楳図かずお「おろちB」(1971年7月10日初版・1980年12月20日28版発行)
時を超えて、さまよい続ける少女、おろち。
彼女が目撃する、あまりに奇怪な人間ドラマの数々とは…
・「骨」
「東北の子吉村に産まれた千恵。
彼女を出産してすぐに母親は他界し、以後、千恵の悲惨な人生が始まる。
酒飲みの父親、意地悪な継母、寝たきりで我儘な祖父と複雑な家庭環境の下、彼女は徐々に感情を表に表さなくなる。
しかし、千恵は、そういう境遇にも関わらず、成長するにつれ、美しい娘となる。
ある時、彼女に結婚話が持ち込まれ、彼女は一も二もなく受け入れる。
夫は優しく、彼女も夫に仕え、二人は伊豆の稲取で幸せな生活を送る。
だが、夫が轢き逃げにあったことから生活は暗転。
千恵の介護で夫は歩けるまでに回復したものの、散歩に出た際、崖から足を滑らして、転落死してしまう。
千恵の悲しみは傍から見ても気の毒なほどで、夫の死をいつまでも嘆き悲しむ。
そんな千恵を見かねて、おろちは夫の人形を作り、魂を人形に宿そうとするが、失敗。
その代わりに、夫の死体が再び生命を得る。
夫は墓からどうにか這い出して来るものの、、身体は半ば腐りかけていた。
千恵もその夫も姿を消すが、二年後、両者は再会する。
千恵はいまだに夫のことを偲んでいたが、再婚しており、ジュンという名の男児にも恵まれる。
だが、夫は千恵に敵意を燃やし、ジュンを誘拐。
千恵は、手紙で指示のあった伊豆の稲取へと単身、向かうのだが…。
そして、この夫婦に暗い影を落としていた、ある真相が明らかとなる…」
「おろち」の中での個人的なベスト・エピソードです。
一種の「ゾンビもの」(注1)で、「ロメロ・ゾンビ」が主流の今から見たら、斬新かも。
まあ、ゾンビと言いましても、かなり無理矢理な設定で、いろいろと疑問は多いのですが、疾走感のあるストーリーでぐいぐい読ませます。
それから、怪奇漫画史に残る(かもしれない)ラストも衝撃的です。
でも、個人的に一番印象的だったのは、おろちの看護婦姿でありましょうか。(ステキです…)
・注1
タイトルから、星新一の傑作「骨」の影響があるのかと思ってましたが、星新一「骨」は「1971年12月」あたりの作品らしいので、私の勘違いでした。
それよりも、池川伸治先生の「奇母・奇墓」(貸本/曙出版)の方が手触りが似ているかもしれません。
・備考
巻末に「足立蔵書」印。
2019年10月4日 ページ作成・執筆