日野日出志「地獄のペンフレンド」(1986年8月15日初版・1988年10月25日再版発行)

「夏休み、東京に住む中学生の黒沢由香は、四人の友人と共に、山奥の田舎を訪れる。
 というのも、由香のペンフレンドである石原あきらから、彼の家に避暑に来るように誘われたからであった。
 写真で見る限り、石原あきらはなかなかいい男で、由香達は彼に会うのが楽しみで仕様がない。
 駅で迎えの車を待っている間に、変質者のような男に付きまとわれるというハプニングがあったものの、タクシーで石原家に着いた由香達はあまりの豪華さにびっくりする。
 また、あきらの母親も和服の似合う、美しい女性であった。
 肝心のあきらはクラブ活動で夕方まで帰れないとのことで、それまで、由香達は屋敷の中を見回ることにする。
 この屋敷の二階には前の持ち主が置いていったという古今東西の拷問道具が集められており、背筋が凍る思いであった。
 夕方、自分の部屋でくつろいでいた由香達は、駅で会った怪しい男が庭でうろついているのを見る。
 あきらの母親にこのことを知らせると、折悪くあきらは友人宅に泊まることになり、屋敷には女が六人だけ。
 そこで、防犯用のシャッターを家中の出入り口に降ろすことになる。
 その夜、由香の友人一人が行方不明になる。
 探そうとした矢先に停電し、同時に、その友人の悲鳴が二階から聞こえてくる。
 あきらの母親の部屋に行くが、ベッドはもぬけの殻で、ベッドのそばには血痕が落ちていた。
 由香達はそれぞれ武装して、二階に上がると、行方不明になった友人がギロチンにかけられようとしていた。
 そして、由香達の前に、斧を構えた男が現れる。
 男に襲われた由香達は散り散りになるが、由香達の運命は…」

 1980年代に流行したB級スプラッター映画の香り(腐臭?)漂う作品です。
 ギロチン、巨大な歯車(?)、丸ノコ、ピラニア風呂といった「スキスキ拷問ショー」に、ラストは腐乱死体の山と、こちらの期待を全く裏切りません。
 まあ、言葉を換えると「ベタ」ということなのですが、ここは日野日出志先生が「B級ホラー」にオマージュを捧げたということにしておきましょう。(単に、時流に乗っただけの可能性もありますが…。)
 ただ、個人的には、同系統の名短編「おかしな宿」(ひなびた民宿に泊まった家族がキチガイ一家にブチ殺されるという話/「まだらの卵」収録)の方がよりストレートで、好きです。
 やはり、「悪魔のいけにえ」のように最後の最後までワケがわからない方が迫力が違いますね。

 最後に、石原あきら君に一言、カッコいい男子の写真で女の子の気を引こうとする、その考えが根本的に間違っているんだよ。

2016年6月26日 ページ作成・執筆

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