はやかわ文子「闇に咲く花」(1990年12月15日初版発行)

 収録作品

・「闇に咲く花 Man-EaterT」(1987年「ミステリーボニータ」No.2)
「増森たかみのマンションに、芝崎朋絵(もえ)という少女が引っ越してくる。
 また、学校でも同じクラスとなり、二人は親友となる。
 朋絵はボーイッシュな風貌に、クールな性格で、父親の仕事の都合で東南アジアにいたが、一人だけ先に帰国したという。
 彼女の部屋には、天井まである巨大な植物があった。
 それは「ラグーン」という名で、つぼみは人の頭よりも大きい。
 たかみと朋絵の仲が深まるにつれ、たかみに想いを寄せる真島は荒れていく。
 真島が夜遊びをしていると、朋絵らしき娘が男と一緒に歩いているところを目にする。
 最初はまさかと思うものの、同じ現場を何度も目撃し、真島は、朋絵が売春していると確信する。
 真島はそのことをたかみに話すが、信用してもらえない。
 また、真島の親友、井上は、男性の連続失踪事件の仕業は朋絵と口走った後で、行方不明となる。
 真島は、朋絵に全ての謎を解く鍵があると考え、彼女の周辺を探るのだが…。
 その頃、ラグーンはもうすぐ花開こうとしていた…」

・「花陰の誘い Man-EaterU」(1988年「レッツBONITA」No.11)
「高校二年のテニス部の六人は、高原の別荘に十日間の合宿に来ていた。
 立野優、田川、坂井、永久保の四人の男子に、奥宮祥子、中津瑞季の二人の女子、そして、保護者の中津崇也先輩(瑞季の兄)。
 そこから少し離れたところに、洋館風の別荘があり、北方沙也香という美しい娘が住んでいた。
 テニス部の男連中は彼女にメロメロで、何かと沙也香の別荘に入り浸る。
 特に立野優は彼女の美しさに惹かれ、彼に想いを寄せる瑞季の心は沈む。
 ある時、優は沙也香の別荘に忍び込み、彼女の秘密を知るのだが…。
 そして、一人また一人、男達が姿を消していく…」

・「隣の音」(1990年「ミステリーボニータ」No.14)
「東都大一年、森川美加は、マンションでの念願の一人暮らしを始める。
 だが、隣の住人はひどく神経質らしく、ことあるごとに壁を叩いて来て、美加は精神的に追い詰められていく。
 隣の住人は、同じ大学に通う新田という青年で、来年、大学を受けなおすとのことでカリカリしていた。
 しかし、彼は壁を叩くだけでなく、美加が、男をとっかえひっかえしているという噂を大学に流す。
 ある時、美加の友人達は、新田の部屋に入る機会を得る。
 すると、彼の言う通り、美加の部屋から、大音量の音楽と、男と戯れる女性の声が聞こえてくる。
 だが、美加と付き合いの長い、霊感少年の堀一平はあることに気付く。
 どうやら、美加が憧れている広瀬先輩が何らかの事情を知っているようなのだが…。
 美加の部屋に「いる」ものとは…?」

 読み応えのある単行本です。
 「Man-Eater」シリーズは、ありそうであまり見かけない「人喰い花」を扱っております。
 一作目の「闇に咲く花」は、登場人物の真島が言うように「自業自得」ではありますので、そこが評価の分かれ目かもしれません。
 それよりは、二作目の「花陰の誘い」の方がよりモンスターものに近く、楽しめました。
 「隣の音」は、騒音問題に地縛霊を絡めた異色作です。
 意外な展開を見せますが、登場人物の新田はかなり気の毒です…。

2021年9月3日 ページ作成・執筆

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