藤澤勇希・原作/戸田泰成・作画
「海喰い@」(2020年11月1日初版発行)
「海喰いA」(2021年6月25日初版発行)
「海喰いB」(2022年1月1日初版発行)


単行本@
・「第一話 終わりの始まり」
 久賀直道は電気屋の息子で、内気な少年。彼の母親は病気から快復したばかりで、彼が店を支えていた。
 その彼の幼馴染は、瀬織海沙姫(みさき)という、アネゴ肌で強気な娘。
 西醍寺高校に進学した二人は、入学式の翌日、離島での臨海合宿に参加する。
 フェリーで直道の同室となったのは影山、佐野、須藤の三人。
 影山は、中学の時、有名なバスケ部のキャプテンで、成績も断トツの優等生であった。(ちなみに、佐野、須藤は普通の少年。)
 影山達は女子の部屋に遊びに行くが、直道は一人で部屋に残る。
 いろいろと考え事をしている時、船に衝撃が走り、船体にトラブルが起こったとの放送が流れる。
 間もなく船が傾き始め、直道が部屋の外に出ると、船は浸水していた。
 更に、彼は、人を食べる巨大な生物を目の当たりにする…。
・「第二話 絶叫」
 巨大生物をやり過ごしながら、直道は甲板への階段を登る。
 階段の途中で、海沙姫が気絶していた。
 外の空気を吸おうと思った彼女は、パニックになった生徒達に突き飛ばされ、階段で転倒したのである。
 直道は海沙姫を助け、安全な場所で状況を説明する。
 二人は、生きて家に帰るため、救命ボートのある甲板に向かうのだが…。
・「第三話 完全包囲」
 時は少し戻って…
 影山、佐野、須藤の三人は、女子生徒の部屋にやって来る。
 その部屋にいるのは、手越、津川、相馬弥生、海沙姫。(海沙姫は影山達が来た後、部屋を出て、トラブルに巻き込まれる)
 手越は影山に想いを寄せており、彼女の友人の津川は縁を取り持とうとしていた。
 相馬弥生はキャピキャピした少女で、海沙姫に何かとまとわりつく。
 折角、影山が部屋に来たのに、手越は全く話せず、弥生だけが喋りまくる。
 津川はどうにかしようと気を回すも、遂に手越は爆発。
 緊張した空気が流れた時、船に異変が起こる。
 影山は状況が「ひどくやばい」ことに気付き、静かになった時を見計らって、皆と部屋を出る。
 その先で、直道達と出会うのだが…。
・「第四話 救命ボート」
 影山がリーダーとなり、皆は甲板を目指す。
 どうにか甲板に辿り着いたものの、海面は巨大生物だらけで、このままでは救命ボートは使えない。
 直道は影山に、怪物を一カ所におびき寄せる提案をする。
 直道と海沙姫はブリッジへと向かうのだが…。
・「第五話 さっきのこと」
 ブリッジには、中学時代に直道をいじめていた和喜田が隠れていた。
 彼の叫び声で、巨大生物達が集まってくる。
 直道は一か八かの賭けに出て、成功。
 三人で救命ボートに戻る際、和喜田が海に転落しそうになる。
 その時、和喜田を助けたのが、野球マッチョの東堂であった…。
・「第六話 漂流」
 命からがら脱出したものの、ボートのガソリンが切れ、彼らは漂流する。
 疲れから眠り込んだ直道が目覚めると、ボートは島に漂着していた。
 スマホの電源は既に切れ、現在地はおろか、ここが無人島かどうかさえわからない。
 そこで、「チーム影山」と「チーム久賀っち」(海沙姫、相馬弥生、東堂)に別れ、島を探検する。(和喜田はボートで留守番)
 直道達は海沿いに島を一周することを決め、森の中を歩いていると、弥生が犬の声を聞きつける。
 その声の方に行くと、人家があったのだが…。
(「マンガクロス」2020年3月〜8月掲載)

単行本A
・「第七話 視覚」
 絶体絶命の直道達。
 彼らをある人物に助けられるのだが…。
 一方、影山達は遠浅の砂浜を見つける。
 津川はここで潮干狩りをしようと提案するのだが…。
・「第八話 新情報」
 直道達を救った男の名は赤城恒成(こうせい)。
 彼は島で唯一の生き残りであった。
 弥生は自分達の状況を説明し、彼に助けを求める。
 しかし、船は全て巨大生物に破壊され、遅かれ早かれ、餌食になるしかないと言う。
 赤城は、助けることはできないが、倉庫に生活用水の備蓄があることを教えてくれる。
 用心のため、直道は一人で倉庫へと行くのだが…。
・「第九話 人殺し」
 倉庫で、直道は赤城に殴られ、目を覚ますと、手足を拘束されていた。
 彼の頭上で、ラジカセが鳴り、音につられて、イソメジラ(巨大なイソメ/海沙姫が命名)が集まってくる。
 赤城の目的とは…?
・「第十話 ダメな大人」
 直道は赤城に、ラジカセと船舶用レーダーで無線機を作れるから、手を組もうと提案する。
 しかし、赤城は、自分は理屈の通用しないダメな大人だと拒否する。
 とりあえず、飲み水を手に入れた一行は、見渡しのいい墓場で夜を過ごす…。
・「第十一話 無人島の夜」
 陸上は安全なはずだったが、大潮で潮位が高くなり、巨大ヤドカリが上陸してくる。
 ヤドカリに追われ、直道達は森の中に逃げ込もうとするのだが…。
・「第十二話 意地」
 無線機が作れても、バッテリーがなければ役に立たない。
 影山は赤城にバッテリーを貸すよう求め、対立する。
 力ずくで奪い取ろうとする影山に対し、赤城は、通電させた巨大な刃物で威嚇。
 一触即発の時…。
 翌朝、直道は無線機づくりに取り掛かる。
 影山、佐野、東堂の三人は赤城を捜しに行った時、漂着したクルーザーを発見する…。
・「第十三話 正義の味方」
 その船には、元総理の息子であるシンペー、社長の息子であるトシキとタイチ、大学の空手部の主将であるガースーの四人が乗っていた。
 こいつらはそろいもそろって、人格の破綻したカスばかり。
 彼らは和喜田を捕まえ、女性達に手を出そうとする。
 海沙姫は直道に、部品と道具一式を持って逃げるよう言う。
 姿を隠した彼は、シンペーたちに皆に何かあれば、無線機を作らないと脅迫する。
 シンペーに取り入った和喜田の案内で、シンペー達は直道を捜しに行くのだが…。
(「マンガクロス」2020年9月〜2021年3月掲載)

単行本B(注1)
・「第十四話 勝ち目」
 影山達は海沙姫達を助けた後、シンペー達と出会う。
 東堂はバットで殴りかかるものの、ガースーに返り討ちにされる。
 万が一にも勝ち目のないこの状況で、影山は…。
 一方、直道は無線機を完成させるための場所を探していた…。
・「第十五話 優位性」
 シンペー達は、再び捕まえた海沙姫達と浜辺に向かう。
 だが、潮が満ちて、浜辺は水没していた。
 シンペーは、女子達や和喜田が海を恐れていることを不審に思う。
 彼は、海沙姫と和喜田に海の見回りに行かせるのだが…。
・「第十六話 下級国民」
 海沙姫達が逃げたと思い、シンペー達は、弥生と手越に手を出そうとする。
 そこに、電気サーベルで武装した赤城が現れる。
 彼は、弥生達を渡すよう、シンペーに命令するのだが…。
 その頃、陸に上がった海沙姫は、弥生達のために、シンペー達のもとに戻ろうとする…。
・「第十七話 イカれたオッサン」
 直道が見つけた岩屋は、赤城の隠れ家であった。
 そこには予備のバッテリーもあり、これで救助が呼べる。
 しかし、直道は写真立ての写真を見て、あることを悟る…。
 一方、海沙姫は、シンペー達のところに戻ろうとしたところ、弥生達の姿がないことに気付く。
 ホッとするものの、今度は彼女が窮地に陥ることとなり…。
・「第十八話 ブタ箱行き」
 赤城はシンペー達に岩屋を発見される。
 雨でびしょ濡れのため、電気サーベルは使えない。
 赤城は外に逃げ、シンペー達をまこうとするが、逃がしたはずの弥生達に声をかけられる。
 彼女達を守るため、赤城はシンペー達に立ち向かうのだが…。
・「第十九話 お楽しみの時間」
 朝、港で、シンペー達は、弥生達を人質にして、直道達を待つ。
 シンペー達は、自分達の保身のため、直道達を始末しようとしていた。
 直道は、男子全員でガースーに立ち向かおうと提案する。
 しかし、肝心の影山がすっかり自信喪失していた。
 直道達に勝ち目はあるのだろうか…?
・「第二十話 問答無用」
 港に着いた大型巡視船。
 生き残ったのは…?
(「マンガクロス」2021年4月〜10月掲載)

 「巨蟲列島」に追随した作品で、タイトル通り、巨大化した海洋生物が人間を食べまくる内容です。
 ただし、そういうノリは一巻だけで、島に上陸してからは、海洋生物の出番はぐっと減り、人間ドラマがメインとなります。
 スケールダウンと言われても仕方がないのですが、平凡な高校生達(入学したてなので、ほぼ中学生)が、島の生き残りのおっさんや、クソいやらしい上級国民の子弟やらと非力ながらもどうにか渡り合う展開はなかなか面白いと思いました。
 ただし、「高校生達 vs 中二武器のおっさん(注2) vs 上級国民の子弟」と三つ巴のバトルになるのかと思いきや、収拾をつけるためか、「中二武器のおっさん」のキャラが変更されたことがちょっと納得いきません。
 どうも打ち切りになったらしく、海洋生物が巨大化した理由が明かされないままなのは残念ですが、もしも続編の構想があれば、お願いしたいところです。
 個人的には、多少の難はあっても、好きな作品です。

・注1
 単行本の帯に「超巨大ダコの触手が女子高生に絡みつく!!」と書いてあり、表紙もそんな感じですが、そんなシーンは一切ありません!!
 それはちょっとダメなんじゃない?

・注2
 「中二武器のおっさん」と言えば、個人的に思い浮かぶのは、「マンディ 地獄のロード・ウォリアー」のニコラス・ケイジ。
 この「マンディ 地獄のロード・ウォリアー」は実にヘンな映画で、決して優れた映画でも面白い映画でもないと思うのですが、妙に印象的なシーンが多いのです。
 下半身ブリーフ姿のニコラス・ケージが妻を殺された怒りに悶えるシーン、ヘンなヤクを舐めて、トリップするアニメ・シーン、血みどろだけど、緊迫感の全くない復讐シーン…こんなものが今でも鮮明に記憶に焼き付いており、困っております。

2022年2月22〜24日 ページ作成・執筆

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