藤見康高・原作/REDICE(@〜D) 廣瀬周(E)・漫画
「巨蟲列島@」(2015年3月15日初版・2018年7月30日11版発行)
「巨蟲列島A」(2015年11月1日初版・2017年3月10日3版発行)
「巨蟲列島B」(2016年9月1日初版・2017年3月10日3版発行)
「巨蟲列島C」(2017年4月1日初版・8月20日4版発行)
「巨蟲列島D」(2018年2月1日初版・3月25日再版発行)
「巨蟲列島E」(2019年7月1日初版発行)



・単行本@
「第1話 遭難」
 修学旅行中の私立鳳翔高等学園の生徒達を乗せた飛行機が墜落。
 生き残った生徒達は、南の孤島に流れ着く。
 主要なメンバーは、
 織部睦美〜虫マニアのヒロイン。
 鳴瀬千歳〜委員長。睦美の親友。
 松岡歩美〜ソフト部のキャプテン。
 三浦真美〜アイドルの卵。元・いじめられっ子。
 神野美鈴〜BITCHそのもの。
 上條アツシ〜粗暴で単細胞な番長タイプ。
 甲斐和彦〜アツシの子分…と見せかけて、機を見るに敏な切れ者。
(他にもいるが、遅かれ早かれ死ぬので、割愛)
 彼らは島をさまようが、人家があるにもかかわらず、まるで人気がない。
 そんな時、彼らの目の前に、巨大な「ミヤマカラスアゲハ」が現れる…。
「第2話 巣窟」
 巨大な「ジガバチ」にさらわれた千歳を救うため、睦美達はその巣があるらしき方向へ進む。
 そこには民家がまるまるジガバチの巣になっていた。
 中で、彼らが目にしたものは…?
「第3話 対決」
 睦美達が去ろうとした時、一匹のジガバチが獲物を運んでくる。
 その獲物は、アツシのマブダチ、アキラであった。
 アキラを救うため、アツシは単身、ジガバチの巣に入り込む。
 正攻法ではジガバチに対抗できず、睦美はある作戦を実行するが…。
「第4話 吸血の森」
 どうにかアキラと千歳を救出した一行。  しかし、二人ともジガバチの毒にやられており、一刻も早く医療施設に連れて行く必要がある。
 そのために、彼らは巨大な「マダニ」が大量に棲息している森を抜けることになるが…。
(「チャンピオン クロス」2014年10月〜2015年1月掲載)

・単行本A
「第5話 施設」
 夜明け前に、一行は「シンメイ製薬 メディカルセンター」へ到着する。
 そこは病院のように大きい施設であったが、何故か誰もいない。
 とりあえず、アキラと睦美の治療にとりかかるが、アキラは「レウコクロリディウム」に寄生されていた…。
「第6話 ヘビトンボ」
 巨大な「ヘビトンボ」に襲われ、睦美達は危機に陥る。
 睦美は、昆虫の走行性を利用して、一か八かの賭けに出る。
 彼女はヘリポートにあった鉄塔のライトにヘビトンボを誘導しようとするのだが…。
「第7話 遭遇」
 安全でなくなった施設からより安全な場所に移動する途中、一行は、生き残りの女子生徒二名を巨大な蝶から救う。
 彼女達は食料を探しに出ており、他にも生き残りの生徒達がいた。
 生徒達を統率しているのは中城茉莉華という女教師で、彼女は食料を得るため、睦美達に医療施設に戻るよう命令する…。
「第8話 タイガービートル」
 医療施設に向かう途中、一行は、タイガービートル(ハンミョウの幼虫)の群れに襲われる。
 睦美と千歳は竹林に逃げ込んだものの、残りの皆は大ピンチ。
 腰が引けてる睦美に代わり、千歳が皆を救うため、立ち上がる…。
(「チャンピオン クロス」2015年2月〜7月掲載)

・単行本B
「第9話 夜襲」
 睦美の提案で、一行は「この島で一番安全な場所」に向けて、夜道を進む。
 途中、睦美が、大気中の湿度の上昇から、緊急野営を提案する。
 そのことでもめているうちに、彼らは「ほたる」の幼体の群れに襲われる。
 これをきっかけに、皆、バラバラになり…。
「第10話 逃走」
 ホタルの幼体は、真美をつけ狙う。
 歩美は真美を連れて逃げていると、山小屋を見つける。
 だが、山小屋は先に逃げ込んだ茉莉華達が戸や窓を封じ、二人を中に入れようとしない。
 一方、睦美は、他の中間達と合流しながら、ホタル達への対策を考え続けていた…。
「第11話 交信」
 絶体絶命の中、睦美の考え出したアイデアは、ホタルの幼体と交信することであった。
 逃げ場がない彼らは一致団結して、睦美のアイデアを実行に移す。
 これによって、歩美と真美は九死に一生を得るのだが…。
「第12話 捕獲」
 いろいろとありながらも、睦美の言う安全地帯の近くに到着する。
 しかし、この付近に生き物の気配がないことに睦美は訝る。
 彼女の不安が的中し、そこには「ジグモ」の巣があった。
 睦美は静かに退却しようと指示するも、安全地帯を目の前にして放心状態になった茉莉華がそちらに行ってしまい、ジグモの糸に捕らえられる。
 また、睦美も囚われの身となってしまうのであった…。

(「チャンピオン クロス」2015年8月〜2016年5月掲載)

・単行本C
「第13話 闇の中」
 睦美と茉莉華は、蜘蛛の糸でグルグル巻きにされ、ジグモの巣へと引きずり込まれる。
 残りは、睦美の言っていた安全地帯、山の頂上にあるお堂へと避難する。
 千歳は睦美達を助けに行こうと訴えるが、美鈴とアツシに止められ、拘束されてしまう。
 だが、甲斐和彦と、茉莉華先生の熱烈な信奉者、青山望は二人だけはこっそり、睦美達を救出に向かう。
 ジグモに対する、甲斐の案とは…?
「第14話 自決」
 自由の身となった睦美は、単身でジグモに立ち向かう。
 一方、お堂の外では、リーダー気取りのアツシが、女性達に狼藉を働いていた。
 そこに、「ドウガネブイブイ」の群れが襲いかかる…。
「第15話 救助」
 千歳の機転によって、アツシ達は、ドウガネブイブイの襲撃からとりあえず逃れる。
 ところが、そこに駆け付けた睦美達が、標的となる。
 睦美はアツシ達をお堂に避難させ、甲斐にお堂に下に行くよう指示を出す。
 ドウガネブイブイを退散させる方法とは…?
「第16話 ハンター」
 早朝、一行は、救助船のある港に向かって移動する。
 途中、「ヨコヅナサシガメ」の幼体の群れを目にして、迂回しようとしたところ、青山望のせいでアツシがパニックを起こし、ヨコヅナサシガメに取り囲まれてしまう。
 その場に、海上保安庁の巡視船の乗員(三等海上保安正)の識森涼子、猟友会の涼子の父親ともう一人が現れ、彼らは危機を脱する。
 一行は「ヨコヅナサシガメ」から逃れるため、沢へと降りるのだが…。
(「チャンピオン クロス」2016年8月〜2017年2月掲載)

・単行本D
「第17話 窮地」
 突如、出現した、巨大な「ヤゴ」(トンボやヤンマの幼体)。
 その厚い外殻はイノシシ弾も効かず、涼子の父親は片腕を失う。
 攻撃・防御・速さ、その全てが圧倒的なため、睦美は、ヤゴが気絶しているうちに、ヨコヅナサシガメのいる道に戻るよう皆に指示する。
 ヤゴから逃れることができるのであろうか…?
「第18話 前兆」
 ようやく港に辿り着いた一行。
 だが、港では、巨大な「オオムカデ」が大暴れしていた。
 銃弾など全く効かず、猟友会の人々は次々と肉塊と化していく。
 巡視船に近づくことはできず、涼子の指示で、一行は近くの漁港へ向かうのだが…。
「第19話 作戦」
 船を得ることができず、一行は、仕方なく巡視船のある港へと戻る。
 そこで目にしたのは、巡視船に巻き付いているオオムカデであった。
 睦美は、ムカデを焼く時に出るフェロモンで、オオムカデをおびき出そうと考える。
 一方で、青山望は、睦美に復讐するチャンスを窺っていた…。
「第20話 悪化」
 青山望の件はあったものの、どうにか睦美の作戦は成功したかに見えた。
 しかし、事態は、睦美が危惧していた最悪の展開に…。
(「チャンピオン クロス」2017年3月〜11月掲載)

・単行本E
「第21話 挟撃」
 オオムカデは巡視船から離れたものの、フェロモンに引き寄せられ、もう一匹、巨大なオオムカデが現れる。
 二匹のオオムカデに、睦美はどう対処しようとするのか…?
 一方、巡視船では、甲斐、涼子、涼子の父親が救命艇の準備に奔走していた…。
「第22話 生還」
 オオムカデや「オサムシ」の襲撃を間一髪でかわし、一行は救命艇で東ノ小島を脱出する。
 涼子は、最も近く、人口の多い神野辰島へと進路を決める。
 島に到着し、安堵したのも束の間、新たな敵が現れる…。
「第23話 決断」
 島の上空を飛び交う「ヤンマ」の群れ。
 睦美によると、それは巨大化した虫の中で頂点に位置するものらしい。
 それでも、生き延びるため、彼らは結束を誓う…。
「番外編 山の歩き方」
 (恐らく)中学生時代の睦美の話。
 彼女は、師匠の榎先生に連れられ、初めて山に入る。
 目的は、市から依頼された、キクイムシによる食害の現地調査であった。
 市の森林事務所からは、萬田幹生というチャラい男がやって来る。
 睦美と榎がキクイムシや縄の結び方を談義している背後で、彼はどちらかを襲おうと考えるのだが…。
(「マンガクロス」2018年12月〜2019年3月号掲載)

 H・G・ウェルズ「神々の糧」(1904年)以来、繰り返しブームを起こしている「巨大生物もの」。(注1)
 今現在、日本の怪奇マンガ界では様々な「巨大生物」作品が出ておりますが、個人的に、最重要だと考えているのが「巨蟲列島」です。(注2)
 ストーリーは「修学旅行の高校生達が巨大な昆虫の棲む島でサバイバル」というストレートなもので、そこまで奇を衒ったものではありません。
 ただし、単なるサバイバル・ホラーでなく、昆虫狂のヒロインが恐ろしくマニアックな知識で、危機を一つ一つ乗り越えていくという奇想天外さが売りであります。
 正直な所、そこまでうまく行くものなのか?とは思ったりもしますが、原作者の藤見康高氏が惜しげもなく投入する昆虫トリビアの前では、そんな疑問はどうでもよくなっていきます。(私は昆虫に興味はありませんが、「あとがき」は非常に面白いです。)
 こういう作品、ありそうでなかったのではないでしょうか?
 実は、エポック・メイキングな作品ではないかと考えております。

 あと、これは個人的な意見なのですが、ただ一つだけ気になることがあります。
 それは、必要の感じられないエロ・シーンの多すぎること。
 私は男なので、ぶっちゃけ、いくらあってもかまわないのですが、このせいで、読者層が狭まっているのではないかと心配しております。
 でも、仮にエロ・シーンがなかったとしても、グロ・シーンは本当に情け容赦がないので、女性や子供には向かないでしょうが…。

 この作品には「大巨蟲列島」という続編があり、神野辰島が舞台となります。
 応援しております。

・注1
 ホラー映画の専門家ではないので、詳しい話はできませんが、原水爆恐怖症の1950年代と、動物パニックもの花盛りだった1970年代が特に充実していたように思います。

・注2
 歴史に残る作品となるかどうかは私には判断ができません。
 そんなこととは関係なく、好きな作品です。

2021年5月3〜5・7・8日 ページ作成・執筆

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