高階良子「パンドラの秘密」(1980年9月20日初版・1981年1月10日再版発行)

 収録作品

・「パンドラの秘密」(注1)
「葵昌吾は類まれなる腕を持つマジシャン。
 彼の助手は由貴という15歳の少女であった。
 高校三年の俊と加奈はふとしたきっかけで由貴と知り合う。
 由貴は「パンドラの箱」と呼ぶボックスパズルを解ける人を探しており、マジック好きの加奈はそれに興味を示す。
 このボックスパズルは葵昌吾が作ったもので、中には由貴の「思い出」が入っているという。
 由貴は六年前ぐらいには両親と共に暮らしていたらしいのだが、その頃のことを思い出せずにいた。
 そして、気が付けば、葵昌吾と共に暮らしていて、昌吾は彼女が他人と付き合うことを極端に嫌う。
 加奈は何日もかけてボックスパズルを解くのだが…。
 その中に封じ込まれていたものとは…?」

・「ネアク夫人」(1979年「別冊ビバプリンセス」秋号)
「小野垣社長の右腕、直は、社長の娘、宮子との結婚を断り、万弥を選ぶ。
 二人はカンボジアで結婚式をあげる前に、アンコール遺跡の観光に出かける。
 だが、直が飲み物を買いに行った隙に、宮子は万弥をナーガ(蛇神)の塔にて毒蛇で殺害。
 直は万弥を捜すが、見つからず、一年後、宮子との結婚が決まる。
 そのお披露目パーティに、ネアク夫人という女性が出席する。
 ネアク夫人は愛称で、素性は誰も知らず、また、目が少し不自由とのことでサングラスを決して外さない。
 そして、その若さにも関わらず、財界の陰の立役者と言われていた。
 直は、彼女に万弥の面影を見出し、心乱される。
 彼女もまた、彼のことをよく知っているようで、ある夜、二人は深い仲となる。
 直はネアク夫人の正体に気づくのだが…。
 ネアク夫人が彼にもたらすものとは…?」

・「竜神氏の遺産」(1980年「プリンセス」1月号)
「冴子は、友人達と共に、信州S湖畔の村を訪れる。
 そこは観光や娯楽施設は皆無であったが、自然が手つかずのまま、豊富に残されていた。
 何でも、ここらあたりの土地は竜神氏という人物のもので、決して手放そうとはしないのだという。
 また、竜神氏には、祖先の一人が湖を愛するあまり、竜となり、この地の守護神になったという言い伝えもあった。
 旅館に泊まった夜、冴子のもとに、昼間、見かけた青年が現れる。
 彼は、彼女を闇の中に開いた通路に案内すると、その先は、竜神氏の邸の一室に通じていた。
 そこでは、集まった親戚一同の横に、余命幾ばくもない竜神氏が臥せっていた。
 竜神氏は冴子を自分の孫と呼び、彼女に後継者たる「竜の翡翠」のペンダントを授ける。
 朝、冴子が目覚めると、そこは旅館であったが、首にはペンダントがかかっていた。
 翌日、竜神氏の邸を訪れるものの、扉は固く閉ざされ、二日後、冴子は東京に戻るのだが…。
 「竜の翡翠」に宿る力とは…?
 そして、冴子に陰のように付き添う青年の正体とは…?」

・「ふしぎな国の黒兎」
「美里の恋人の稔は度々、黒兎の幻覚を視る。
 その黒兎を目にすると、どうしてもその後についていってしまい、奇妙な世界に入り込んでしまうのであった。
 彼の話を聞き、美里は従妹のやよいのことが思い当たる。
 やよいは身体が弱い女の子で、稔に憧れの念を抱いていた。
 そして、やよいの好きな本は「丹鶴姫と黒兎」(注2)。
 やよいのお願いとは…?」

 昔話と「不思議の国のアリス」とバッドトリップが同居する「ふしぎな国の黒兎」はなかなか奇妙な味わいです。
 かつ、バッド・エンドで、隠れた逸品かも。

・注1
 登場人物の葵昌吾と助手の由貴は、名作「マジシャン」とかぶります。
 番外編になるのかな?

・注2
 熊野三山の新宮市に伝わる伝説とのこと。
 にしても、子供向けの絵本で扱うには、ヘビー過ぎる内容ではなかろうか…。

2022年6月27・28日 ページ作成・執筆

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