原ちえこ「エルフィン・リング」(1997年2月28日初版発行)

・「Vol.1 桜の章」
「藤井小夜は、入試前日に風邪をひいたために第一志望校に受からず、仕方なく龍王高等学校に入学する。
 入学式の日、彼女は校庭で龍の幻を視る。
 噂では、昔、このあたりは湿地帯で、龍王池という大きな池には土地の守り神の龍が棲んでいたという。
 小夜が龍を見たという話を聞きつけて、篠貴司という男子生徒が彼女に絡んでくる。
 篠貴司は背の高い、明るい青年で、龍にひどく関心を持っているようだった。
 小夜は、ある事情から遅刻が重なり、担任の敷島先生から別棟の理科準備室の掃除を一週間、命じられる。
 敷島先生はこの地方の大地主の末裔かつ学校の創立者の孫で、別棟の理科準備室は彼の私室と化していた。
 理科準備室を出る時、小夜は敷島の後姿に龍の幻をまたもや視る。
 篠貴司にこれについて話すと、彼も子供の頃、湿地帯だったここで巨大な龍の影を見たことがあった。
 本当に龍がいるのかどうか確かめるため、翌日、小夜と貴司は理科準備室を訪れる。
 一見したところ、単なる小汚い部屋だが、小夜は壁の向こうから水の音が聞こえるのに気づく。
 敷島が入らないよう言ったドアを貴司が開けると…」

・「Vol.2 秋桜の章」
「秋。
 小夜の放課後の理科準備室通いはすっかり習慣になっていた。
 彼女は敷島先生に想いを寄せ、貴司はそれに嫉妬を覚える。
 そんな時、学校で武者の幽霊が出るという噂が立つ。
 このあたりは昔、戦場で、恰好から判断すると、戦国時代の武者らしい。
 ある日、小夜は貴司と敷島先生のことで喧嘩をする。
 彼と別れた後、小夜が理科準備室に行くと、敷島が例のドアに右手をかざしていた。
 右手からは青白い光が放たれ、小夜が不思議に思い近づくと、ドアが開く。
 ドアの向こうには武者の幽霊達がいた。
 敷島は小夜に部屋から出るよう言うが、彼女の悲鳴を聞きつけた貴司がとび込んできて、敷島に掴みかかる。
 そのまま三人はドアの向こうの空間に入ってしまい…」

・「Vol.3 桃花の章」
「三月のひな祭り。
 敷島のクラスの女子達は彼の邸を訪れる。
 敷島の家は「龍王ヶ谷のお館」と呼ばれた古くて大きなお屋敷で、立派な雛飾りの見学が目的であった。
 小夜はもちろん訪問し、当然、貴司もついて来る。
 家の中に上がるが、一人で別行動をする貴司を追ううちに、彼女は迷子になる。
 その時、庭で見かけた着物姿の女性が小夜に声をかけ、ある部屋に案内する。
 そこには綺麗な着物が衣桁にかけられていた。
 女性はその着物を小夜に着せるのだが…」

・「Vol.4 黄泉の章」
「小夜は奇怪な夢を見る。
 夢の中で、敷島家の戦国時代の先祖、敷島竜暁が両手首を縛られた青年を斬殺していた。
 彼女はその青年が誰なのか気になって仕方がない。
 体育の授業中、貴司はトラブルを起こし、敷島に保健室へと運ばれる。
 そのことを聞き、小夜は保健室に行くが、彼の姿はない。
 理科準備室に行くと、貴司がいたが、彼の顔は斜めに切られ、血を流していた。
 気絶した彼女は夢の中で過去を視る。
 篠貴司の秘密とは…?」

・「Vol.5 龍神の章」
「ある日、敷島先生が学校を休む。
 それでも、小夜は貴司を引き連れ理科準備室の掃除に行く。
 すると、例のドアから武者の幽霊達が現れ、小夜を中に引きずり込む。
 貴司は敷島を呼びに行くが…。
 この土地で昔、起こったこととは…?
 そして、小夜、貴司、敷島の関係は…?」

 原ちえこ先生の作品ですので、ホラーというよりは、ファンタジー寄りです。
 もろ少女漫画風で、その手が苦手な人には敬遠されそうですが、つまらないことはありません。
 たまにはこういう「スーパーミステリアス・ラブロマン」(裏表紙より)もいいのではないでしょうか?
 あと、「桜花の章」は『雛人形』が扱われていて、ホラー度は一番高いです。
 雛人形が苦手な人はある程度の割合でいるようで、原ちえこ先生は「ぬいぐるみの方が楽しくて好き」とのことです。

2023年5月15・16日 ページ作成・執筆

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