前村綾子「呪い」(1989年3月20日初版発行)

 収録作品

・「呪魂(のろいだま)」
「田舎育ちで、引っ込み思案の小磯冴子。
 東京の中学校へ転向するも、学校生活になじめず、クラスで孤立していた。
 ある雨の日、下校しようとした彼女は、校門に一人佇む少女に気付く。
 傘に入るよう勧めたことがきっかけで、冴子は少女の屋敷を訪れる。
 少女は、Eクラスの日高美沙子と名乗り、広い屋敷に一人で住んでいた。
 美沙子は母子家庭で、ピアニストの母親は、演奏旅行で不在が多かった。
 寂しい者同士、冴子と美沙子は友達になる約束をする。
 だが、冴子は徐々に身体の不調が募っていく。
 同じクラスの堀知世は冴子のことが気になるのだが…」

・「呪いの夜想曲(ノクターン)」
「アンティーク好きの少女、野村恵美は、一枚のレコードを手に入れる。
 レコードは、八雲すずかという女性の「嘆きの夜想曲」というピアノ曲であった。
 恵美はこのレコードに人の呻き声のようなものを聞く。
 また、夢の中で、八雲すずかが妻子ある恋人と引き離される光景を見る。
 男友達の親戚が音楽関係の仕事をしているというので、恵美は彼にそのレコードを貸す。
 ノイズについてはよくわからなかったが、八雲すずかは十年前、彗星の如く現れ、「嘆きの夜想曲」を大ヒットさせた後、突如姿を消したらしい。
 その夜、恵美は、血まみれの八雲すずかが助けを求める夢を見る。
 彼女はレコードの前の持ち主を捜し出すのだが…」

・「呪いの交差点」
「宮脇京子と秋名都は大の仲良し。
 誕生日は一緒で、幼稚園からずっと一緒であったが、内気な京子と対照的に、都は美人で、賢く、性格も明るかった。
 だが、二人の前に、二村慎也という転校生が現れてから、状況は一変する。
 隣の席になった慎也に京子は一目惚れをするが、ことあるごとに都が二人の仲に押し入る。
 京子は、都の子分扱いされているように感じ、次第に嫉妬の念を募らせていく。
 三人でピクニックに出かける日、待ち合わせまで時間があったので、京子と都は自動車の解体場に忍び込む。
 そこで、都は、自動車をスクラップにする穴に転落。
 京子は、都を見殺しにするのだが…」

・「呪われた蝶」
「上村夏子は、荒んだ母子家庭で育った少女。
 そんな彼女が、生物を教える東郷先生に恋をする。
 男友達の昌樹に教えられ、日曜日に夏子は東郷の屋敷を訪れる。
 彼の屋敷には素晴らしい蝶の標本のコレクションがあり、東郷は「幻の蝶」について話す。
 その蝶は、三百年前に南の島で生贄を捧げられ、祀られた、悪魔の蝶と本に記されていた。
 東郷には病気で寝たきり妻がおり、夏子が帰ろうとすると、東郷は彼女を送ってくれる。
 後日、夏子は東郷に食事に呼ばれるのだが…」

・「たたり」
「友人達とハイキングに出かけた亜衣。
 そこには、昔、人を食べる魔物を封じ込めた「鬼ヶ洞」というほら穴があった。
 地元の老人の警告にも関わらず、亜衣と良子は「鬼ヶ洞」を見に行く。
 途中、ガラの悪い男達に絡まれ、鬼ヶ洞に逃げ込んだ二人は、洞窟内の崖から転落。
 その時、亜衣に魔物が憑りつき、良子を食い殺してしまう。
 以来、亜衣の周囲で奇怪な出来事が起こるようになり、彼女は魔物に憑りつかれたのではないかと怯える。
 彼女は、男友達の紺野ともう一度、鬼ヶ洞を訪れるのだが…」

・「戦慄の呪い屋敷」
「父親が、会社の人から買った屋敷が、舞子はどうしても好きになれない。
 しかも、引っ越した晩に母親が原因不明の病気で倒れ、父親は病院で、舞子は夜、一人。
 そこで、友達の昌代と赤座に泊まりに来てもらう。
 その夜、舞子は、着物姿の女性が廊下を歩いて、寝室に入ってくる場面に遭遇する。
 以来、夜毎、舞子は、着物姿の若い娘の幽霊を目にするようになる。
 この娘の正体を突き止めるため、舞子は、屋敷の前の持ち主に話を聞くのだが…」

 怪奇マンガでは、恐らく、二冊の単行本を出している、前村綾子先生。
 絵柄は、耽美な頃のまつざきあけみ先生の影響を強く受けたものでしょうが、いざ怪奇シーンとなると、楳図かずお先生のタッチが乱入しまくり、味わい深いです。
 個人的なベストは、楳図テイストの濃い「呪われた蝶」。ラストに現れるモンスターのB級さ加減が素晴らしいです。 

2018年11月13・14日 ページ作成・執筆

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