古賀新一「エコエコアザラクB」
(1976年8月10日初版・1978年11月30日11版発行)
・「自動人形」
「堂本はチェス・マニア。
クラスメート相手にチェスの腕を自慢するうちに、彼は黒井ミサと勝負することとなる。
戦いは放課後の遅くまで続き、彼は劣勢となる。
遂には逆上して、ミサに暴力を振るい、彼女をそのままにして、教室から逃げ出す。
翌日、ミサは学校を休み、彼の机には、彼女の家で勝負の決着をつけようという手紙が入っていた。
堂本達がミサの家に向かうと、そこは古ぼけた骨董商で、テーブルの前に西洋紳士の自動人形が座っていた。
堂本は自動人形と勝負することとなるのだが…」
・「魔法手術」
「生まれつき身体が弱く、病人のように痩せ細った本田。
そんな彼に、黒井ミサは「黒井医院」を紹介する。
そこで、彼は「魔術による手術」を受け、内臓を全て取り換えられる。
そうして、彼は健康体になるのだが…」
・「地下室の怪」
「黒井ミサは、クラスメートの男子生徒の家に招かれる。
その屋敷は十年もの間、空き家で、夜毎、少女の声が聞こえてくるのであった。
ミサは「成仏できない霊が部屋中をさまよっている」と言い、降霊術を行う。
すると、麻理と名乗る霊がミサに憑依し、話し出す…」
・「自滅した男」
「毛利成一は、モデルガンを自慢していて、仲の悪かった丸井を射殺してしまう。
だが、目撃者はおらず、黙っていれば、このまま迷宮入りと成一は考える。
一週間後、給食の時、クラスメートの黒井ミサが黒魔術で丸井殺しの犯人を明らかにしようとする。
そのために、彼女は、丸井の遺骨を、今食べた給食に混ぜたと言うのだが…」
・「犯人はわたしよ」
「黒井ミサは、不良そろいの白樺中学校へと転校する。
ミサは早速、不良に絡まれるが、スケバングループの大幹部の玉代が彼女を守る。
だが、それには裏があり、副番長の嵐山礼子の身代わりにするためであった。
嵐山礼子は、番長殺しの濡れ衣を着せられ、リンチにあいそうだったのである。
礼子にそっくりなミサは、スケバングループから袋叩きにあうのだが…」
・「秘薬マンドラゴラ」
「山田幸治は陰気で、不細工な男子生徒で、付いたあだ名は「ナメクジ」。
下校途中、彼は、ミサがマンドラゴラについて話しているのを聞き、それを一本手に入れる。
調べてみると、「加工して顔につけると理想の顔・姿に変身する」という効能があり、早速、粉にして顔に擦り込んでみる。
翌朝、彼の顔は美男子に変化していた。
有頂天になり、登校するが、何故か、もう一人の自分が学校にいて…」
・「黒いカバンの秘密」
「黒井ミサは、勉強も美貌も一番で、クラスの人気者。
ミサが学級委員に選ばれた時、クラスメート達は、彼女の家庭環境に疑問に思う。
実は、彼女の素性については全く不明なのであった。
日曜日に、クラスメート達は公園で彼女の両親に会うこととなる。
だが、ミサは一人で、彼女が持ってきたのは、黒いカバンだけであった。
カバンの中身とは…?…」
・「魔法のメガネ」
「授業中、居眠りしても平気という、アリスター・クローリーの「魔法のメガネ」(単に、レンズに目の絵が描いているだけ)。
栗原という教師はミサからそのメガネを取り上げ、自分が使ってみることにする。
道行く人の反応を面白がっていたが、バスで居眠りしていた時、そのメガネが思わぬ災いを招くことに…」
・「踊るコブラ」
「葉山は、学校で平気で酒を飲む不良教師。
ミサは葉山にテストの採点ミスを指摘するが、逆に、書き直したと罵られてしまう。
怒りに燃えたミサは、体育館で早速、黒魔術の踊りを開始。
すると、ドクロの目から、猛毒を持つキングコブラが現れ、葉山を襲うのだが…」
・「ミサのボーイフレンド」
「松本は黒井ミサにベタ惚れ。
とは言え、ミサには仲のいい幼友達がいると聞き、ショックを受ける。
そいつの正体を突き止めるため、ミサの後をつけると、ミサが喫茶店で談笑している。
だが、向かい側の席には誰もいない。
松本はミサから「正ちゃん」の秘密を聞くのだが…」
ちょびっと考察。
・「自動人形」→A・ビアス「考える機械」(「怪談・71」(貸本/つばめ出版)を参照のこと)の影響ある模様。(注1)
・「魔法手術」→古賀しんさく・名義「胃弱」(「怪談・70」(貸本/つばめ出版)収録)がもとみたい。
・「地下室の怪」→トマス・バーク「唖妻」(「怪談・71」(貸本/つばめ出版)を参照のこと)が間違いなく元ネタ。
・「自滅した男」→古賀しんさく・名義「奇妙な復讐」(古賀しんさく「逆転負け」(貸本/ひばり書房)収録)のリメイク。古賀新一先生はこの話が好きで、他にもあります。
・「秘薬マンドラゴラ」→古賀しんさく・名義「醜い奴」(「オール怪談・43」(貸本/ひばり書房)収録)のアレンジ・バージョン?
・「踊るコブラ」→元ネタは、ロバート・ブロック「名画」。古賀しんさく・名義「殺しの方法」(「オール怪談・41」(貸本/ひばり書房)収録)のリメイク。
・注1
原題は「Moxon’s Master」で、「モクスンの傑作」という邦題もあるようです。
また、ビアスの作品が「エコエコアザラク」に使われたことと、ロバート・ブロック「名画」については、ツイッターでいつもお世話になっている「BL_4」さん(「黒月蝶」というペンネームもあります)からご指摘いただきました。
心より感謝いたします。
2020年11月2日/2021年3月3日 ページ作成・執筆
2021年5月12日 加筆訂正