戸部けいこ「ミステリー劇場D 魔女の刻印」(1991年7月20日初版発行)

 収録作品

・「悪魔の契約」
「牧村美沙が転校した青蘭学園は、真崎組組長の娘、真崎冷子によって支配されていた。
 美沙は皆で団結して、真崎冷子に対抗しようと考えるが、冷子を恐れて、誰も協力しない。
 孤立無援の彼女は帰宅後、怪現象に襲われ、居間で寝る。
 すると、金縛りにあい、魔王ルシフェールが現れる。
 ルシフェールは力を貸す代わりに、「魂も肉体も(…)ゆだねる」という「血の契約」を、彼女の意志に反して、させる。
 目を覚ました美沙は、夢かと思うが、左手の人差し指からは血が出ていた。
 翌日、美沙は、この学校で再会した幼馴染の学と共に、生徒会を動かして、冷子と戦おうとする。
 だが、協力者を片端から潰され、美沙と学は真崎組の車に拉致される。
 真崎家で、美沙は、学を助けるために、冷子に屈服することを選ぶのだが…」

・「血の伯爵夫人」
「彼女が意識を取り戻すと、見知らぬ十字路にいた。
 ここがどこで、何故、こんな格好をしているのか、思い出そうとしても、何も思い出せない。
 そこに馬車が通りがかり、彼女を城へ連れて行ってくれる。
 女性はフィレンツ伯夫人で、城には若い娘達が多く滞在していた。
 夫人は彼女をもてなし、ジフレという唖の少女を世話係としてつける。
 そして、北の塔には決して近づかないよう念を押す。
 平穏かつ退屈な日々を彼女は城で送るが、ある夜、奇妙な夢を見る。
 夢の中で、ある女性が両手を組んで祈っていた。
 その女性が口にする「美沙」という名前に懐かしさを覚え、そちらに行こうとするが、コウモリの群れに邪魔される。
 彼女は自分の名前がミサらしいことは知るものの、他のことは全く思い出せず、夜中に散歩に出かける。
 すると、北の塔から悲鳴が聞こえ、ミサが塔に登ると…。
 北の塔の秘密とは…?」

・「裁かれし者」
「城を脱出したミサとジフレは、ジフレの生まれた家へ行く。
 その家は村はずれにあり、ジフレの祖母、ゼルマは薬草や医療の知識を豊富に持ち、人助けに活用していた。
 城壁都市マルクスブルクに住む医者、ドルトは、ゼルマを敵視し、魔女狩り師のマシュー・ホプキンズに頼んで、ゼルマを魔女として裁判にかける。
 無実でありながら、でっち上げにより、ゼルマに火刑の判決が下される。
 ミサとジフレはゼルマの帰りが遅いのを心配し、マルクスブルクに行った時、ゼルマの処刑を知る。
 ゼルマが火あぶりになろうとするその時…」

・「悪女ジュリアーナ」
「マルクスブルクを離れて以来、ミサはさまよい続ける。
 ある夜、教会で、ミサは、黒ミサを目撃する。
 司祭達に見つかり、追われたミサは崖から転落、下は底なし沼であった。
 そこに、貴族の青年が通りがかり、ミサを救う。
 青年の名はホアン・ド・デステといい、デステ公爵の息子であった。
 彼の館で、ミサは、ホアンの父、シャルルが原因不明の病にかかっていることを聞かされる。
 ホアンは村はずれの教会で黒ミサが行われていると聞き、確かめに行ったところ、ミサを見つけたのであった。
 ミサはホアンに、黒ミサの様子を話す。
 黒ミサで、ブロンドで緑の瞳の女性が兎の血を飲んでいたと話すが、その女性は、彼の幼馴染で許嫁のジュリアーナであった。
 彼女はスフォルツァ家の最後の生き残りで、十年前からホアンの父が後見人になっているという。
 以前はホアンとは仲睦まじかったが、ある日を境によそよそしくなり、その頃から、シャルルの病気が始まっていた。
 ジュリアーナがシャルルを呪う理由とは…?」

 五巻から最終巻の七巻までは、魔女ミサ(やはり、魔女はミサって名前なのか…)を主人公にした続き物です。
 基本的なストーリーは、ミサが悪人達を血祭りにあげる…というもので、あまり捻りはありませんが、残酷描写は容赦なく、なかなか爽快です。
 また、戸部先生が仕入れた知識を片端から投入しており、いろいろと参考になります。
 「血の伯爵夫人」と言えば、エリザベート・バートリですよね。(ラストに、ゾンビも出てきて、嬉しい。)
 あと、第一話「悪魔の契約」は、「エクソシスト」の影響大で、「嗚呼…」と思いました。

2021年12月6・7日 ページ作成・執筆

秋田書店・リストに戻る

メインページに戻る