柿崎普美
「闇姫転生@」(1990年3月25日初版・7月30日3版発行)
「闇姫転生A」(1990年9月10日初版発行)
「闇姫転生B」(1991年5月5日初版発行)


 単行本@
・「闇姫転生」
 果林が小さい頃、父親が、亡くなった親友の息子、火渡龍(ひわたり・とおる)を家に引き取る。
 こうして二人は兄妹になるが、お互いに惹かれながらも、その間に壁があった。
 時は流れ、二人は高校生。
 果林は園芸部に所属し、植物も動物も好きであったが、何故か、動物は全くなつかない。
 一方の火渡龍はスポーツも万能で、女子生徒からモテモテであったが、過保護なまで、果林に接し、同じ園芸部に所属する。
 果林はそういう龍を素敵な兄として慕いながらも、ことあるごとに反発してしまう。
 ある時、園芸部にいた二人は、狂犬に襲われる。
 狂犬の正体は犬にとり憑いた「魍鬼」で、龍が不思議な力を発揮して、やっつける。
 その時、果林は彼に、彼女が昔から感じていた「ぞっとするような…えたいのしれない不安感」でを感じるが、彼は素知らぬふりをする。
 更に、その後、果林は、真奈川という女子生徒に襲われる。
 龍にふられて、嫉妬にかられた彼女は、魔物に心をのっとられていた。
 プールに転落した果林は、混乱の中、彼女を呼ぶ声を聞く。
 その声を聞きながら、果林は、自分の前世が、光世界の反乱軍のリーダー、闇姫であったことを思い出す。
 そして、龍は、前世の彼女の宿敵であった龍王の転生であった…。
・「闇の龍」
 闇姫の記憶を封じ、普通の人間に戻った果林。
 彼女は、別のクラスに転入してきた水奈子という女子生徒に恐怖を抱く。
 水奈子は、龍と同じく「光の戦士」で、彼とは一緒に戦った同胞であった。
 彼女は果林を襲うが、龍に止められる。
 闇姫討伐は王の名を受けた者だけの役目であり、龍は「むやみにものの命をあやめるのは魔の者」と彼女を叱責する。
 しかし、水龍の水奈子は、龍の力を封じ、果林が闇姫と化さぬかどうか試そうとするのだが…。
・「闇の檻」
 果林が龍に殺される夢…これが二人の間に暗い影を落とす。
 また、二人の住む町では、人々が憎しみや殺意にかられやすくなり、殺人事件や自殺が頻発する。
 二人の通う学校も同様で、生徒達は皆、ピリピリして、喧嘩早くなっている。  そんな中、登校した果林は如月という不良に絡まれる。
 龍は彼女を助けるも、如月の言葉に我を忘れ、火龍の力を発揮し、火傷を負わしてしまう。
 そこに現れたのは、美人で、しかも、誰に対しても物おじしない黒姫という保険医であった。
 果林は彼女を見た途端、既視感を覚える。
 また、黒姫先生を見て以来、龍の様子もおかしい。
 だが、黒姫は闇の世界のものであった。
 彼女は、不満や憎悪に満ちた人の心を喰らい、まず、如月を餌食にする。
 龍は、黒姫の正体を突き止めようとするも、逆に、彼女に操られ、果林を殺そうとする。
 黒姫と果林は何らかの因縁があるようなのだが…。

 単行本A
・「闇の王」
 龍をなかなか殺そうとしない闇姫に、魔物達は見切りを付ける。
 彼らが新たに生み出したのは、闇世界を光の者から取り戻し、治めるための王、闇王であった。
 闇王は、黒沢聖という生徒に化けて、果林のクラスに潜入する。
 闇王の目的は、完全な王となるために、果林の中の闇姫の力を自分のものにすることであった。
 同じ闇の波動に共鳴し、闇姫は闇に身をゆだねようとするのだが…。
 一方、復活した魔物達は、生徒達にとり憑き、龍を襲っていた…。
・「闇の彷徨」
 闇王への憎しみを糧に、力を取り戻した闇姫。
 そんな彼女を龍はただ見守る。
 この龍の態度に業を煮やし、光の世界から三人(三匹?)の龍童がやって来る。
 彼らは、闇姫が人間の身体にいる時に殺し、光の世界で浄化させようとしていた。
 龍は、闇姫自身が心の闇を封じないと意味がないと主張するが、彼らは聞く耳を持たない。
 龍童達は闇姫に挑むも、力の差は圧倒的であった。
 そこに、龍が現れ、闇姫と対峙するのだが…。
・「闇の領域」
 新学期を迎えた龍と果林。
 二人は、八木尚子という女子生徒に出会う。
 彼女の双子の弟は、病気でずっと入院中のため、彼女は内にこもりがちであった。
 果林は、彼女が闇の者と感じ、彼女の後をつける。
 闇姫は、尚子が闇の力の媒介になっていることを見抜き、自分が彼女に闇の力を引き出させている間、龍にその源を突き止めさせる。
 龍が、闇の道を辿ると、そこは病院で、尚子の弟、達也が入院していた…。
・「ピグマリオン」(「華激団」という同人誌に描かれたものを特別に収録)
 2418年、ネオ・トキオ・シティ。
 この世界では、人口過剰によって出産制限があり、ピグマリオン(恋人代理のアンドロイド)が若者達の間で流行っていた。
 タケル=ハヤカワは、悪友のオリバ=タキが月基地研修旅行に行く一週間、彼のピグマリオンを預かることになる。
 彼女は最新モデルで、まだプログラムはされていない。
 タケルは彼女と過ごすうちに、彼女の性格が変わっていくのに気が付くのだが…。

 単行本B
・「闇の聖域」
 闇の結界に覆われた町。
 人々はどんどん闇に取り込まれ、理性や愛情を失っていく。
 龍は、町からの脱出を図るも、光の世界の者ゆえに、闇に反発して、結界を抜けることができない。
 憔悴していく龍を見かねて、果林は、心の奥深くに身を潜めた闇姫に呼びかけるのだが、彼女は沈黙したままであった。
 闇王は、町の人を操って、果林を襲われ、龍を闇の世界に引き入れようとするのだが…。
・「闇の降臨」
 果林の心に打たれて、闇姫と龍は協力して、闇王に立ち向かう決意をする。
 二人は樹海へと向かうが、そこには闇王への世界への通路ができていた。
 闇世界には実体は入れないため、闇姫は、龍に果林の身体を預け、意識だけで闇の世界に入る。
 しかし、そこにも闇王の罠が待ち受けていた…。
・「闇の迷宮」
 闇世界を守るため、龍王は、闇王とその配下の魔物を全て、地上世界へと降臨させる。
 闇姫と龍は、いずこかに転生した闇王を追い、ヨーロッパまでやって来る。
 そこでは、森や湖が酸性雨によって、死の世界と化していた。
 闇王の瘴気をたどって、ある湖に行くと、畔で人魚(なんだけど羽が生えてる)が泣いていた。
 闇姫が人魚から話を聞くと…。
・「闇の終焉」
 闇王の見せる幻の中をさまよううちに、闇姫と龍は「闇王が支配する未来」に入り込む。
 そこは核戦争後の世界で、人々は「核の冬」に絶望し、次々と闇王の死の炎に身を投げる。
 闇姫と龍は人々を止めようとするが、逆に、憎悪を向けられ、闇姫の怒りが爆発。
 闇姫が、光世界に反旗を翻した理由が明らかになると同時に、闇王の正体が明らかとなる。
 龍も彼女の力にかなわないが、果林は身体を張って、龍をかばう。
 闇姫が果林のそばに見たものとは…?

 ダーク・ファンタジーの力作です。
 闇姫のモデルは、ビックリマンのワンダーマリアだそうな。(柿崎先生はビックリマンの大ファンとのことです。)
 ただ、一気に読むぶんにはさほど、気にならないのですが、じっくり読むと、闇姫のキャラがぶれているようで、やっぱり、わかりにくい内容です。
 この闇姫様、闇世界の元・女王なのですが、人間に転生したことを差し引いても、ナイーブ過ぎで、冥界の姫って感じではないです。(しかも、「ツンデレ」キャラ。)
 更に、最終巻では、作者が憤りを感じていた環境問題が盛り込まれ、悪いのは人間という方向の話になり、闇姫のダークさは薄れていく一方です。
 まあ、設定の詰めが甘いという欠点はありますが、ファンタジーの隠れた佳作だと私は思います。

2021年7月27日/8月17・18・22日 ページ作成・執筆

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