楳図かずお「キツネ目の少女」(1985年12月1日初版・1996年2月20日5版発行)

「奥吉野。
 サツキとカンナの姉妹が住んでいるのは、人家が二十三軒しかない、小さな村。
 村にある犬山には、お社があり、山の守り神として二股のキツネが祀られていた。
 二股キツネは何百年も生きた、全身真っ白のキツネで、自分の寿命が尽きる直前、白装束の少女の姿になり、村人達に自分の死を告げに来たと伝えられる。
 夏のある日、サツキとカンナは、祖母の代わりに、お社に供え物を持って行く。
 その帰り道、急な雨に遭い、雨宿りのために杉の下に駆け込むと、そのうろの中に白い服を着た、美しい少女がいた。
 姉妹はおキツネ様の化身と見まがうが、白い服に見えたのはタオルで、実際は、都会風に洋装した少女であった。
 彼女は奈美子という名で、村長の家の孫娘であり、東京から来ていた。
 サツキは奈美子に迷信深い田舎者扱いされたことに大反発。
 また、サツキは夏休みの課題として「キツネと迷信」について調べており、安易にキツネに興味を持った奈美子に対して良い感情を抱かない。
 サツキの祖母にキツネの話を聞こうために、奈美子がサツキの家を訪ねた時に、サツキは滔々とキツネに関する不思議な話を聞かせる。
 すると、奈美子が突如、「コン」と声を上げると、犬山の社へ駆け上る。
 社の中に祀られいる、白い着物を着こんだ奈美子は、自分は「ふたまたキツネ」だと姉妹に告げる。
 姉妹は、キツネに憑りつかれた奈美子のもとから逃げ出すのだが…」

 舞台が、楳図かずお先生が幼少期を過ごした吉野のためか、牧歌的な雰囲気に満ち溢れております。
 他の作品のように(時に暴走する)サービス精神はあまり感じられず、リラックスして描かれたのではないでしょうか。
 地味な部類に入る作品とは思いますが、非常に味わい深い作品だと思います。

 ネットで調べたところ、この作品は、貸本で出版した作品に加筆訂正したものらしいです。
 しかし、私はそこまで知識がありませんので、そのあたりのウンチク話はより知識の豊富な方にお願いします。

2017年7月25日 ページ作成・執筆

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