曽祢まさこ「聖三角形」(1998年7月20日初版発行)

 収録作品

・「聖三角形」
「桜井あすかと松原透子は、母親が親友同士の関係で、幼い頃から親友でライバル。
 気が強く、はっきりしているところも共通していて、そんな二人が同じ男子生徒を好きになる。
 二人は相談した結果、その男子生徒、羽鳥要(はとり・かなめ)に同時に告白する。
 しかし、羽鳥要は、すぐには結論が出せないので、二人一緒に付き合うのなら、構わないと言ってくる。
 こうして、高校一年の夏、三人の付き合いが始まる。
 関係は妙なバランスを保って、良好なまま続くが、約一年後の、あすかの誕生日の一週間前に、事件が起きる…」

・「殺人事件」
「ななえは平凡な女子学生。
 父親は平凡なサラリーマン、そして、平凡かつ善良な父親。
 母親は、一面で神経質な面がありながらも、のんき者の、優しい女性。
 そんな普通の一家の住む町で、バラバラ殺人事件が起きる。
 死体の身元はわからず、捜査は難航。
 ななえの友人の女生徒が、殺人事件について推理を巡らすが、ある時、ななえは自分の家庭にその推理が当てはまることに気がつく…」

・「閉ざされた夏」
「中学三年生の夏休み、湯川生子は予備校で勉強に追われる身。
 そんな灰色の日々の唯一の慰めは、同じ予備校の秀才、冬樹伸之。
 東京の予備校に移ったという噂を聞き、がっかりした生子だが、授業中、窓の外を見ると、予備校の前の道路でこちらを見上げている冬樹伸之の姿があった。
 生子は予備校をエスケープして、伸之のもとへ行く。
 元気のない伸之に、気晴らしをしようと生子は二人で遊園地に行き、日が暮れるまで楽しく過ごす。
 もう帰宅時間だったが、家に帰りたくなさそうな伸之の様子を見て、生子はもう少し伸之に付き合おうと決める。
 すると、伸之が、生子に家に来ないかと誘ってきた…」

・「にがい風」(「ミステリーボニータ」1997年11月号)
「授業中、出来心でカンニングしそうになった長岡弓子。
 数日後、そのことを脅迫する手紙が弓子のもとに届く。
 手紙には、図書館の二階にある文学全集の指定されたページに、千円札を挟んでおくよう指示してあった。
 カンニングをしようとしたけど、実際にはやっていないと書いた手紙を挟んでおくと、週明けの月曜日、黒板にある言葉が記されていた。
 それは「情欲をいだいて女を見る者は心の中ですでに姦淫したるなり」という聖書の言葉で、彼女の返信への回答であった。
 弓子は、斜め後の席に座っている、片想い中の守屋浩之が怪しいと思う。
 浩之は、図書館の二階をしばしば訪れており、また、しばしば彼の視線を感じる。
 彼女は思い切って彼に手紙のことを聞くと、実は、彼も過去に脅迫状をもらっていた。
 二人は協力して脅迫犯人を捜すのだが…」
 登場人物の守屋浩之の読んでいる本が、アシモフとホーガンなんて、渋いなあ…。

 どれも水準以上の作品だと思いますが、「殺人事件」は出色ではないでしょうか?
 ミステリーとしても、一級品であるように思います。
 ちなみに、四作のうち、三作が「困った母親」がテーマです。
 まあ、何といいますか…人生、いろいろありますぁ〜な。

2015年9月26日 作成・執筆
2016年1月4日 ホームページに公開
2023年7月20日 加筆訂正

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