高階良子「サーカス殺人事件」(2003年6月20日初版発行)

 収録作品

・「サーカス殺人事件」
「時は平成。
 T市にサーカスの一座がやって来る。
 T市は第一次世界大戦で財を築いた堀川家と共に繁栄し、戦後、堀川家の没落と共に寂れた町であった。
 サーカス開催の前日、猛獣使いのゴンが虎に噛み殺される。
 虎のメリーは興奮剤のようなものを飲まされていたが、団長はこれを事故死として片づける。
 ゴンは没落した堀川家の遠縁で、近々大金が入るとうそぶき、他の団員達を自分のサーカスに入るよう勧誘していた。
 ゴンの死の後も、空中ブランコ乗りの麗の事故死、ピエロのエッサの撲殺と惨劇が続く。
 そして、魔手は堀川家の孫娘、沙良にも伸びる。
 空中ブランコ乗りの樹野本零は真相に気づき、沙良に会うため、堀川家を訪れるのだが…」

・「地獄岳殺人事件」
「地獄岳で重傷を負って発見された女性は資産家の娘、浅沼リエであった。
 だが、リエは記憶障害を起こし、自分のことを全く覚えていない。
 更に、行き先も告げずに旅行に出たはずの両親が床下から死体となって発見される。
 家政婦の松本志乃によると、リエは施設から引き取られた子供であったが、それは大切に育てられたが、最近、リエと両親の間で重大なトラブルがあったらしい。
 リエは真犯人を見つけるために、記憶を取り戻そうとする。
 一方、警察では、彼女の見合い相手だった新井芳樹を彼女に接近させる。
 彼女の身辺をうろつく河内智成という男は何かを知っているようなのだが…。
 そして、同じ地獄岳で死体となって発見された萩野杏子に謎を解く手掛かりがあるとリエは考え、彼女の住所を訪ねると…」

・「無花果殺人事件」(「ミステリーボニータ」2003年4月号)
「私立柳沢高等学校。
 一年生で文芸部の内海亜紀は須賀野先生に一目惚れをしていた。
 須賀野は陰気で、人を寄せ付けない雰囲気があり、昼休みには一人、校庭の隅で無花果を食べていた。
 彼によると、自宅の庭に大きな無花果の木があり、三年前まではよく取れたが、最近は取れなくなっているという。
 ある時、亜紀は何故自分が須賀野に惹かれるか考えていて、姉のことを思い出す。
 姉の沙紀は亜紀が小学生の頃には大学生で、彼女が好きだった大学の先輩が須賀野であった。
 その姉は何かに悩んでいて、行方不明になるが、靴と上着が海に面する断崖に残されていたため、自殺とみなされる。
 父親は沙紀の死について何かを知っていた様子であったものの、何も語らないまま、病気でこの世を去っていた。
 ある休日、亜紀は須賀野の家を訪問する。
 彼女が須賀野に告白すると、彼も彼女のことが好きだと言って、姉の沙紀について言及する。
 須賀野は沙紀を「命かけて愛し」、彼の中で永遠に生きていると涙を流す。
 姉の沙紀の死の真相とは…?」

・「緋色の悪夢殺人事件」
「津川真貴は19歳の大学生。
 彼女は養女であったが、会社社長の父親と優しく美しい母親は真貴を深く愛していた。
 ある日、真貴は父親の会社前に呼び出され、篠田容子のとび降り自殺を目の当たりにして気絶する。
 篠田容子は、会社の社員の篠田の妻で、真貴とは面識はないが、結婚前、篠田は真貴に付きまとっていた。
 更に、その篠田がマンションの自宅で滅多切りにされて殺害される。
 真貴は意識を失っている間、篠田を殺すシーンを夢に見ていた。
 また、父親の甥の唯尚は、真貴が篠田のマンションに入り、血まみれの服で出てくるところを目撃していた。
 真貴は実際にはありえない記憶や感覚の数々を思い出し、「もう一人のわたし」がいるのではないかと考え、苦しむ。
 父親は彼女の話を聞いて、何か思い当たる節があるようなのだが…」

 「地獄岳殺人事件」は、途中で真相がわかってはしまいますが、まとまりが良くて、この単行本ではベストだと思います。
 「緋色の悪夢殺人事件」もアダルト・テイストで悪くはないけど、若干、釈然としないところがあって残念…。(ネタバレになるので詳しくは書けませんが、何故、今頃になって通じ合うのか?…とか。)

2023年4月24日 ページ作成・執筆
2024年4月14日 加筆訂正

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