浜慎二「幽霊のすむ館」(1987年4月20日初版発行)
「中学一年生の少女、木下百合子。
夏休み、百合子は、母方の伯父の別荘に遊びに誘われる。
母方の伯父は、開発会社を経営し、かなり羽振りが良かったが、悪い噂も立てられていた。
また、その妻は家事なんか一切しない、軽薄な気取り屋で、娘の美樹はプライドの高い、気難し屋。
実のところ、百合子は気は進まなかったが、クラスメートに自慢した手前、行く破目になる。
百合子の母親の予想通り、百合子は、家政婦のおたきさんと一緒に、お手伝い扱い。
百合子とおたきは、別荘を掃除をするため、伯父の妻と娘より一日早く、別荘に赴く。
別荘に着いた時、百合子は窓に人影を見る。
また、鍵をかけておいたはずの別荘の中には、ところどころ、水たまりができていた。
そして、子供部屋には、捨てられたはずの焼け焦げた人形が、何故か転がっていた。
その夜、寝室で百合子は、謎の少女と出会う。
少女の顔はぐずぐず崩れ、百合子がおたきに助けを求めると、おたきは寝床にはいず、電話も通じない。
そのうちに、外から別荘に戻ってきたおたきは、寝間着はびしょ濡れで、どこか惚けていた。
翌日、伯父の妻と娘の美樹、美樹の友人達がやって来る。
しかし、テレビやラジカセ、電話といった電子機器が全く使えず、皆、大騒ぎ。
また、その夜、美樹の寝室を外から覗く者があり、美樹の友人の一人がベランダに出ると、焼け焦げた人形がそこにあった。
それは百合子の仕業とされ、百合子は人形を捨てに行くよう言われる。
流石に頭に来て、別荘を来たことを後悔し始めた百合子は、人形を捨てに行った時に、一人の少女と出会う。
その少女は由加里と名のり、百合子を自分の家に遊びに来るよう誘う…」
立風書房のレモンコミックスの流れをくむ、浜慎二先生の典型的な幽霊譚です。
個人的に、1970年代後半〜1980年代に描き下ろされた、怪奇マンガの単行本の中での最高傑作だと思います。
ラストが「勧善懲悪」としては、ちょっぴり不完全燃焼なところがまた浜慎二先生らしく、好みが分かれるとは思いますが、「なさけ・むよう」な怪奇マンガが大半を占める中、こういうマンガもたまにはいいのではないでしょうか?
それと、この作品の最大の魅力は、キャラの「眼の据わりっぷり」なのであります。
怪奇マンガには「イッチャッてる眼」の描写の達人は多々おります。(個人的には、山岸涼子先生。ありゃ、やばいな…。)
そういう強者どものひしめく中で、「据わった眼」の描写を極めたのは、浜慎二先生だと私は信じております。
この次元にまで達したのは、私の記憶にある限り、『日野日出志先生の傑作「赤い蛇」のラスト、主人公の少年が赤い蛇にがんじがらめにされ、血を吸われるシーン』しかありません!!(何てわかりにくい例えなんだ…)
いや〜、この眼の据わりまくったキャラを見ているだけで飽きませんな。(俺だけか…?)
まあ、何はともあれ、良作と思いますので、機会があれば、読んでいただきたいものであります。
2016年10月10日 ページ作成・執筆