風間宏子「悪霊の庭」
(1987年8月25日初版・1989年3月15日8版発行)

 収録作品

・「悪霊の庭」
「楡崎奈加子は、小説家の父親が南米に一年間、取材旅行に出る間、城崎慎一郎の家に下宿することになる。
 彼は、父親と親交の深い文学青年で、五年前、弱冠二十歳で芥木賞を受賞、また、奈加子が転校する高校の現代文の講師でもあった。
 高校で知り合った女子生徒から、奈加子は彼に対する噂を聞く。
 噂によると、彼が教育実習でこの学校に来ていた時、文芸部の内藤麻里子と熱烈な恋愛をしたという。
 だが、内藤麻里子は行方不明となり、彼女を想って独身を通しているとか、彼女の作品を盗用したため、彼女を殺して、家のどこかに埋めたとか、いろいろと言われていた。
 実際、奈加子は、城崎の家に住み始めて、奇怪なことが起き始める。
 家の中に、彼女に悪意を持つ何者かが存在していて、彼女の命を狙っているようであった。
 城崎は奈加子に家を出るよう勧めるのだが…」

・「海からの…」
「小学生の室口和也は、父親の仕事の都合で、父親の故郷である海辺の町へ引っ越す。
 彼が見知らぬ町を自転車で回っていると、岬で少女と出会う。
 彼女は彼の名前を知っていて、ここで彼を待っていた様子であった。
 彼女は彼を丘の上の洋館へと招くが、荒れ果てて、人が住める気配はない。
 しかし、和也はこの屋敷や少女にどことなく既視感を覚える。
 いつの間にか、少女は姿を消してしまうが、和也は彼女のことが気になり、翌日、丘の上の屋敷を訪れる。
 すると、中に、昨日の少女がいて、彼に紅茶を勧める。
 少女は、昨日よりも、幾分年上の中学生ぐらいに見える。
 彼は何かを思い出せそうなのだが、彼女に尋ねても、彼女は彼自身で思い出すよう繰り返すだけ。
 帰宅後、彼は父親から、あの丘の上にホテルが建つと聞く。
 丘の上の洋館には、昔、老婆が住んでいたのだが…」

・「霧ヶ峰一家 最後の悲劇」
「道城寺乃里子は、瀕死の祖父に頼まれ、幼馴染の東城高志と共に、岡山県上房郡魔道村に向かう。
 魔道村には、祖父の初恋の人、霧ヶ峰トメという女性がおり、彼女に木の箱を届けてほしいという頼みであった。
 どうにか魔道村に着き、乃里子はトメに、祖父からの預かりものを渡す。
 だが、引き返そうとした時、雷雨に襲われ、トメの家に一泊することになる。
 そこで、乃里子は次々と奇怪な目にあう。
 見る度に増えるトメの姉妹。
 誰もいないのに、話声のする座敷。
 庭のぽっとん便所の外に現れた怪人。
 そして、彼女が逃げ込んだ屋敷の中では、妖怪達が酒盛りをしていた…」

・「17番目の月子」
「月子は、バスケ部の剣ヶ峰先輩に夢中。
 ふとしたことから、彼に告白され、翌日の日曜日にデートをすることになり、有頂天。
 しかし、彼女は、居候先のいとこ、丹波栗鉄郎の「前世をよびだす実験」に協力させられる破目となる。
 実験により、彼女の幽体は肉体から離れるが、何者かが彼女の肉体に入ってしまい、戻れなくなる。
 その何者かは、月子よりも女らしく、剣ヶ峰先輩に想いを寄せているようであった。
 月子の幽体と鉄郎は、月子の身体が剣ヶ峰先輩とデートするのを陰から窺い、身体を取り戻す機会を待つのだが…」

・「闇への誘い」(描き下ろし)
「図書館の棚の一番奥にあった、埃だらけの本。
 それは北欧神話を扱った絵本であった。
 読みながら、少女は眠ってしまうが、目覚めた時…」

 大ベテランの風間宏子先生は怪奇マンガとも関連が深く、面白い作品を幾つも描かれております。
 この単行本では、心霊もの、リインカーネーションもの、妖怪ものとバラエティ豊かな作品が収録されており、どの作品も読みごたえがあるのは流石!!
 出来としては「海からの…」がベストでしょうが、個人的には、ギャグ・タッチの「17番目の月子」が好きです。
 月子と丹波栗鉄郎の出てくる話、他にもないのでしょうか?

2021年5月27日・6月21日 ページ作成・執筆

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