古賀新一「エコエコアザラクJ」(1978年3月25日初版発行)
・「使い魔」
「ミサのクラスの菜奈子は、自分の容貌と身体が大の自慢。
だが、あまりに高慢で、溺れた彼女を病院に連れて行こうとした男子生徒を口ざまに罵り、遂にミサの怒りが爆発する?。
ミサは菜奈子にプレゼントがあると、夜七時に公園で待ち合わせをする。
菜奈子が公園に行くと、ミサの姿はなく、ベンチに赤ん坊が泣いていた。
彼女は赤ん坊をおぶって、交番に向かうのだが…」
・「目には目を!」
「近所の家から、夜中、太鼓が鳴り響いて、うるさくて仕方がない。
ミサが苦情を言おうと、その家を訪れると、騒音の主は小さな男の子であった。
だが、その父親がヤクザ者で、結局、文句を言いそびれてしまう。
それならばと、男の子を家に招いて、懐柔しようとするも、カエルの子はカエルで、とても言うことを聞く様子はない。
夜中、親子そろって、騒音を立てていると、奇妙な仮面をかぶったミサが家の前の道に、線路のような図を描いていく。
親子が不審に思っていると、楽器が鳴らなくなり…」
・「機械人形」
「立花中学三年の阿部は、黒井ミサから「おしゃべり人形」という不思議な自動人形を借りる。
彼には想いを寄せてる相手がいて、彼女は毎日、公園で子守に来るが、声をかける勇気がない。
自動人形の入れ知恵で、彼は、自動人形を乳母車に入れ、自分も子守という風を装いながら、公園の彼女に近付く。
彼女は小桜奈保という名で、彼と同じ学校の二年生。
これから、公園で一緒に子守をすることとなり、阿部は大喜び。
ところが、翌日、忘れ物のハンカチを、奈保の教室に届けると、現れたのは全くの別人。
調べてみても、公園の彼女は学校にはいなかった。
不思議に思いながらも、公園で彼女に会うのだが…」
・「ほら穴」
「古道具店を営む老夫婦は、店の中で、孫のひろしの帽子を見つける。
ひろしは昨日から、両親と共にハイキングに出かけており、ここにあるわけはない。
別人のものと思っていたが、その夜、土を掘るような音が聞こえ、今度は店の中に、ひろしの靴が落ちていた。
ひろしの身に何か不吉なことが起こったのではと、老夫婦は黒井ミサに相談する。
店内を真っ暗にして、黒井ミサが音をした方向を蝋燭で照らすと、そこにほら穴が現れる。
ミサがほら穴を進むと、ひろしと両親が落盤で閉じ込められた洞窟へと続いていた…」
・「ミサの特別料理」
「山奥の湖。
ボートの中で、二人の男が、遺産目的で、若い娘を殺害する。
二人が娘を湖に沈めようとした時、黒井ミサがボートで現れる。
ミサは、黒魔術で死体を消滅させることができると言い、男達はミサに死体の消し方を教えてくれるよう頼む。
その方法とは、彼女が滞在している祖母の家の前の杉を月夜の晩、人知れず五本切ることなのだが…」
・「果たされた復讐」
「大田原という実業家に土地を売るよう迫られている老婆。
老婆は、残り少ない人生をここで送りたいと頑なに断る。
だが、老婆の息子が轢き逃げにあい、死亡。
老婆は、大田原の仕業と感じ、復讐を決意する。
その後、町から数百キロも離れた神社の境内で、老婆は飼い犬に、合図をしたら相手の喉笛に食らいつくよう、特訓を重ねる。
しかし、無理が祟って、老婆は帰宅後に死亡。
大田原は、老婆が土葬された墓の前で高笑いするのだが…」
・「変身した凶悪犯」
「指名手配中の強盗殺人犯の男。
手配書があちこちに貼られ、このままでは捕まるのも時間の問題。
そんな時、黒井医院を発見する。
もぐりの医者と思い、入ると、看護婦姿の黒井ミサに病院を案内される。
そこは魔法医学を研究しており、人体改造なんてお手の物。
そこで、男は、自分を背が高い、美青年にしてくれと頼む。
手術は成功し、別人へとなった彼は、強盗して得た金で遊んで暮らそうと考える。
だが、以前の顔の幻に付きまとわれるようになり…」
・「呪われた先生」
「家庭の不満を生徒達にぶつける暴力教師、荒川。
体罰を受けた生徒達は、黒魔術で彼に復讐しようとする。
先生の人形を作り、呪文(注1)を唱えた直後、雷が鳴り、荒川先生が校舎の屋上から転落死する。
生徒達が黒魔術の呪いと慄く前で、黒井ミサは荒川先生の死は単なる自殺と主張する。
黒魔術は、いたずら程度でかかるものではないと言われ、生徒達はもう一度黒魔術をかけてみようとする。
今度、呪いのかける相手は、えこひいきばかりの三浦先生なのだが…」
・「利奈とユミ」
「黒井ミサは、山岡ユミという人妻から、占いの依頼を受ける。
占いの内容は、二十数年前、小学二年生ぐらいの時の初恋の相手、和男がどうしているか、というものであった。
ミサがタロットで占ったところ、彼は、ユミのことがいまだ忘れられず、三十過ぎても独身らしい。
そして、ミサは、もしユミが和男に会うと、彼女は殺されると警告する。
ユミは怒ってミサを追い出すが、その後、娘の利奈が帰ってくる。
利奈は高価な首飾りをしており、誰にもらったか尋ねると、仲良しの男の子にもらったと言う。
彼は大きな家に一人で住んでおり、彼女の欲しいものは何でもそろっていた。
彼は利奈をユミと呼ぶらしいのだが…」
・「お化け屋敷は大繁盛」
「中年夫婦が営むお化け屋敷。
客の入りが悪く、赤字続きなのに加えて、息子の竜太は、飲み歩いてばかりで、ちっとも仕事を手伝わない。
ある晩、お化け屋敷の主人は、向かいで占いの商売をしている黒井ミサに、黒魔術で商売繁盛の望みが叶わないかと尋ねる。
ミサが出したのは「猿の手」であった。
ミサに警告されながらも、主人は「猿の手」を借りて、早速、商売繁盛を望む。
以来、日に日に客は増えて、お化け屋敷は大繁盛するのだが…」
ちょこっと考察。
・「機械人形」→古賀しんさく・名義「もてない奴」(「怪談・74」)のリメイク。これってギャグですよね…。
・「ほら穴」→洞窟でのトリップ・シーンにダリ「記憶の固執」「秋の人肉食い」、ヴィクトル・ブローネルの絵(注2)、ハンス・ベルメールの球体人形が使われております。
・「ミサの特別料理」→ロード・ダンセイニ「二瓶のソース」が元ネタ。
・「変身した凶悪犯」→「秘薬マンドラゴラ」(「エコエコアザラクB」)と同様、古賀しんさく・名義「醜い奴」(「オール怪談・43」)のアレンジ・バージョン。こちらは、ハンス・ベルメールの球体人形の影響もあります。
・「お化け屋敷は大繁盛」→「招き猫」(「怪談・79」)のリメイク。ジェイコブスの名編「猿の手」も盛り込んでおります。
・注1
この呪文は「渋澤龍彦・著「黒魔術の手帖」(桃源社)」からの引用との注釈があります。
確認したところ、「蝋人形の呪い」の章に、この呪文の記載がありました。
にしても、澁澤龍彦先生に了解を取ったのでしょうか?
・注2
これに関して、ツイッターで質問のツイートをしたところ、徳尾書店の方や「nankado」様等、様々な方にご教示いただきました。
心より感謝いたします!
2020年11月7日/2021年3月5日 ページ作成・執筆