はやかわ文子「死を呼ぶ学園」(1988年8月20日初版発行)
収録作品
・「死を呼ぶ学園」(「ボニータ」掲載)
「白鳳学園高等部で相次ぐ一年生徒の死亡事件。
宮沢という男子生徒がサッカーのゴールポストで圧死。
十日も経たないうちに、森下という男子生徒がプールの排水溝に足を挟まれ、溺死する。
二人は中等部の「V−7」出身で、去年は同じクラスの人間が二人事故死していた。
学園に途中入学した椎名は、ある事故をきっかけに、唐木ヨシミと知り合う。
だが、以来、二人は何者かに狙われ、幾度か命の危険にさらされる。
ヨシミによると、深く学帽をかぶった、白鳳学園の男子生徒の仕業らしい。
ある日、椎名が友人の北沢とゴミを捨てに行くと、北沢は背に矢を射られ、亡くなる。
最初は、北沢が椎名の身代わりになったと思われるが、彼は「V−7」出身であった。
更に、同じクラスの出身の遠野が、校門の有刺鉄線で首を吊られて死ぬ。
また、事故死した生徒達も皆、何者かに殺されたようで、警察が動き出す。
「V−7」クラス出身者が口を閉ざす中、去年、転落死した府川という男子生徒が何らかの鍵を握っているらしいのだが…。
そして、殺人者の正体は…?」
・「緋色の研究」(「ボニータ」掲載)
「チャールズ・ハワードは聡明かつイケメンな、町の名医。
彼は、スミス代議士の娘、クレアと婚約し、幸せの絶頂にあった。
ハワードには、ギルバート・モートンという親友がおり、彼は、ハワードとは正反対に、人間嫌いの偏屈科学者であった。
二人は大学の時からのライバル同士であったが、天性の勝利者であるハワードにモートンは憎しみを抱き続けていた。
病身のモートンは、ある野望のために、「脳交換」の研究をひそかに続け、完成させる。
しかし、ハワードに研究のことを勘付かれ、モートンは、助手のノーマン・フォールに命じて、ハワードと脳の交換を行う。
手術は成功し、モートンは、望んだ全てを手に入れたかと思ったのだが…」
・「理由なき犯行」(「ボニータ」掲載)
「不良生徒の片桐亨は、屋上で優等生の松本貴と出会う。
ふとしたことから、屋上の金網が外れ、二人は宙ぶらりんになるが、松本貴はわざと手を放し、転落死する。
彼が何故自殺したか考えていると、佐々木亜弓という女生徒から、松本貴が万引きしていたと聞かされる。
それも一度だけではなかったが、担任の加藤先生がその件をもみ消したらしい。
亨は、加藤先生が松本貴を死に追いやったと判断し、その罪を追求するのだが…」
「死を呼ぶ学園」は力の入ったミステリーで、なかなか読ませます。
ただ、有刺鉄線で首吊りを犯人がどうやったのか、方法が気になります。
「緋色の研究」は、19世紀(?)の米国を舞台にした怪奇SF(と言えるかな)で、この単行本ではベストと思います。
初期の作品とのことですが、絵もキャラもストーリーも活き活きとしているのが魅力です。
ただし、「理由なき犯行」は反吐が出るぐらい、不快な内容です。
何なの、この主人公?
共感できる人もいるのかもしれませんが、私は全く受け付けない。
ボンクラが、ひとりよがりな正義感で人を断罪して、嫌がらせをしているだけやん。
個人的に、最低な作品の一つ。
2021年9月2日 ページ作成・執筆