高橋葉介「学校怪談C」(1996年9月10日初版・1997年2月10日再版発行)

・「第55話 お爺ちゃん」
「放課後、山岸は、クラスの不良に寂れた公園へ誘われる。
 不良は昨日、そこでブランコに座った老人と出会っていた。
 老人が歌をやめないので、彼は老人に暴力を振るうと、老人は彼に金を差し出す。
 不良は今日も老人がやって来ているかどうか見に行くのだが…」

・「第56話 お礼の一割」
「夜の踏切で、山岸は、踏切り待ちをしていた男性がバッグを置き忘れていることに気付き、声をかける。  踏切りの途中で、男性は山岸にお礼をしたいと言って、バッグを開ける。
 その中に入っていたものは…?」

・「第57話 チョコレート」
「バレンタインデーの前日。
 来里子(くりこ)はチョコレートの買い出しの帰り、同じクラスの森長に付きまとわれる。
 彼は執拗にチョコレートを欲しがり、来里子のチョコを全部食べてしまったばかりか、彼女の手に噛みつく。
 彼女は近くの山岸の家に逃げ込むのだが…」

・「第58話 心臓抜き」
「女子生徒が心臓をくり抜かれて殺される事件が起こる。
 警察が捜査するも、犯人も心臓も見つからなかった。
 放課後、山岸は角野和子という女子生徒に一緒に帰って欲しいと頼まれる。
 二人は廊下を歩くうちに、手をつないで、何だかいい雰囲気。
 校舎の外に出ると、オカリナの音色が聴こえてくる。
 見ると、こんな時間に、学校の敷地内で、黒づくめの小男がオカリナを吹いているのだが…」

・「第59話 ダンス」
「ある夜、山岸が自動販売機にジュースを買いに行くと、ブロック塀の上で黒い服を着た少女が踊っていた。
 不思議に思い、翌日、友人達に聞くが、どの話も噂話ばかりで全く当てにならない。
 山岸は再びブロック塀の所まで足を運び、彼女の踊りを見る。
 踊り終わった後、彼女が求めたものとは…?」

・「第60話 藁人形」
「ある中年の教師は、自分の担任の生徒達を林の中で見かける。
 彼が声をかけると、生徒達は逃げ出し、後には、木に打ち付けた藁人形が残されていた。
 教師は多くの横暴な言動により生徒の恨みを買っており、その藁人形はどう見ても、彼を模したもの。
 翌日、彼は生徒に藁人形に授業をしてもらえと嫌味を言って、帰宅するのだが…」

・「第61話 お肉屋さんでアルバイト」
「美戸久仁子はまさしく「大盛肉子ちゃん」であったが、このところ、どんどん痩せて来て、すっきりした美人となる。
 ある日、山岸は彼女が精肉店でバイトしていることを知る。
 その店で買った肉は非常に美味であった。
 久仁子はもうすぐ辞めるつもりであったものの、店長の頼みで復帰する。
 しかし、彼女は学校を休むようになり、山岸は見舞いに行くのだが…」

・「第62話 ミャオウ」
「山岸は、登校途中、三人のクラスメートがゴミ捨て場にいるのを目にする。
 彼らは段ボール箱に入れられていた、奇妙な生物をいじめていた。
 いじめるたびに、生物は「ミャオウ」と鳴き、ますます彼らの嗜虐心を煽る。
 最後に、生物は石で押し潰され、息絶える。
 山岸は彼らを責めるも、「止めずに見てたくせに」と言われれば返す言葉がない。
 放課後、ゴミ捨て場を通りがかると、生物の死体を前に誰かが泣いているのだが…」

・「第63話 おとうと」
「本間那由子の身辺で奇妙なことが続発する。
 下駄箱の中に泥を詰められたり、机が小さな子供の手形で汚されたりする。
 これをきっかけに、彼女はある記憶を呼び覚ます。
 幼い頃、彼女は「葬式ごっこ」をして、空き地に弟を生き埋めにしたと言うのだが…」

・「第64話 ガブリカ」
「登校途中、山岸は募金を呼びかける少女を目にする。
 彼女は「ガブリカ救済委員会」に所属して、「ガブリカ」保護の資金を募っていた。
 詳しいことはわからないが、ガブリカとは絶滅寸前の稀少な野生動物らしい。
 放課後、山岸は教師と共にガブリカの見学に出かけるのだが…」

・「第65話 ゾンビ湯」
「家の風呂釜が壊れたため、山岸は近所の銭湯を訪れる。
 浴室に入ると、奇妙な臭いが鼻をつく。
 見ると、沸騰した湯船の中で男達が煮崩れていた。
 山岸が腰を抜かしていると、背後に銭湯の主人が立っており…」

・「第66話 怪物大百科」
「山岸の周囲に現れる怪物達。
 ム・ダイ、マンティス・レディ、影男、ビッグ・ハンド・ファミリー、夢魔、空男…。
 彼らは山岸に「早く返す」よう言うのだが…」

・「第67話 血と処女」
「人を殺すことに快楽を覚える少女。
 夜、駅のホームで、彼女は山岸に話しかけられる。
 彼は彼女を捜していたと話す。
 彼の夢に出てくる少女は彼女にそっくりなのであった。
 夢の中の彼女は血まみれで、彼は彼女を心配するのだが…」

・「第68話 酒宴」
「柏木という女子生徒の父親はアル中であった。
 山岸は彼女に金を貸したことで、そのことを知る。
 ある日、彼女は顔中にケガをしていて、彼は彼女に大丈夫かと聞く。
 すると、彼女は「お酒をタダで手に入れる方法」を考えたと話す。
 それはお墓に供えている酒を持ち帰るというものであった。
 しかも、最近、夜になると家にお客が来るらしい。
 それから一週間、彼女は学校を休む。
 山岸が彼女の家を訪ねると…」

・「第69話 矢島って誰だ?」
「山岸は、学校の玄関で、ある女子生徒から手紙を託される。
 宛名は「矢島文雄」で、中には「愛しています」と書かれた紙が一枚。
 しかし、彼のクラスには「矢島文雄」という男子生徒はいない。
 廊下を彼が歩いていると、目の前に彼女が立っている。
 山岸が何かの間違いではないかと言うと、彼女は「矢島君に渡して」と繰り返し、自分の喉をナイフで掻っ切る。
 首から血を流しながら、彼女は「あたしと矢島君と結婚していたら あんたなんか生まれなかったのよ」と言う。
 この少女の正体は…?」

・「第70話 黒子さん」
「黒子さんは厚塗りの化粧をして、黒い服を着ている年齢不詳の女性(かなりの歳の模様)。
 彼女は大抵、公園にいて、子供達の顔を覗き込んでは、自分の子供を捜している。
 昔、彼女は子供を亡くしたらしい。
 ある日、二人の女子生徒がいたずらで、黒子さんに彼女の子供は学校で迎えを待っていると教える。
 夜の八時頃、山岸が学校の前を通りがかると、黒子さんが校門の前にしゃがみ込んでいた。
 仕方なく、山岸は彼女を校内に案内する。
 一通り見て回るが、彼女の子供はどこにもいない。
 それでも、黒子さんは子供を待つために…」

・「第71話 雨」
「雨の中、山岸が登校すると、豪雨で休校になっていた。
 彼は、雨宮水向子という女子生徒と一緒に帰るが、雨はどんどん強くなり、道路は川のように冠水する。
 すると、山岸は背後から蛇のようなものに襲われる。
 咄嗟に振り向き、傘を向けた拍子に、それの眼に傘の先端が突き刺さり、それは逃げていく。
 ずぶ濡れになった彼は雨宮の家に寄り、風呂を勧められるのだが…」

・「第72話 らくがきおばけ」
「山岸は、みちこという女の子が道に落書きしているのを目にする。
 みちこが描いているのは「おばけ」で、おばけは彼女の母親を食い殺していた。
 みちこはそのおばけに母親を殺してと熱心に祈る。
 彼女の母親がみちこをグズ呼ばわりして、いつも責め立てていた。
 その夜、山岸は落書きの「おばけ」と夜道ですれ違う。
 翌日、みちこの母親が惨殺死体で発見され、みちこは行方不明となる。
 山岸はみちこと偶然出会い、彼女に学校へと案内されるのだが…」

 「ダンス」は幻想的かつ詩的なショート・ショートで、「学校怪談」でも屈指の名編です。
 個人的には、「血と処女」「酒宴」のダークさにも惹かれます。

2022年3月20・27日 ページ作成・執筆

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