楳図かずお「おろち@」(1969年1月30日初版・1979年12月10日29版発行)

 時を超えて、さまよい続ける少女、おろち。
 彼女が目撃する、あまりに奇怪な人間ドラマの数々とは…

・「姉妹」
「嵐を避けるために、おろちはある屋敷にお手伝いさんとしてもぐりこむ。
 その屋敷に住むのは、龍神エミ(17歳)とルミ(16歳)の姉妹。
 二人共、非常に美しい娘であったが、18歳になることを死ぬほど、恐れていた。
 と言うのも、龍神家の女性は若いうちは美しいけども、18歳を過ぎると、黒いホクロのようなものが全身に広がり、醜く崩れていってしまうのである。
 そして、最上階の部屋には、二人の母親が閉じ込められていた。
 姉のエミには弘という恋人がいたが、自らの先行きを思い、彼女は彼に別れを告げに行く。
 その間に、母親は発作を起こして急死。
 今わの際に、母親はルミに何かを言い残す。
 以来、ルミはエミに対して優しく接するようになる。
 弘がエミに会いに来た時、ルミは彼に龍神家の秘密を話す。
 そして、ルミ自身は、龍神家の血筋ではないことも。
 それを立ち聞きしたエミは半狂乱となり、ルミを虐待し始める。
 しかし、ルミは姉のことを想い、決してそばを離れず、ひたすら堪え忍ぶ。
 そして、エミが誕生日を迎える前日…」

・「ステージ」
「三歳の目黒佑一は、父親を迎えに行った時、横断歩道で父親が轢き逃げにあう。
 父親はその晩、容態が急変して亡くなるが、唯一の目撃者、佑一が犯人と名指ししたのは、子供番組でお兄さん役で出ている田辺新吾であった。
 佑一は頑強に彼が犯人と主張し、また、田辺にもアリバイがないことから裁判へともつれ込む。
 だが、三歳児の証言能力に疑問があることから田辺新吾は無罪となり、その後、芸能界を引退する。
 彼の引退をテレビで観て以来、佑一はテレビ嫌いとなり、また、家庭事情もあり影のある子供になる。
 長じても、彼は一人ぼっちのままで、周囲からは貧乏とか低能とかバカにされ、白い目で見られ続ける。
 しかし、ある日突然、彼はラジオやレコードを集め始め、これまで見向きもしなかった芸能関係に興味を持ち始める。
 彼が夢中になっていたのは、新人歌手、花田秀次であった。
 中学を卒業した日、彼は、母親のへそくりを持ち逃げして、東京へと出る。
 そして、あらゆる手段を用いて、花田秀次に近づき、遂には彼の第一の付き人となるのだが…。
 佑一の真意とは…?」

・備考
 巻末に「足立蔵書」印。

2019年10月2・3日 ページ作成・執筆

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