古賀新一「復讐鬼いけにえ少女」(1989年1月20日初版発行)

「両親を早くに亡くし、東京のワンルームマンションで姉妹二人で暮らす、弘子と真由美。
 狭苦しい部屋のせいか、真由美は生きながら埋葬され、朽ち果てていくという悪夢を頻繁に見る。
 姉の弘子は平凡なOLであったが、地方の醸造会社の若旦那、大河内健二との結婚がとんとん拍子に進む。
 また、真由美も姉の嫁ぎ先で生活することになる。
 大河内家はその地方では知らないものはいない家柄で、並外れた資産家であった。
 真由美は当初、東京とは違う、広い家に浮かれるが、お手伝いさん達は何故か皆、目や鼻のどれかを失っていた。
 健二の家族は全く普通であり、真由美は安堵するものの、姉が片耳を失っていることに気付く。
 その夜、真由美は眼球を置いた皿を捧げ持った女中を見かけ、その後をつける。
 女中は母屋から離れた蔵へ入ると、その中に祭ってある仁王像にその眼球を供える。
 真由美が問うと、「自分自身の生きた肉を供え」「神聖なる世界と交霊を行う」ためと女中は答える。
 そして、一月も続いている長雨は祟りだと話すと、姿を消す。
 実は、大河内家にはユキという娘がいて、その容姿は真由美と瓜二つであった。
 だが、長雨のためだろうか、身体がナメクジのように変化する奇病にかかっていたのである。
 ある夜、仁王像が祭ってある蔵にユキ以外の家族一同が集められる。
 健二の父は、神の超自然の力を得るために、人身御供を捧げると話し、家族の中から生贄を選ぶために、それぞれの名前を書いたロウソクを燃やす。
 最初に火が消えたのは、真由美のロウソクであった。
 弘子は、真由美を連れて逃げようとするが、雷で折れた避雷針が額に刺さり、惨死。
 真由美は、棺桶に閉じ込められて、生き埋めにされる運命となる…」

 秋田書店で「血みどろの蟲屋敷」「闇の死人学園」と怪作ばかり描き下ろしていた古賀新一先生でありますが、この作品もかなりキテます。
 タイトルからして「復讐鬼いけにえ少女」…並大抵のセンスではありません。屈指のインパクトを誇るタイトルであります。
 内容的には、古賀新一版「早すぎた埋葬」と形容できるでしょうか。
 それに、生贄と引き換えに繁栄を与える仁王様」「なめくじ少女」「白アリ」といった要素が一緒くたになって、やはり奇妙かつ独特な味わいを持つ作品となってます。
 破天荒さにかけては、前の二作より大人しめではありますが、「陰湿さ」は一番です。

2017年6月5日 ページ作成・執筆

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