中村理恵「夜の向こう側」(2012年9月30日初版発行)

・「第一夜」(「ミステリーボニータ」2012年1月号+2月号)
「志村真菜はネットでいじめにあい、現在、不登校中の高校二年生。
 また、彼女の父親は失踪しており、母子家庭であった。
 ある初夏の午前一時、彼女は家にいたくなくて、コンビニに行く。
 コンビニには深夜にもかかわらず、いろいろな客がいたが、同じ学校の古賀慎司が店員をしていた。
 彼は学年のトップであったが、急に学校に来なくなり、今、臨時のバイトをしているという。
 更に、クラスメートの三人娘(三谷アキ、田代ゆかり、(名字不明)ミカ)の三人が来店する。
 この三人は真奈を陰でいじめた張本人で、真奈はパニックにより過呼吸を起こす。
 その時、空間が揺らぎ、溶けて、渦巻く。
 目を覚ますと、窓の外は赤黒く、今はどうやら夕方らしい。
 周囲を見回すと、店の中の人々も彼女と同じく気絶していた。
 三人娘は帰ろうとするも、コンビニの中は停電しており、自動ドアが動かない。
 ミカがドアを手で開けると、外からタコのようなモンスターが現れ、その触手が彼女の胸を貫く。
 真菜も襲われるが、慎司が助けに駆けつけ、皆で協力して、モンスターを店外に押し出す。
 救急車を呼ぼうとするも、携帯電話も圏外。
 ヤンキーのカップルは外にとび出るも、彼らもまたモンスターの餌食になる。
 コンビニに取り残されたのは、真菜、慎司、三谷アキ、田代ゆかりの他に、
・佐良洋介〜体育大一年生のマッチョマン。
・田川賢一(36歳)〜会社員。臆病かつ愚痴っぽい性格。
・レイト〜中学二年生。小生意気なゲーム・キッズ。
・SAKYA〜歌手。
 の計八人。
 彼らはコンビニに籠城して、助けを待つのだが…」

・「第二夜」(「ミステリーボニータ」2012年2月号)
「コンビニの外には密林が広がっていた。
 事態のあまりの異常さに皆の精神は限界に近づいていく。
 その最中、SAKYAの悲鳴が聞こえ、裏の休憩室に駆けつけるも、彼の姿がない。
 裏口のドアが開いており、彼は何ものかに連れ去られたらしい。
 真菜と慎司は彼を助けるため、密林の中にとび出していく…」

・「第三夜」(「ミステリーボニータ」2012年4月号)
「SAKYAはイカのようなモンスターの巣に囚われていた。
 その場にレイトも現れ、彼の機転でSAKYAの救出に成功する。
 しかし、母モンスターに襲われ、逃げる途中、彼らは穴に落ちる。
 そこは安全らしく、四人は休憩するのだが…」

・「第四夜」(「ミステリーボニータ」2012年6月号)
「一行がコンビニに戻ると、巨大生物たちが群がっていた。
 田川賢一、アキ、ゆかりを救出し、一行は密林を進む。
 行く手には紫色の海。
 そして、白骨の森。
 その森で彼らは人骨を発見し、慎司は自分達の身に何が起こったのかようやく理解する。
 また、真菜にも人骨に心当たりが…」

・「最終夜」(「ミステリーボニータ」2012年8月号)
「彼らは再びコンビニへと戻り、この森の「主」と対峙する。
 力を合わせて、もとの世界に戻ることができるのであろうか…?」

 粗筋を読むだけで、勘の良い方はお気づきでしょうが、この作品、スティーブン・キングの傑作中編「霧」からかなりインスピレーションを受けております。
 ただし、「コンビニに籠城して、モンスターと戦う」だけではもろパクリになってしまうので、異世界の密林を探検するという要素を加えております。
 個人的には、これが緊張感を削ぐ結果になったのでは?
 と言うのも、「霧」ではスーパーマーケットの外に出ることはすなわち死を意味しておりましたが、この作品の主人公達はろくな武器を持っていないのに、巨大生物がウロウロする密林をひょんきょんうろついても、大して身に危険が及ばないのです。
 ストーリーがストーリーなので、「サバイバル」の要素をもっと強調すべきだったように私は思います。
 ただ、「霧」ほど、人間ドラマがドロドロしていないのが救いと言えば救いかも…。
 ともあれ、キングの「霧」に真正面から挑戦したガッツは称賛に値します。

2023年8月18・19日 ページ作成・執筆

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