戸部けいこ「ミステリー劇場C 青い閃光」(1990年12月30日初版発行)

 収録作品

・「続エイプリル・フール 青い閃光」
「あの事件から一年。
 未央は母や姉と和解し、また、新しい学校でもうまくやって、心の平安を取り戻していた。
 4月1日、彼女が母親と外食をして、帰ろうとした時、ガラの悪いバイカー達に絡まれる。
 そこに、バイクに乗った青年が現れ、バイカー達の邪魔をして、未央達は無事にその場から逃れる。
 新学期の日、彼女のクラスには、元・暴走族だという新島勇がいた。
 未央は彼がバイクの青年ではないかと感じ、彼に話しかける
が、否定される。
 だが、彼にはどこか彼女と似た雰囲気があるのであった。  放課後、未央は、バイクに乗った勇の上に、建設現場の鉄筋が落ちるのを目撃する。
 咄嗟にパワーを使い、勇は助かるが、未央は疲労困憊で、病院に運ばれる。
 病院に付き添った勇は未央から秘密を聞かせれ、話をしているうちに、二人は次第に打ち解ける。
 これをきっかけに、二人は急接近。
 しかし、バイカー集団が勇と未央を狙っていた…」

・「修学旅行夜話」
「写真部に伝わる、伝説の卒業アルバム。
 その中のあるクラスの集合写真の右隅には、首のない女子生徒が写っていた。
 首のない女子生徒はソバージュの女子生徒の肩に手をかけているが、ソバージュの女子生徒は首のない女子生徒からボーイフレンドを奪ったのだという。
 恋人を奪われた女子生徒は電車にとび込み、首を切断。そして、ソバージュの女子生徒も修学旅行中に京都の旅館で病死したのであった。
 岡田かおりと折原美里は、そのアルバムを、写真部の不破和人から見せてもらう。
 美里と和人はカップルであったが、実は、かおりも和人に想いを寄せていた。
 かおりが空気を読んで、部室から去った後、和人は美里に、本当に好きなのはかおりだと告げる。
 美里は一人になりたいと部室に残り、かおりが彼女を迎えに行くと、雨で薄暗い部室の中、首のない女子生徒が立っていた。
 それは見間違いのようであったが、逆上した美里はかおりに掴みかかり、首を絞めあげる。
 かおりがふと見ると、美里の首がなく、彼女を突き飛ばすと、美里は倒れ、意識不明となる。
 かおりは、首のない女子生徒について知るために、京都への修学旅行に行くことを決める。
 だが、バスには、かおりを恨む美里の生霊がついてきているらしい。
 平安神宮に寄った時にお祓いをしようとするも、途中、和人が熱を出し、バスはそのまま、宿に行ってしまう。
 かおりが泊まったのは、ソバージュの女子生徒と同じ旅館のはなれ。
 中は不吉な感じはしないと安心するも、その夜…」

・「夕暮れ時につかまえて」
「中学二年の田村まりなは、両親の離婚に加え、母親の再婚話もあり、非常に憂鬱であった。
 母親の再婚相手は、小田という小説家で、まりなは彼がどうも好きになれない。
 家に帰りたくなく、公園で時間を潰していると、洋館からもの悲しい笛の音が聞こえてくる。
 見てみると、ベランダで少年が腰かけて、横笛を吹いていた。
 その晩、彼女は、テニス部の野崎部長に、明日の午後六時に公園で会う約束をする。
 彼には付き合って欲しいと言われていたが、彼女はちゃんとした返事をせず、クラブをやめていた。
 翌日、まりなが公園に行くと、あの洋館から笛の音が聞こえる。
 洋館の前で中を窺っていると、笛を吹いていた少年に声をかけられる。
 彼はピーター・グラントという外国人の少年であった。
 彼に招かれ、中に入ると、外国人の子供だけでパーティをしていた。
 彼らは両親から遠く離れて暮らしており、服は立派ではあるが、妙に古風であった。
 子供達は彼女を慕い、まりなは彼らの母親役として楽しく過ごす。
 まりなはここを「ピーターパン」に出て来る「ネバーランド」のようと思い、ここで暮らすことを決めるのだが…。
 「ネバーランド」の恐るべき秘密とは…?」

・「見返り橋」
「明治十六年十一月。東京府。
 見返り橋で、工藤志乃は、薩摩出身の外務省権小書記官、天谷弥(あまがい・ひさし)と運命の出会いをする。
 工藤家は佐賀の名門であったが、幕府について戦ったため、父と兄は戦死、家は没落し、親戚の高倉家に身を寄せていた。
 彼女は、結婚相手を探し、工藤家を再興するため、不本意ではあったものの、鹿鳴館の舞踏会に参加することを決める。
 しかし、弟の孝知は薩長を憎み、大学には通わず、自友党の連中とつるむ。
 舞踏会の夜、志乃は弥の姿を目にする。
 恥ずかしさのあまり、志乃はその場を逃げ出すが、弥は彼女の後を追い、彼女に明日、見返り橋のたもとで待っていると告げる。
 翌日、二人はそこで出会い、彼は自分の志を打ち明ける。
 だが、条約改正に反対する自友党は、改正案起草を担当する弥の命を狙っていた…」

 どの作品も力作ですが、個人的なヒットは「修学旅行夜話」。
 首のない女子高生の幽霊がつきまとう描写はかなり不気味で、夜には読まない方が賢明です。
 また、「見返り橋」はホラーではなく、歴史ロマンです。
 時代考証には若干の疑問がありますが、ロマンティックな内容で、割と好きです。

2021年12月3・5日 ページ作成・執筆

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