小室しげ子「シャドーエンジェル」(1992年7月20日初版発行)

「第一話/未知からのメッセージ」
 楡崎唯は、初潮を迎えた時から、喜怒哀楽が激しいと強烈な静電気を発する体質になる。
 更に、ひどい頭痛にも襲われるようになるが、彼女の脳にある、金属板のように見える腫瘍がが原因らしい。
 そんな時、祖母に勧められ、唯はテレビの「世界奇人変人大会」に出場し、見事優勝。
 だが、その後、唯は祖母から意外な事実を知らされる。
 実は、唯は「選ばれた地球人」(シャドーエンジェル)であり、地球を攻撃しようとするエイリアンと戦う宿命であった。
 そして、彼女のテレビ出演によって、彼女のもとには仲間が集まるが、同時に、敵にも目を付けられることとなる。
 祖母の話の後、唯の前に、ゼルダという老人が現れるが…。

「第二話/エンジェルに愛を…」
 唯は、彼女と同じシャドーエンジェルという矢代木龍子という女性から電話で呼び出される。
 矢代木龍子は、資産家の中年女で、類まれなる予知能力を持っていた。
 彼女は唯に、近い未来の話をする。
 三日後の午後四時、長野県の霧里温泉郷で、シャドーエンジェルの赤ん坊が産まれる。
 だが、このままでは、赤ん坊は、エイリアンのヒットマンによって殺されてしまう。
 そこで、唯のパワーで、赤ん坊を救ってほしいと龍子は唯に頼む。
 その後、唯をかばって、龍子はヒットマンに殺される。
 赤ん坊を救うため、唯は長野県に向かうのだが…。

「第三話/魔の指輪」
 唯の友人、広海が、メキシコのユカタン半島の旅行から帰ってくる。
 お土産は、隕石から作られたという指輪であったが、この指輪をはめた途端、太古の恐竜のビジョンが見え、凄まじい悪寒に襲われる。
 唯が戸惑っていると、指輪の石が彼女に話しかけてくる。
 この石は実は、パルス星人というエイリアンであった。 
 彼らは、人類誕生以前の6500年前、新しい星に向かう途中、宇宙船が隕石に衝突し、地球に落下。
 様々なものに意識を移しながら、彼らは存在し続けていたが、人類との共存を選ぶ者と、人類を滅ぼしてでも目的の星に行こうとする者(フラッシュ)とに分かれる。
 そして、フラッシュに対抗するため、善玉のエイリアン達はシャドーエンジェルを創造したのだという。
 唯は、彼らの選んだ男と協力するよう言われるが、そんな時、カリフォルニア大学卒、かつ、イケメンの英語教師が現れる…。

「第四話/小刀の謎」
 矢代木龍子の甥である、新潟出身の矢代木一平。
 彼は、予備校に通うために、唯の家に居候することとなる。
 龍子の甥だけあって、シャドーエンジェルではないものの、霊能力者であった
 唯は、彼に憑いた「越後剣守山の城主飯村様の家臣」を名乗る霊から、頼みごとをされる。
 霊達は、数百年間、飯村家の家宝を守ってきたが、最近、何者かの妨害にあっているらしい。
 唯は、一平の生まれ故郷に行き、剣守山に隠された秘密の石室に案内される。
 飯村家の家宝は小刀であったが、ある時間にあると、火の玉が飛び回り、小刀に近づこうとしているらしい。
 そして、小刀の柄には、レンズのような二つの物体がくっついていた。
 この物体は地球外の物質らしいのだが、この正体とは…?

「第五話/地球よ永遠に…!」
 シャドーエイリアンをサポートする宇宙科学研究所。
 そこで、唯は、彼女のフィアンセだという青年の夢を見させられる。
 彼は、パルス星人達が残した知識とエネルギーの集合体であった。
 だが、彼はまだ試験管ベイビーほどの状態でしかない。
 何故なら、十八年前、彼の入ったカプセルを乗せた宇宙船が地球に向かうものの、地球に似た星に不時着してしまったのである。
 彼を救い出すために、唯は、水野・高松・金井の三人と、宇宙船でその星へと向かう。
 その星は、時間が恐ろしいスピードで流れる星であった。
 唯は、フィアンセのカプセルを無事、回収できるのであろうか…?

 女流SF漫画と言えば、萩尾望都先生や竹宮恵子先生の作品がすぐに思い浮かぶと思いますが、小室けい子先生の「シャドーエンジェル」は、断言します、怪作です。
 手触りは柿崎普美先生の作品に近く、煩雑、かつ、壮大、そして、荒唐無稽な設定の数々に頭がくらくらします。
 加えて、小室けい子先生独自の「ほんわか」した絵柄や雰囲気が、ストーリーに合っているような、合ってないような…。
 でも、最終話では宇宙船で他の惑星にまで行くというスケールの大きさで、かなりの意欲作であることは確かです。
 小室けい子先生はSFがお好きだったのでしょうか?(もう鬼籍に入られましたので、真相は雲の上です…。)

2021年3月26日 ページ作成・執筆

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