田中雅子「黒衣の訪問者」(1990年11月15日初版発行)
・「第1話 恐怖の学園祭」
内藤みずほは、演劇部の部員。
と言っても、演劇に興味があるわけではなく、元・サッカー部の瀬川直基がいるためであった。
でも、内気な彼女は彼とうまく関係をつくることができない。
ある日、彼女は、弟と一緒に出掛けたデパートで、蝋人形展に入ってみる。
ここで展示されている蝋人形は、イギリスのフォーク卿が所有するホイットリー城にあるものだという。
そこで、黒いマントをかぶり、剣を構えた青年の蝋人形があり、「黒衣の訪問者」と名付けられていた。
彼女はその人形に直基の面影を見出し、帰宅後、蝋人形展のパンフレットを読む。
「黒衣の訪問者」はイギリスのファミルトンに19世紀ごろから伝わる伝説で、身分違いの男女が仲を裂かれるも、青年は黒衣に身を包み、ひそかに娘と会い続ける。
だが、これを知った、青年の父親に娘を殺され、青年は恋路の邪魔をした者を皆殺しにした後、海へ投身自殺、その後、月のない夜には、恋人を捜す彼の姿があるのだと言う。
みずほがこの話をもとに、シナリオを書くと、これが演劇祭の出し物に選ばれてしまう。
「黒衣の訪問者」役は直基となり、みずほは彼と徐々に接近していく。
しかし、彼女の周囲に「黒衣の訪問者」が出没するようになり…。
・「第2話 引きさかれた友情」
美緒と柯奈子は親友同士で、美術部員。
夏、姉妹校の開星高校と合同合宿をすることとなり、女子部員達は大張り切り。
と言うのも、開星高校美術部には、イケメンかつ才能豊かな一條翔がいるからであった。
美緒も彼に想いを抱いていたが、柯奈子が彼にアタックする気満々なせいで、言い出せないままとなる。
合宿先は、イギリスの古い古城を日本で組み立てたもので、かなり豪勢なものであった。
しかし、皆のウキウキ気分も、開星高校美術部が来た時、吹っ飛んでしまう。
一條翔の周囲には、美人の取り巻きができていたのであった。
柯奈子は落胆し、美緒は結局、一人で行動することとなる。
彼女が湖を散歩していると、翔と偶然に出会う。
彼は、彼女の表情に魅力を感じ、彼女をスケッチしていた。
その場面を、翔の取り巻きの一人が見ており、取り巻きの娘達は、柯奈子を仲間に引き入れ、美緒に嫌がらせをしようと目論む。
そして、大雨の夜、湖畔に美緒を連れ出して、木に縛り付ける。
だが、そこに伝説の「黒衣の訪問者」が現れ…。
・「第3話 怪奇館のろう人形」
西岡満帆は新聞部所属の一年生。
彼女は部長の高瀬友樹に片想いをしていた。
彼女の友人の岩下睦美も彼に恋をしていたが、急に行方不明になり、満帆は心配で仕方がない。
ある日、新聞部の一行はパークランドの怪奇館に取材に行く。
取材には、友樹と最も仲の良い島本という女生徒の友人も三人、同行する。
早速、怪奇館に入ると、入口の人形は岩下睦美にそっくりであった。
先に進むと、道が分かれており、男性同士、女性同士と進む。
その先で、島本と友人達はその本性をあらわにして、満帆に新聞部をやめるよう迫る。
話を聞くうちに、彼女達が岩下睦美に何をしたかが明らかとなる。
その時、彼女達の一人が蝋人形の展示の中で死体で見つかり…。
残酷描写に力を入れていて、好感の持てる単行本です。
まあまあ面白いのですが、「第2話 引きさかれた友情」は説明不足なストーリーで惜しいです。
この中で最も出来のいいのは「怪奇館のろう人形」でしょう。
グロ描写が冴えており、スカッと読める短編です。
2020年11月1日 ページ作成・執筆