楳図かずお「生き人形」(1985年11月1日初版発行)

「川上村に住む、岡田久美子の一家。
 一家はお土産屋を営んでいたが、台風で家が流され、父親は死亡、母と姉妹だけとなる。
 三年後、母親は過労で倒れ、小学六年生の久美子は、母親の代わりに働くため、東京へ向かう。
 東京駅で、久美子は藤田みや子という婦人と知り合い、その屋敷に一泊する。
 子供のない、みや子夫人は、みよ子という名の人形を、本物の子供のように扱っていた。
 久美子は、みや子夫人に頼み込まれ、みよ子の世話係として、藤田家に住むこととなる。
 そのかたわら、学校にも通えるようになり、雪子という親友もできる。
 久美子が学校に慣れた頃、みや子夫人は、みよ子の人形も学校へ連れて行くよう、久美子にお願いする。
 最初は恥ずかしかった久美子だが、人形はクラスのマスコットとして人気者となり、マスコミにも注目される。
 だが、クラスで遠足に出かける日、前科者の犯罪者である、雪子の従兄が、人形をさらおうと企てる。
 雪子は従兄の悪だくみを阻止しようとするが、吊り橋の事故で頭を打ち、予知能力を得る。
 その予知能力により、久美子は人形を従兄から取り戻すものの、事態は思わぬ方向へ進んでいく…」

 「人形もの」の怪奇マンガは女性漫画家の方が優れた作品が多いように私は考えております。
 やはり、人形というものが身近に存在して、馴染みがあるためでしょう。
 ですが、男性の漫画家にも人形をテーマにした作品はあります。
 楳図かずお先生の「生き人形」(オリジナルは「人形少女」/1960年頃)は「人形もの」の嚆矢の一つだと思いますが、タイトルから想像される内容とはかなり異なります。
 この作品の主人公はあくまで岡田久美子で、人形は徹頭徹尾、人形のままです。
 ですので、人形が動き出したり、人を呪ったりするようなことは全くなく、ストーリーは、人形を中心とした、サスペンスや不思議なドラマがメインなのです。
 でも、人形同士をお見合いさせたり、突如、霊感少女が出てきたりと、なかなかストレンジな味わいのある作品ではあると思います。

2018年12月31日 ページ作成・執筆

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