古賀新一「ポケバイ・キッド」(1980年1月10日初版発行)

 ポケバイに乗った、小粋な男の子。
 チビっ子と侮るなかれ、彼は「ポケバイ刑事」(もしくは「ポケバイ探偵」)で、推理力も行動力も大人顔負け。
 彼が出会う、奇怪な事件とは…?

・「力士像が動く」
「ある寺の鐘楼の屋根裏にある、四体の力士像。
 そのうちの一つの「夜泣き力士」には、夜中に歩き回ったために、足を釘で柱に固定されたという伝説があった。
 ある夜、銭湯帰りの青年が、寺の近くで力士像と鉢合わせて、驚いた拍子に負傷。
 その後も、彼は幾度と力士像の姿を目にするが、誰も信じてはくれない。
 更には、何者かによって、鐘楼が破壊され、夜泣き力士が盗まれる。
 住職の話によると、大田原という実業家が、左甚五郎作と伝わる夜泣き力士像にかなり執心だったらしい。
 だが、その大田原氏は数日前から行方不明になっていた…」

・「首切り殺人事件」
「ある村で起こった、首切り殺人事件。
 被害者の青年は植木ばさみのようなもので首を切断されたうえ、その死体には蟹がたくさん群がっていた。
 その村には、蟹満寺という寺があり、その昔、蛇に魅入られた乙女を、乙女に助けられた蟹が助けたという伝説があった。
 そして、再び起こる首切り殺人。
 前回と同じ手口であり、被害者の青年の共通点は、婚約者がいるということ。
 キッドの知り合った娘、稲子にも婚約者がいたが、彼の容貌はまるで蛇のようであった…」

・「凶悪の航海」
「白昼の銀行強盗に遭遇したポケバイ・キッド。
 あっさり逃げられたところに、白髪・白鬚の老人が翌朝7時に港に行けば、強盗達を会えると教える。
 キッドが港に張り込みしていると、顔なじみの迷刑事、柿沼刑事も、同じ老人から情報提供を受け、その場に現れる。
 だが、何故か、二人は、例の老人によって貨物船に拉致されてしまう。
 貨物船には銀行強盗の一味が乗っていた。
 キッドと柿沼刑事はピンチに陥るが、悪党一味は次々と謎の死を遂げていく。
 ことの黒幕は誰なのか…?」

・「恋をする死体」
「ポケバイ・キッドは、丘の上にある病院に、祖母の見舞いへ行く。
 途中、若い別嬪さんとキッドは出会うが、彼女は姉の行方を探していた。
 キッドと共に、病院を探しているうちに、二人は霊安室に迷い込む。
 そこには死体大好きな奇妙な男がおり、数日前、自殺した娘と、代議士の息子である青年が恋仲であると話す。
 だが、彼の話など誰も聞く耳は持たず、代議士は、息子の死体を家に持ち帰る。
 青年の葬式があった日の夜、代議士は刺殺され、青年の死体が消える。
 更に、霊安室からは、若い娘の死体が何者かによって持ち去られていた…」

・「美女村の伝説」
「ポケバイ・キッドの迷い込んだ、山中の村は、揃いも揃って美人だらけ。
 この村には人魚伝説が伝えられており、どうもその関係らしい。
 キッドはある民家に一泊するが、その家の娘、さよりは醜女であった。
 さよりは美しくなりたいと化粧地蔵に祈願しており、祈りが通じたのか、一夜を境に、別人のように美人となる。
 だが、浮かれ喜ぶ、さよりは田んぼの中で、死体となって発見される。
 その死体には無数の刺し傷があった。
 キッドは、さよりの死の謎を解き明かすべく、人魚伝説について調べていくと…」

 古賀新一先生と言えば「エコエコアザラク」に代表されるオカルト・ホラーと相場が決まっておりますが、実は「ミステリー」も多く描いておられます。
 ミステリーの代表作は恐らく、貸本漫画では「二ノ宮新吾シリーズ」、雑誌に掲載されたものは「ポケバイ・キッド」でありましょう。(初期はミステリーばかりですが、ほとんど読んだことがありません。復刻希望!!)
 ただし、ミステリーと言いましても、アガザ・クリスティーやエラリー・クイーンといった本格ものとは全く異なります。
 一応、謎解きはあるものの、納得できるような、できないような、魔訶不思議な作品になっております。(「新青年」っぽいと言えばいいのでしょうか? 謎解きは、某少年名探偵よりも遥かに理不尽です。)
 第一、ミステリーに平然と超常現象を盛り込む時点で推して知るべきです。
 推理ファンからしたら顰蹙ものかもしれませんが、読んでたら、次第に頭がくらくらしてくるという稀有な精神体験ができます。
 これはこれであり!!だと私は思います。

2018年12月3日 ページ作成・執筆

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