高橋葉介「学校怪談D」(1997年1月5日初版発行)

・「第73話 乙姫」
「放課後、山岸が階段を降りている時、廊下を、「お迎えじゃ」と言いながら、足のある巨大な魚達が通り過ぎる。
 彼が腰を抜かしていると、そこに乙姫先生が現れる。
 二人で廊下を歩きながら、乙姫先生は、近々、学校をやめ、海の近くにある故郷に帰ろうと話す。
 そして、職員室にいる浦島先生に伝言と箱を渡すよう頼むのだが…」

・「第74話 双面鬼」
「ある夜。
 人気のない道で山岸は美しい女性とすれ違う。
 彼女の後頭部には醜い顔があり、「この顔やろうかあ」と彼を追いかけてくる。
 一方、別の道では、女子生徒がコートを着た、中年の男に声をかけられる。
 男がコートを広げると、首から腰部まで顔になっていた。
 彼女も男から追われ…」

・「第75話 眠り姫」
「白雪は学校に着くなり、眠たくて仕方がない。
 適当な理由をつけて、保健室で寝ていると、そこに山岸が現れる。
 眠ったふりをしている彼女に山岸はキスをするが、彼は彼女の口の中に吸い込まれてしまう。
 「おいしかった」と思ったところで、彼女は先生に起こされる。
 今までのは、授業中に見ていた夢だったのだが…」

・「第76話 河童」
「山岸は河原の家に泊まりに行く。
 河原の両親は留守で、彼は山岸に「河童のミイラ」を見せる。
 これは河原家に代々伝わる家宝で、彼のご先祖様が退治したという。
 ビールに酔った河原はミイラにビールをかけ、間もなく、二人共寝込んでしまう。
 夜更け、河原が目を覚ますと、ミイラがなくなっていた。
 畳に足跡があり、それは大きくなりながら、庭の池に続いているのだが…」

・「第77話 金魚」
「山岸は金魚すくいの前に立っていた。
 水槽の中の金魚は友人の桑野、石川、斎藤の顔をしている。
 彼は、自分が大木に雨宿りをしようと言ったせいで、三人が落雷で死んだことを思い出す。
 金魚をすくえば、友人の命は助かると言う。
 代金は一回につき、一年分の寿命。
 山岸は友人達を救い出せるのだろうか…?」

・「第78話 行水」
「夏休み、夏風邪の友人を見舞った帰り、山岸はレトロな街並みをぶらついてみる。
 木塀に穴があいているので、覗いてみると、向こうで、女性が桶の中で行水をしている。
 すると、縁側に出刃包丁を持った男が現れ、女性を刺殺する。
 山岸が腰を抜かしていると、老人に話しかけられる。
 老人は家の主人で、山岸は家の中に入れてもらうが、塀の向こうには…」

・「第79話 ひまわり」
「山岸は、ひまわりを持った着物姿の女の子を目にする。
 彼女はひまわりを道路や家の前に供えて拝むが、そこでは必ず不幸がある。
 山岸は少女を問い詰めようとするのだが…」

・「第80話 海魔」
「友人二人と海水浴に来た山岸。
 三人は沖の島に向かって泳ぐ。
 何だか泳ぎにくく、小島に着いた時、手足に髪の毛のようなものがたくさんまとわりついていた。
 訝っていると、笑い声が聞こえ、巨大な女性の顔が彼らを見つめていた。
 女性の顔は水中に没するが、彼らは恐怖で小島から動けなかい。
 日も暮れ始め、意を決して、浜に向かって泳ぎ出すのだが…」

・「第81話 きつね」
「夏休み、山岸は母方の祖父(山岸龍造)の実家に向かう。
 昼間でも暗い山道を歩いていると、着物姿の女の子が、お腹が痛いとうずくまっている。
 山岸は狐だと一瞬で見抜き、女の子の悪戯を次々と見破るのだが…」

・「第82話 公園怪談」
「公園で少女が山岸に怖い話を語る。
 夜、一人で花火をしている、浴衣姿の少女の話。
 砂場で下半身が埋まっている少年の話。
 喉の渇きを訴える、痩せた老人の話。
 そして…」

・「第83話 病院怪談」
「山岸は友人の神代を病院に見舞いに行く。
 おかしなことに病院は医者や看護婦の姿がない。
 ようやく見つけた病室で、神代は「この病院は気味が悪い」と話す。
 彼は幾度も奇怪な体験をしていた。
 神代に頼まれ、山岸は彼を背負い、病院から逃げ出そうとするのだが…」

・「第84話 さっちゃん」
「急な不幸のため、山岸はおじの家でいとこの佐智子のお守りをすることになる。
 佐智子は泥遊びが大好きで、山岸に両親を作ったと見せる。
 庭には泥を盛り上げて作った人形が二体あった。
 山岸は佐智子を風呂に入れ、その間に泥人形を見る。
 すると、泥人形が動き出し…」

・「第85話 餌」
「海水浴に来た少女。
 彼女が岩場で肌を焼いていると、隻眼で片足が義足の老人が話しかけてくる。
 彼はこの岩場から跳び込んだら五万円あげると彼女に言う。
 念のため、腰にロープを巻き、少女は意を決して海に跳び込む。
 すると、海の中には巨大なお化け魚がいて、彼女は呑み込まれてしまうのだが…」

・「第86話 蠅」
「羽田先生はどうも様子がおかしい。
 ハエの幻覚を視ているらしく、いもしないハエをしきりに手で払っていた。
 山岸が心配して声をかけると、一瞬、羽田の顔面に蛆がたかっているように見える。
 その日から、羽田は学校を休み、しばらくして、彼の家から、妻の腐乱死体が発見される。
 行方不明だった羽田も数日後、ゴミ捨て場で薬物自殺をした死体で見つかるのだが…」

・「第87話 オバケ注意報」
「トイレで女子生徒が二人、怪談話で盛り上がる。
 「オバケに注意」の貼紙をする男の子の話。
 塀に貼られた「この先オバケ」の貼紙の話。
 いつの間にか話しに見知らぬ女子生徒が加わっていて…」

・「第88話 壺男」
「山岸は、最近転校してきた椎名に家に来るよう誘われる。
 家には使用人の老婆がいるだけで、豪華な料理が用意してあった。
 食後、山岸は床の間に飾ってある奇妙な壺に興味を示す。
 壺の中のものを見た直後、彼は猛烈な睡魔に襲われ、泊まることになるのだが…」

・「第89話 ジキルとハイド」
「山岸は、廊下でうずくまっていた少女を、保健室に連れて行く。
 保険医はいなかったが、生物の教師が通りがかり、彼女に「強壮剤」を飲ます。
 すると、彼女の容貌が徐々に凶暴になり、激しく暴れ出す。
 二人がかりで押さえつけていると、彼女は元通りになる。
 この薬を教師も服用していたのだが…」

・「第90話 毒娘」
「ある少女に突如、起こった異変。
 彼女が右手で触れたものは皆、激しい毒にやられてしまうのであった。
 学校で孤立し、追い詰められた彼女は陸橋から跳び下り自殺を図るのだが…」

 前袖の作者のコメントにて、高橋葉介先生が「シリーズ最強」と謳っておりますが、その言葉に嘘偽りはございません。
 粒よりのショート・ショートが幾つも収められ、高橋葉介先生の短編の巧みさを存分に堪能することができます。
 特に、「金魚」は完璧なショート・ショートで、必読です。
 また、大甘な内容ですが、「毒娘」が大好きです。

2022年3月22・31日 ページ作成・執筆

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