香坂鹿の子「呪い・聖少女」(1988年8月20日初版発行)
収録作品
・「聖少女」(「ひとみコミックコレクション」1987年8月30日号掲載)
「母を亡くして孤児になった聖良(せいら)は、父親の知人である浅井に引き取られる。
浅井の家は田舎で牧場を営んでおり、家族構成は妻の春江、長男の健一郎、双子の妹の美樹と美花。
春江は彼女に露骨に冷たく、健一郎はロリコン趣味があり、双子の姉妹は意地悪で、聖良はどうもこの一家が好きになれない。
とは言え、他に行く当てもなく、彼女は美しく優しかった母親のことを思い出して、耐え忍ぶ決心をする。
そうして、ここで暮らすうちに、彼女は狩りや動物のさばき方を覚え、肉食も平気になり、カントリーライフにすっかり適応。
しかし、聖良が浅井が愛人に産ませた子供であることが春江にばれ、しかも、健一郎が聖良にいたずらしているところを目撃する。
家を追い出された聖良を浅井が捜しに来るのだが…。
この時、付近には田中保という脱獄囚が逃げ込んでいた…」
・「カナリアはもう歌わない」(「ひとみコミックコレクション」1986年4月25日号掲載)
「右楽司と紗織は、婚前旅行と称して、別荘に滞在する。
豪華な西洋風の建物であったが、紗織は一歩足を踏み入れた途端、寒気を覚え、肩こりに悩まされるようになる。
それだけでなく、夜中になると、彼女は自殺を図るようになる。
紗織の言動から司は正夫という男が別にいると思い、彼女に別れを告げ、別荘を立ち去るのだが…」
・「百合のように蘭のように」(「ひとみコミックコレクション」1986年12月25日号掲載)
「日高正人はある高校に心理学の先生として赴任する。
彼の教室には、学級委員の榊原百合と学校一の不良の榊原蘭の双子の姉妹がいた。
蘭の残虐さは生まれつきで、幼い頃から動物虐待を繰り返し、七歳の時、両親が事故死した後も、親戚達は引き取ろうとはしなかった。
そのため、姉妹は屋敷にばあやの三人で暮らしていた。
正人は二人を観察するうちに、おかしなことに気が付く。
彼は次第に、百合と蘭が入れ替わっているのではないかと考えるのだが…」
・「呪い」(「ひとみコミックコレクション」1987年4月25日号掲載)
「菊水高校二年の朝倉みゆきが校舎の屋上からとび降り自殺をする。
原因は、加賀由真とみゆきが雨宮徹という男子生徒をめぐって賭けをして、みゆきが負けたからであった。
みゆきの葬式で、祖母は由真のせいでみゆきが死んだと糾弾し、「呪ってやる」と叫ぶ。
翌日、由真が学校に行くため、家を出ると、玄関に箱が置いてある。
その中身は、彼女の写真を釘で打ち込んだ藁人形であった。
その日一日、他人の苦痛が彼女に乗り移り、もう散々。
しかも、昼の弁当にゴキブリや芋虫、蛾が入っていて、クラスメート達から総スカンをくう。
由真は、みゆきの祖母を捜し出し、呪いを解こうとするのだが…」
・「ゆうれいさんがお友達」(「ひとみコミックコレクション」1986年8月25日号掲載)
霊感ゼロの香坂鹿の子先生の友人やお知り合いの体験談
@名香智子先生とヨーロッパ旅行中、ベルギーのブリュッセルのホテルに泊まった時の話
A水樹和佳先生が隣のお婆さんの幽霊を視た話と、北海道を旅行中、あるホテルで体験した話
B萩尾望都先生の家で、美内すずえ先生、池田理代子先生、花郁悠紀子先生(?)とコックリさんをした話
C姉の友人が、降霊会の時、心霊写真に写っていたおじに質問した話
D神奈川県に住む母親の知り合いの高校生の長男が突如、暴れ出し、末っ子がその理由を夢で見た話
E香坂先生の家に下宿していた農学博士が膵臓癌で早死にするが、その葬式での話
等々…
香坂鹿の子先生のホラー風味の作品を収録した短編集です。
内容は猟奇的なものが多く、「ひとみ・コミックス」の中ではかなりの残虐度でしょう。
この中での個人的なベストは「百合のように蘭のように」。
全く救いようのない話で、読後、心底、げっそりします。
ちなみに、(そのスジで)一番有名な「聖少女」はぶっちゃけ「聖ロザリンド」の劣化コピーです。期待して読むと、肩透かしをくうのでご注意を。
「ゆうれいさんがお友達」は香坂先生の広い交友関係が窺えて、興味深いです。
2022年12月29日/2023年1月12日 ページ作成・執筆