髪の毛を入れた人形を結界の外に放りだして、「ちぬれわらし」の気を逸らした隙に結界から車に飛び乗って逃走…という方法であった。
 成功率は恐ろしく低いが、事態は予想以上に切迫しており、宇野が来た翌日の昼には決行することとなる…」

・「第7話 排除」(下巻)
「宇野による命がけの除霊はあえなくも失敗する。
 霊に襲われた宇野は急いで結界へと避難し、後ほど、みもり達に連絡がある。
 除霊が失敗したのには宇野の勘違いが原因であった。
 みもり達にとり憑いていたのは…?」

・「第8話 許容」(下巻)
「丸山まどかは今回の事件は自分に責任があると両親の呵責に苛まされていた。
 彼女は友人たちを救う妙案を思いつき、宇野のいるホテルに向かう。
 宇野は「ちぬれわらし」に喧嘩を売ったことで、数日後には死ぬ運命にあった。
 まどかは彼に「ちぬれわらし」の願望を満たすことが解決法だと話す。
 そのためには…」

・「第9話 承認」(下巻)
「みもり、えあ、なかばの三人はまどかの思いを知る。
 生き残る確率を高めるためにも、みもりとえあもまどかと同様に…」

・「第10話 救済」(下巻)
「二か月後の冬。
 遂に待望の「憑代(よりしろ)」ができる。
 宇野はそれに「ちぬれわらし」を降ろす儀式を行う…」

・「第11話 干渉可能」(下巻)
「儀式は成功し、もう「ちぬれわらし」はいない。
 そこに狩谷がやって来るが、彼の目的とは…?」

・「最終話 血塗れ童」(下巻)
「みもり、えあ、まどかは「ちぬれわらし」が日々、育つのを感じていた。
 そんなある日、えあが「ちぬれわらし」についてある疑問を投げかける。
 彼女たちが会う「ちぬれわらし」はどういったものなのであろうか…?」

 作者によると、「ちっちゃなおばけと女子高生たちが織り成す愛と友情のホラー風ハートフルストーリー」とのことです。
 まあ、そういう要素もあることはありますが、そこまでかわいらしいもんでもないです。
 ホラーとしては、コレ、かなり怖いです。
 pixiv(注1)で数年かけて描かれただけあって、ストーリーはかなり練られてます。
 ラストは衝撃的で、かなりの精神的ダメージを受けるレベルです。
 更に、ゴア描写は非常にエグく、「ちぬれわらし」の凶悪面もだしぬけにドアップで出てくるので非常に心臓に悪いです。
 と、ホラーとしてはいいのですが、作者としては「エロいの」も描きたかったとのことで、ここが評価の分かれ目になると思います。
 下巻は女子高校生が中年デブ男とひたすらまぐわる描写がてんこ盛り。
 個人的には、そこまでありがたみを感じませんでした…。
 とりあえず、単行本の表紙画像を見て「良さそうだ」と思った人で、ホラーとエロを求めているのなら、読まれて損はないでしょう。

・注1
 pixivは存在は知っておりますが、詳しいことはわかりません。
 優れた作品が多くあるんだろうけれど、見る時間がないんです…。

2025年3月6・7日 ページ作成・執筆

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