伊藤潤二「溶解教室」(2015年1月1日初版発行)

 収録作品

・「溶解シリーズ」
「溶解教室」(2013年「もっと!」vol.2)
 栃木県の県立日陰高校。
 2年B組に奇妙な転校生がやって来る。
 彼は阿澤夕馬という青年で、どんな些細なことでも謝って謝って謝り倒すという「謝罪魔」であった。
 ある日、同じクラスの有須慶子は、下校途中、奇怪な少女に追われ、車に接触し、入院する。
 すると、病院に夕馬が現れ、慶子の両親に謝罪する。
 慶子を追いかけた少女は、ちずみという彼の妹であった。
 以来、彼は毎日、病室を訪ねては、両親に謝罪し、慶子も彼が来るのを心待ちにするようになる。
 一週間後、退院した彼女は、ちずるがあちこちでトラブルを起こし、夕馬が謝りまくっていることを知る。
 彼と一緒に謝ってハイになった勢いで、彼女は、ちずると友達になろうと思い、一人で夕馬の家に向かうのだが…。
「溶解美女」(原題「美女崇拝〈溶解美女〉/2013年「もっと!」vol.5)
 奈央は、中学時代の友人の舞子から彼氏を紹介すると連絡があり、待ち合わせる。
 だが、二年ぶりに会った舞子は、以前とは似ても似つかぬ奇怪な容貌に変化していた。
 彼女の彼氏は阿澤夕馬というハンサムな青年で、彼女を美しいと褒めちぎる。
 しかし、彼は舞子よりも奈央の方が美しいと言って、奈央に乗り換える。
 彼はことあるごとに奈央の美貌を褒め称えるが、その一方で、彼女の顔は崩れていき…。
「溶解アパート」(2014年「もっと!」vol.6)
 あるアパートに引っ越してきた、奇妙な夫婦。
 アパートの住民達は、夫婦による壮絶な児童虐待に眉を顰める。
 夫婦には、礼儀正しく、すぐに謝罪する兄と、何を考えているのかわからない妹がいた。
 ある時、耐えかねた住民の男性が、夫婦の虐待を止めに入るのだが…。
「ちずみの恋」(原題「溶解 ちずみの恋」/2014年「もっと!」vol.7)
 小学生の智人は、下校途中で見かける、奇怪な少女に恐れを抱く。
 彼女は彼を追いかけては、彼の肌を嘗めまわすのであった。
 更に、少女の兄を名乗る青年が両親に謝罪に現れ、兄妹の噂を知る彼は戦々恐々とする。
 ある夜、彼は両親の脳が溶け始めているのを見て、医者を呼ぶために表にとび出す。
 路地であの少女を見かけ、逃げているところを、見知らぬ青年に匿われるが、その家は…。
「悪魔の会見」(2014年「motto!」vol.8)
 「溶解教室」で、脳にダメージを受けながら、生き残った有須慶子は、夕馬・ちずみ兄妹の居場所を察知する能力を得ていた。
 新聞記者の浜岡は、彼女の協力を得て、兄妹を追い続ける。
 だが、兄妹と接触した人物が次々と行方不明になったり、謎の死を遂げていき、浜岡の調査は行き詰る。
 そこで、彼は夕馬に、兄妹についてのスクープ記事を新聞に載せる旨を話し、彼自身の口で説明するよう求める。
 数日後、兄妹は新聞社に現れるのだが…。

・「再会」(2013年「もっと!」vol.3)
「由加は、必ず光夫のもちに戻ってくると約束して、病死した。
 以来、光夫はずっと彼女の気配を感じ続ける。
 彼女の気配は日々、強くなるものの、感じられる方向は刻々と変化する。
 彼女はどこから戻ってくるのであろうか…?」

・「大地の子」(2013年「もっと!」vol.4)
「裏山に遠足に出かけた園児達が大勢、行方不明となる。
 関係者が総出で子供達を捜すと、繁みの奥の空き地に、園児達が裸で胸まで地中に埋まっていた。
 親達は子供達を引っ張り出そうとするのだが…」

2021年8月7日 ページ作成・執筆

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