柿崎普美
「死人狩り@」(1993年11月30日初版発行)
「死人狩りA」(1994年10月15日初版発行)

 巳神伶(みかみ・れい)は、死の神の使い。
 彼の使命は、「悪霊」と「悪霊を産み出す人間を狩る」こと。
 ただし、狩人には「人の命をさばく権利」はなく、その決定は、その人物に深く関わる「運命の主」にゆだねられる。
 「魔」を狩るため、伶は学園を渡り歩いて行く…。

・「第1話 十番目の羊」
「小森摩理と今井由紀は親友同士で、誕生日は同じ「10月3日」。
 だが、由紀は急な自動車事故で亡くなってしまう。
 実は、過去三年間で、同い年の「10月3日」生まれの少女達が死因は違うものの変死しており、由紀は九番目の犠牲者であった。
 由紀が事故死した時、摩理は死神の姿を目撃するが、その姿はクラスメートの巳神伶とそっくり。
 彼は摩理に執拗につきまとい、彼女を恋人扱いする。
 しかし、摩理は、臨時教師の織田とひそかに付き合い、将来を約束した仲であった。
 おかしなことばかり起き、彼女は伶を死神、もしくは悪魔ではないかと疑う。
 また、伶から、十三歳の亡くなった、織田の妹のことを聞かされ、彼が強引に織田との仲を引き裂こうとしていると考える。
 助けを求めて、彼女は織田のもとへと向かうのだが…」

・「第2話 花影の悪魔」
「日高あかりは不器量で、内気な娘。
 クラスではいじめっ娘グループの標的にされ、一人で花壇の世話をしている時が一番幸せであった。
 ある時、彼女が自分の容姿を嘆いていると、窓ガラスに美しい女性が映り、彼女に話しかける。
 その女性は、美人女優として有名だったが、謎の跳び下り自殺を遂げた林美奈子であった。
 愕然としているあかりに、いじめっ子グループの一人が掴みかかると、二人はもつれあって階段から転落、いじめっ子グループの一人はあかりの下敷きになって圧死する。
 あかりは、夢の中で、林美奈子から、美しくなるためにと、いじめっ子の「命の血」を飲ませられる。
 実際、目を覚ました時、あかりは以前よりも若干、きれいになっていた。
 彼女は、彼女をかばってくれた巳神伶を振り向かせるために、もっと美しくなることを望む。
 だが、それには更なる「命の血」が必要であった…」

・「第3話 やさしい死神」
「和樹は、大資産家の愛人の息子で、母親が亡くなって以来、一人暮らしの身。
 普通の高校生ではあったが、父親の死が近いため、相続争いに巻き込まれ、本妻から殺し屋が次々と彼に差し向けられる。
 だが、何故か、彼を狙った殺し屋が皆、死んでしまい、クラスメートからは「死神くん」の綽名を頂戴する。
 そんな彼を、幼馴染の夕美は心から心配する。
 母親の死後、彼の雰囲気は怖くなり、何を考えているのかさっぱりわからない。
 ある時、彼は、別のクラスの巳神伶を目にして、顔色を変える。
 彼は伶を殺し屋と思い込み、彼に宣戦布告、すんでのところを夕美に止められる。
 夕美は和樹の秘密について薄々気付くが、ある晩、さらわれてしまい…」

・「第4話 悪夢の檻」
「及川ゆかりは、男のように身体が大きく、クラスで孤立していた。
 そんな彼女を「一番の親友」と呼んで、相手にしてくれるのは、真田夕子のみ。
 真田夕子は美しく、明るく、学校の人気者であり、また、ゆかりの憧れであった。
 ゆかりは、夕子を傷つける者を激しく憎み、そのせいか、学校では死人が続出する。
 ある時、あかりと夕子の前に、別クラスの巳神伶という男子生徒が現れる。
 彼の背後に、あかりを呼ぶ何者かの気配があり、更に、彼の「なぜ夕子を守らなくてはならない」という質問に彼女は深い戸惑いを覚える。
 夕子は、伶が二人の仲を裂こうとしていると、ゆかりを説得するのだが…」

・「第5話 暗闇の王子」
「スポーツに力を入れる、人気の新設校、私立九条高校。
 スポーツ特待生に選ばれた橋本夏美は、理事長の息子の手塚光彦に出会う。
 彼は、彼女の「王子さま」である手塚一彦の弟であった。
 十年前の夏、幼かった彼女は、両親の田舎で、大きな別荘に住む一彦と友達になり、将来、結婚する約束をする。
 しかし、病弱だった一彦は、その年の冬には東京で亡くなってしまったのであった。
 弟の光彦は、一彦にそっくりではあったが、スポーツ万能のイケメンで、夏美に交際を申し込む。
 夢のような話に夏美の心は揺れるものの、巳神伶という男子生徒が彼女に彼に関わらないよう警告する。
 手塚光彦の秘密とは…?」

・「第6話 悪夢の封印」
「巳神伶の前に、師匠のサロメが現れる。
 彼女によると、「カオスの芽」が出始めており、「魔」の勢力が増大しているという。
 そのため、巳神伶が新人だった頃に、封印した魔物が逃げ出しており、彼はその魔物を再び封じなければならない。
 彼は、サロメをお目付け役として、ある学園へ行き、彼を狙う張本人に会う。
 それは、山室みなみという、か弱い女子生徒で、一年前、交通事故で瀕死の状態から回復して以来、驚異的な絵の才能を発揮していた。
 伶が彼女の描いた絵を調べると、絵には、原因不明の衰弱死を遂げた生徒の命が吸い込まれている。
 だが、山室みなみには、魔の波動はあっても、全く邪気というものが感じられない。
 彼女に促され、彼が彼女の家を訪れると、彼女の部屋には、彼の絵が多く描かれていた。
 彼女は、彼に絵のモデルになってくれるよう懇願するのだが…」

・「第7話 天魔の羽」
「相原聖子は、霊や未来を視ることができた。
 きっかけは半年前の一家心中で、陰謀により犯罪者にされた父親は、家族を乗せた車で海に突っ込む。
 死の淵で、彼女は、苦しみや悲しみによって死にきれない魂に溢れていることを知り、その悲しみを胸に抱きしめているうちに、彼女だけが助かったのである。
 しかし、人の不幸を予言するために、学校では孤立。
 親友の真奈美との縁も一方的に断つが、ある時、彼女に死の影がかかっているのを視る。
 意を決して、聖子は真奈美に警告するものの、真奈美は逆ギレ。
 無力感に打ちひしがれる聖子の前に、巳神伶が現れるのだが…」

・「第8話 薔薇の鎖」
「勇太と可南子は小学校以来の腐れ縁。
 とは言え、可南子は女子バスケットボール部のエースで成績も良いが、一方の勇太は万年補欠で、全くうだつが上がらない。
 ある日、いつも通りに可南子と喧嘩をした勇太は部活を脱け出し、薔薇園にやって来る。
 そこは、五年前、先生と恋仲になった女子生徒が、先生に殺され、埋められてという事件があった場所であった。
 彼はそこで、彼の理想にぴったりの女子生徒と出会い、夢中になる。
 彼は彼女と仲良くなるために、毎日、薔薇園を訪れ、薔薇の手入れの手伝いをする。
 だが、彼女のそばにいて、幸せなのに、心の隅には可南子の姿があった…」

・「めいわくな話」
 霊媒体質なアシスタント、津久井さんに関するお話。
 また、柿崎先生も、多少の霊感があるそ〜な。

 「ダークハンター 死者の学園」(集英社)の続編で、恐らく、秋田書店の「プリンセス」に掲載されたのではないでしょうか。
 第一話から第四話までが単行本の一巻に、第五話から第八話、「めいわくな話」が単行本の二巻に収録されております。
 作品に関しては、「運命の主」という設定が若干、話をややこしくしている印象を受けました。
 それでも、ストーリーは良く、今でも通用する面白さだと私は思います。

2020年6月10・11日 ページ作成・執筆

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