前村綾子「霊感少女シリーズ@ アクアの呪い」(1991年4月25日初版発行)

 収録作品

・「鬼門」
「美佐子の家では、祖母と同居するために、二軒続きの隣家を買い取って、壁に出入り口を作る。
 祖母を迎える準備をしている時、家の中に、見知らぬ娘が無断で入り込んでいた。
 美佐子が学校で友人に聞くと、その娘は、同じ光城学園の黒沼みかげであった。
 みかげは、霊媒師の祖母と二人暮らしで、彼女も霊視能力を使って、商売していた。
 美佐子がみかげに会いに行くと、みかげは美佐子の家にもの凄い霊気を感じたと話し、隣家への出入り口をふさぐよう警告する。
 お金を請求されたことに腹を立て、美佐子はみかげの言葉を無視するが、祖母が移ったその夜に、祖母は体調不良を起こす。
 美佐子は金を払って、みかげに話を聞くと、隣家への出入り口が「鬼門」になっているとのことらしいのだが…」

・「アクアの呪い」
「演劇部では、高校演劇コンクールで「氷の森」をやることとなる。
 佐賀薫は自分がヒロインに選ばれると思っていたが、知立(ともだて)部長は、転校したばかりの鹿島ちひろを選ぶ。
 薫は知立部長に憧れており、黒沼みかげに彼の心を占ってもらう。
 占いの結果は、部長は、薫とちひろのどちらかを選ぶか迷っているとのことだった。
 ちひろが部長との仲を邪魔していると考えた薫は、みかげから「アクアの女神」という呪いの像を買う。
 呪いをかけたい人物の身に付けているものを用意し、毎朝、この像に生血を注げば、呪われた人物は、像と同じ形相になるという。
 薫は呪いを実行するのだが…」

・「戦慄の叫び」
「ある雨の日、みかげは、竹内千恵と再会する。
 みかげが小学生の頃、竹内千恵の母親は黒沼家で住み込みのお手伝いをしており、千恵はみかげにとって姉のような存在であった。
 千恵の母親は亡くなっていたが、彼女は近々、結婚すると話す。
 しかし、みかげは千恵の身体にまとわりつく黒いモヤを感じ、その夜、千恵が死ぬ夢を見る。
 翌日、放課後の彼女を、千恵の婚約者である永田透という青年が強引に彼の部屋に連れて行く。
 彼は、みかげに、幽霊の出る部屋を除霊するよう頼むのだが…」

・「悪霊の首」
「光城学園に転校した熱田佳那。
 初日を控えた夜、彼女は奇妙な夢を見る。
 それは、見知らぬ少女に、好きな和人君を取ったら許さないと血まみれの顔で迫られるという夢であった。
 しかも、転校初日に旧館の掃除を手伝わされた際、夢の中の少女の首像を目にして、失神。
 母親の熱田照子が学校に来ると、母親と担任の絵沢和人はこの学校の同級生であった。
 更に、卒業アルバムを調べると、夢に出てきた少女は、母親の親友、美木初子であったことが判明する。
 二十年前、高校三年生の三木初子は和人に惚れていて、照子に頼んで、想いを和人に伝えてもらう。
 だが、和人は照子に想いを寄せており、二人の会話を陰で聴いた初子は二人の仲を誤解し、照子と喧嘩別れをする。
 そして、その誤解が解けないまま、初子は事故死していた。
 二十年の時を経て、蘇えった、初子の想いとは…?」

・「雪邪霊」
「みかげは、駅のホームで、クラスメートの柊と出会う。
 彼女は、一週間前に美神山に登山に出かけた弟の譲次を探していた。
 柊の姉弟は、一年前に事故で両親を亡くし、おじの家に厄介になっていたが、その頃から弟がグレ出して、一週間前に家出してしまったと言う。
 みかげが弟の行方を霊視すると、彼は美神山で亡くなっていた。
 怒った柊が帰宅すると、譲次が帰って来ていた。
 彼は雪山で死んだはずなのだが…」

・「怪奇学園」
「創立八十周年を迎え、光城学園には近代設備の備わった新校舎が建てられる。
 行方不明になった、前の理事長は進学一本槍であったが、片倉理事長は伸び伸びとした学園生活に重点を置いていた。
 だが、新校舎では生徒の謎の自殺や教頭の変死といった奇怪な事件が次々と起こる。
 更に、今まで温厚だった先生達が徐々に厳しくなり、生徒達との間に軋轢を産むようになる。
 新校舎には、前理事長の幽霊が出るという噂が立つのだが…」

 ちょっと銭ゲバで目力ありまくりの霊感少女、黒沼みかげを主役に据えた「霊感少女シリーズ」ですが、単行本はこの一冊しか出ていないようです。(単行本未収録の作品があるかもしれません。)
 オカルトものと言っても、山本まゆり先生のように実在の霊能力者をモデルにしたものではなく、基本、フィクションです。
 でも、個人的には、そっちの方が、エンターテイメント性に富んでいて、好きです。
 ストーリーもまあまあ面白いし、グロ描写もたくさんあるので、この一冊しか刊行されなかったことが非常に残念です。
 ちなみに、作品の合間に、「前村綾子の実話・恐怖体験記」が五話、描き下ろされております。

2018年11月16・18日 ページ作成・執筆

秋田書店・リストに戻る

メインページに戻る