原ちえこ
「メディカルCD@」(1999年9月25日初版発行)
「メディカルCDA」(2000年3月5日初版発行)

単行本@
・「第1話 大樹 隣人と出会う」
 沖大樹は16歳の高校生。
 母親はおらず、考古学助教授である父親と二人暮らしで、家事は大樹の担当。
 彼は隣の邸を長い間、管理していたが、持ち主が帰ってくる。
 その邸の主は羽月よし乃と葵の姉弟であった。
 二人は両親がなく、よし乃は常に着物姿の、高慢かつ人使いの荒い娘で、一方の葵はぱっと見は女と見間違えるような外見であった。
 羽月家の庭を勝手に家庭菜園に使っていたことから、大樹はよし乃に炊事係をさせられることとなる。
 おかしなのは姉弟だけでなく、一夜にして邸の庭に様々な植物が繁茂していた。
 庭は姉の薬草園で、彼女は色とりどりのガラス玉のような丸薬を大事にしているのだが…。
・「第2話 よし乃 見合いをする」
 羽月家に遠い親戚の夫婦が訪ねてくる。
 羽月家は代々入り婿で、夫婦はよし乃にある男性を紹介する。
 彼は安志というイケメンだが、非常に正確の悪い男であった。
 よし乃は大樹に彼女の丸薬を選ばせ、彼に出す茶に入れる。
 大樹が選んだのは「地の底にくすぶるような」「うす暗い光をおびた」ものだったが、その効果は…?
・「第3話 葵 レイニーと出会う」
 ある日、大樹と葵は大樹の父親の大学を訪れる。
 大樹の父親はこのところ、泊まり込みをしており、着替えを届けに来たのであった。
 用事の間、葵が構内を散歩していると、西洋人らしい男性と知り合う。
 彼の名はレイニー・アダム・香藤で、西洋古代史の講師でがあった。
 葵は彼から彼の著書「アトランティスを継ぐ」を手渡される。
 その瞬間、葵の心の中にある風景が広がるが…。
・「第4話 よし乃 変身する」
 放課後、大樹は葵と一緒に帰る約束をしていたが、校門に葵の姿はない。
 実は、彼はレイニーに誘拐されていたのであった。
 そんなことはつゆ知らず、大樹は帰宅後、よし乃に買い物に付き合わされる。
 買い物は植物ばかりで、庭に植えて、薬用に使うらしい。
 その後、羽月家に葵から電話がかかる。
 電話の内容は助けを求めるもので…。
・「第5話 大樹 婚約する」
 化粧をして見違えるぐらい美しくなったよし乃と大樹はレイニーの部屋を訪れる。
 そこで、明らかになる意外な事実の数々。
 羽月家と香藤家は親類で、よし乃とレイニーは幼い頃からの婚約者同士であった。
 この二つの家は同じ祖先を持つのだが…?
 また、レイニーの目的とは…?

単行本A
・「第6話 大樹 合宿する」
 夏休み。
 大樹の所属する歴史研究会は高原の温泉付き別荘で合宿することとなる。
 この別荘は、大樹が憧れている麻矢先輩の知り合いの持ち物で、大樹も彼女から直々に誘われる。
 だが、別荘の持ち主はよりによってレイニー・アダム・香藤であった。
 レイニーは大樹にいい感じを抱いてはおらず、彼は料理当番を押し付けられ、別荘で一人。
 そこに麻矢先輩が現われ…。
・「第7話 よし乃 心配する」
 大樹は崖から滑落し、しかも、硫化水素中毒の危険も迫り、大ピンチ。
 そこで、よし乃からもらった丸薬を一つ、飲んでみる。
 すると、動物の言葉がわかるようになるが、彼に話しかけてきたのは野生化したアライグマであった。
 アライグマは彼に食べ物をねだり、よし乃の丸薬を勝手に食べるのだが…。
・「第8話 レイニー 善人になる」
 よし乃からもらった丸薬の最後は「心の奥のやさしさをひき出すクスリ」であった。
 それをうっかりレイニーが飲んでしまい、彼は善意でキラキラのナイス・ガイになってしまう。
 そんな時、大樹を心配したよし乃と葵が別荘にやって来る。
 葵はこの機にレイニーに様々な質問をぶつかるのだが…。
・「第9話 大樹 告白する」
 ある夜、大樹は奇妙な夢を見る。
 遥か昔の世界で、彼はよし乃の料理人として仕えていた。
 現実でも、彼は羽月家の料理番として忙しく働いており、どこか共通している。
 更に、よし乃の存在は彼の中で予想以上に大きくなっていた。
 一方、レイニーは、よし乃と大樹を引き離すべく、朝夕、料理を作って、よし乃に取り入るようになる。
 また、よし乃もそれを悪くは思っていないようで…。
・「最終話 レイニー 逆襲する」
 大樹の告白はよし乃に受け入れられる。
 だが、レイニーは納得せず、大樹の家に忍び込み、彼に謎の丸薬を飲ませる。
 よし乃と葵はアライグマから大樹の危機を知らされ、彼を捜しに行く。
 一方、大樹は夢を見ていた。
 その夢では彼が前世で住んでいた国が大津波に襲われようとしていた。
 彼とよし乃、レイニーの関係とは…?

 「サスペリア」に掲載されたファンタジー・ラブ・ロマンですが、中途半端な内容です。
 アトランティス大陸(注1)とかリインカーネーションとか不思議な効能を持つ丸薬とかそれっぽい要素がいろいろ出てきますが、どれもあっさりし過ぎで、物足りなさのみ残ります。
 特に、家では女性の着物姿で「外見は女だけど実は男」という葵のキャラがほとんど活かされてないのはキツい。(男なのは「突然変異」とのことですが、それ以上の説明はありません。)
 また、レイニーのキャラもどこか釈然としないなあ…。
 読んでる間、うまくストーリーがふくらまず、ストーリーの軸がぶれていっているような印象を受けました。
 でも、この漫画、ほんわかした雰囲気が個人的には心地よく、作品自体は好きだったりします。(ただ、主人公の大樹はふられてばかりなのが可哀そう…。)

・注1
 昔、ソノラマ文庫海外シリーズで、ヘンリー・カットナー「御先祖様はアトランティス人」というのが出ていて、面白そうと思ってましたが、プレミアがついてしまい、結局、読まずじまい…。
 ヘンな表紙の本でした。

2023年10月1・2日 ページ作成・執筆

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