高階良子「首吊り坂殺人事件」(2006年12月15日初版発行)

 収録作品

・「灰色館殺人事件」(「ミステリーボニータ 2006年2・3月号」初出)
「天涯孤独の身となった、西野奈月(18歳)は、十年前に離れた町に帰って来る。
 その目的は、兄のように慕っていた梶野三郎と再会するためであった。
 しかし、彼女は男達に拉致され、町の丘の上に建つ灰色館に連れて行かれる。
 そこで、彼女は、梶野三郎にそっくりな、藤宮家当主、藤宮正輝に会う。
 彼は、一か月前に亡くなった先代の長男の息子であった。
 奈月は彼から、彼女が先代の血縁であることを知らされ、彼からプロポーズを受ける。
 だが、周囲は、二人の結婚を望まない親戚縁者ばかりで、彼女はどうも気が乗らない。
 そのうちに、従妹の瑤子の事故死や、正輝が怪談から転落して意識不明になる等、不可解なことが起きる。
 正輝は意識不明の状態から回復するが、まるで別人のようで、奈月は彼に懐かしさを覚えるのだが…」
 こう言っては何ですが、失敗作だと思います。
 理由は、人間関係がごちゃごちゃしていて、さっぱり要領を得ないこと。
 私のノ〜ミソの鈍さを差し引いても、一読しただけで、ストーリーを理解できる人は少ないのではないでしょうか?
 ラストに出てくる家系図を最初の方に提示して、人間関係を把握を容易にしていた方が良かったと思います。

・「首吊り坂殺人事件」(「ミステリーボニータ 2006年7・8月号」初出)
「全寮制の女子学園、滝郷(たきざと)学園に転入してきた苑原杏子。
 彼女が子供の頃、目の前で、姉が木から落ちて、蔓で首を吊って死亡するという事故があり、それがトラウマとなっていた。
 杏子は、一歳年上の森川美帆とルームメイトとなるが、死んだ姉の面影を美帆に見出し、親しみを覚える。
 ある日、杏子は、お調子者の友人、平沼芳香に誘われ、男子校、暁高校と合同のハイキングに参加する。
 そこで、暁高校山岳同好部部長、渡部淳也と運命の出会いをする。
 杏子は彼に恋心を抱くが、淳也と美帆は相思相愛の仲だともっぱらの噂であった。
 芳香は、杏子の彼への想いを見抜き、学園中言いふらしてしまう。
 更には、美帆には応援するとの言葉が、杏子の傷心に追い打ちをかける。
 その(恐らく)翌日、杏子は、ハイキングの途中にあった首吊り坂で一人、佇んでいるところを発見される。
 彼女は、ロープで首を吊った森川美帆の死体を放心状態で眺めていた。
 錯乱状態で、杏子は美帆を殺したのは自分だと叫ぶのだが…」

・「呪われた石殺人事件」(「ミステリーボニータ 2006年9・10月号」初出)
「結婚前に交通事故死した、資産家で、鉱石マニアの陽介。
 その死には、いとこの倉持武史、倉持稔、金城郁美の三人が絡んでいた。
 三人は、陽介の持っていたダイヤの世界的名品、「月の雫」を血眼になって探す。
 そんな彼らの前に、陽介のフィアンセ、並木碧(みどり)が現れる。
 彼女は、何者かによってブルーダイヤに変えられた、陽介の骨を集めていた。
 それと同じくして、稔、郁美と続いてストリキニーネによって毒殺されていく。
 「月の雫」の行方とは…?
 そして、碧を陰で支える、若き実業家、古河義昭の思惑とは…?」
 これもわかりにくい作品のように思います。
 理由は恐らく、骨灰をダイヤに変えるという点にあるのではないでしょうか。
 ネタばれですが、途中では「陽介が死後、自分の骨を宝石にして欲しいと頼んだ」と説明されておりますが、ラスト、その説明は否定されております。
 だったら、何で、こんな手間なことをしたの…?

2019年3月4日 ページ作成・執筆

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