高階良子「幻のビルカバンバ」(1981年8月10日初版・1986年4月10日19版発行)

 収録作品

・「幻のビルカバンバ」(1980年「プリンセス増刊ボニータ」夏の増刊号)
「ビルカバンバ峡谷にあると伝えられる、インカ帝国の秘密都市(ピトコス)。
 そこには、インカ皇帝の莫大な黄金が隠されていると言われ、多くの人々が捜したが、いまだ発見には至っていなかった。
 大橋教授は、姪の和子と共に、ピトコスの航空調査に赴く。
 霧が深く、調査は無理と、帰ろうとしたところ、飛行機の操縦が急にきかなくなり、ビルカバンバのジャングルに不時着。
 乗員は生命に別条はないものの、大橋教授は足にケガをする。
 一方、和子は彼女を呼ぶ声を聞き、声のする方向へと進むが、その先に穴か崖があり、転落。
 大橋教授の雇ったガイド、コンドルは、大橋教授とパイロットにヘリコプターの待ち合わせ場所に行くよう指示し、一人で和子を捜しに行く。
 彼はインカの末裔で、ピトコスへの秘密の通路を熟知していた。
 ピトコスの中で気が付いた彼女は、黄金の遺跡を見ているうちに、彼女の過去を思い出す。
 彼女は前世において、インカ王国に滅ぼされたチンチャ王国の王女、ワコであった。
 そして、コンドルは、インカ王国の皇帝の弟、トパック・アマル―で、彼女に想いを寄せていた。
 二人が前世の過ごした、インカ帝国の最後の日々とは…?」

・「遠い丘のセラファータ」
「チリの南端近い海上で、一人の男の子が救出される。
 彼は言葉を知らず、体温は人間とは思えない程、低い。
 彼はもの凄い早さで知識を吸収していくが、結局、彼がどこから来たのかはわからなかった。
 相沢船長は彼を「摩林」と名付け、家族として迎え入れる。
 摩林には不思議なところがあり、植物と話すことができるらしい。
 娘のレイは彼とずっと一緒に過ごし、彼への思いは大きく膨らんでいく。
 時は流れ、二人は高校生になり、摩林はしばしば考え込むようになる。
 それは、自分がどこから来たのか、思い出しそうになるからであった。
 ある日、船長をしている父親が久しぶりに家に帰って来た時、チリのサンティアゴで聞いたという不思議な話をする。
 チリの南端には「セラファータの丘」という熱帯樹の繁る地があり、そこにはセラファータという樹木の妖精がたくさん住んでいる。
 十数年前、そこへある青年が漂着し、一人のセラファータと結婚したという。
 その話を聞いて以来、摩林の態度がおかしくなる。
 彼はレイに、自分が普通の人間でないことを明かし、毎日、セラファータに呼ばれていると話すのだが…」

・「風と海とモアイ」(1981年「別冊ビバプリンセス」春号)
「西村真奈(16歳ぐらい)はポリネシア人の孤児で、タヒチに駐在していた日本人の両親に引き取られ、日本で育つ。
 彼女には繰り返し見る悪夢があった。
 それは、黒髪の男性が、彼女に、妙な文字の刻まれた腕輪を渡そうとした時、背後から刺され、息絶えるという内容であった。
 この夢の理由を突き止めるため、彼女は、兄の柳(りゅう/職業はフリーライター)に頼んで、春休み、タヒチに連れて行ってもらう。
 二人はタヒチの思い出の地を回るものの、夢の場面はどうもここではない。
 ある時、真奈は、イースター島の観光ポスターを目にして、こここそが夢に出てくる風景と気付く。
 また、ホツ・マツア王(古代、イースター島の最初の王)の子孫を名乗る老人から、真奈は、夢で見たのと同じ腕輪を見せられる。
 老人によると、真奈は偉大なるアクアク(死んでも生き残る霊魂)のいけにえとなるべき娘らしく、はめられた腕輪を外すことができない。
 早速、真奈と柳はイースター島へ飛び、島を観てまわる。
 多くのモアイのある中で、アフ・アキビの七体のモアイ(これだけ海を向いているらしい)がある場所こそが、真奈の夢の舞台であった。
 そして、四体目のモアイ像の陰に、夢で殺された男性の幻を真奈は視る。
 彼と真奈の関係とは…?
 彼は、ムー大陸の生き残りで、ホツ・マツア王以前にイースター島に住んでいたモアイ(巨人族)らしいのだが…」

・「炎のマダムペレ」
「ハワイ。キラウエア火山近くのオヒアの森。
 宇野淳は、親友だと思っていたジェイクに殺されそうになり、崖から転落する。
 傷ついた身体で森をさまよう彼の前に、火の神、マダムペレが現れる。
 彼女は淳を一目見て気に入り、傷を癒した後、自分の城へと連れて行く。
 だが、淳には、婚約者の桜井チアキがおり、彼女のところへ帰ることを願う。
 マダムペレは、彼をチアキの所へ行かせる代わりに、もしも、彼女が心変わりをしていたら、自分のもとに戻るよう約束させる。
 彼は喜び勇んで彼女の家に向かうが、彼が崖から転落してから一か月も経っており、その間に、チアキはジェイクと結婚することとなっていた。
 絶望した淳は、マダムペレのもとに戻る。
 そして、彼女のものとなることと引き換えに、復讐のための力を手に入れるのだが…」

 「風と海とモアイ」「炎のマダムペレ」は、若干のほろ苦さが残るラストです。
 個人的に拾い物と思ったのは、「炎のマダムペレ」。
 いい感じに「火の女神様」をしているマダムペレが妙に可愛くて、お気に入りです。

2021年1月31日・2月3日 ページ作成・執筆
2021年3月23日 加筆訂正

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