芝田英行「闇の密霊師@」(1985年6月20日初版発行)

 鷲羽涼は稲田大学の考古学の助教授(?)。
 彼は迷い苦しむ霊に光への道を教え諭す霊能者でもあった。
 彼の遭遇する様々な事件とは…?

・「獣霊」
「夕方、鷲羽涼が大学でコーヒーを買いに出たところ、電話ボックスで猫の霊に襲われている娘を発見する。
 彼女は史学科の三年、石川裕子。
 彼女の友人の千秋は長らく体調不良やトラブルに悩まされていたが、浅野紫雲という霊能者に除霊してもらう。
 浅野紫雲によると、彼女の家の建て増しした所に猫の墓があり、その猫が祟っていたという。
 しかし、除霊後も、猫の霊は千秋の前に現れ、彼女は授業中に家へ帰ってしまう。
 裕子は千秋を心配して、電話をかけるも、そこにあの猫の霊が現れたのであった。
 涼は彼女から話を聞き、千秋の家に向かう。
 そこには浅野紫雲も駆けつけていたが、彼女の守護霊は何故か現れようとしない。
 涼は獣霊の背後に何かが隠れていると見抜く…」

・「マンドラゴラ」
「エジプト発掘調査団が持ち帰った壺。
 その中にあった土からたった一晩で奇妙な花が咲く。
 裕子の友達の悦子は調査団の一員で、その植物が何か知るために、植物学の専門家を研究室に呼ぶ。
 悦子がお茶を入れに行っている間、奇怪な叫び声が研究室から聞こえ、そこにいた全員は全身がバラバラになって死亡。
 更に、土中から女のマンドラゴラが現われ、悦子の頬に寄生する。
 裕子に呼ばれ、涼はマンドラゴラと対峙するが、マンドラゴラの目的とは…?」

・「人間消滅」
「裕子の友人の宮廻満里子が失踪する。
 涼に霊視を依頼するも、全く手掛かりがない。
 だが、裕子が夜道を歩いていると、満里子が彼女を呼ぶ声が聞こえる。
 涼は「人間消滅」だと考え、満里子が最後に向かった家具屋を訪れる。
 この家具屋の中は家具で迷路のようになっており、今まで何人も行方不明になっていた。
 店内を探索していると、扉の開いたクローゼットがある。
 その中に満里子の姿を見て、裕子が駆け寄ると、彼女も中に引きずり込まれてしまう。
 裕子を救うため、涼もその中にとび込むのだが…」

・「滅びしものの影」
「能登での繊維工場開発予定地。
 ここでは工事の作業員が次々と謎の事故にあい、亡くなっていた。
 そこで、能登建設社員の小林は、大学の知り合いだった涼を工事現場に呼び寄せる。
 涼に霊視してもらったところ、この土地には強力な霊が憑いているらしい。
 しかし、涼は除霊はせず、解決策は社長が唯物論を捨てることだけしかないと言う。
 その後も事故は収まらず、能登建設の社長が工事現場にやって来るのだが…」

・「スプリガン」
「裕子は家庭教師のアルバイトを始め、由加という少女の家を訪れる。
 だが、由加には『スプリガン』という幽霊の友達がおり、裕子に嫌がらせをして追い出そうとする。
 裕子は気丈にもバイトを続けようとするが、『スプリガン』が悪魔だと知る。
 裕子に助けを求められ、涼は由加の家に行くのだが…」

・「アスモデウス」
「悪魔祓いを依頼され、涼はバンコクを訪れる。
 彼の依頼主はハマヌットという霊猿であった。
 二人は郊外の密林を進み、町に災厄をもたらしている悪魔と対決する。
 悪魔の正体とは…?」

・「幽霊屋敷」
「破産した金持の一家が心中した豪邸…ここは幽霊屋敷と噂されていた。
 裕子の先輩の天野は雑誌社に入って一年目の記者で、裕子の制止も聞かず、幽霊屋敷に取材に入る。
 裕子の目には幽霊たちの姿が視えるものの、天野は構わずどんどん奥に入って行く。
 裕子は天野がすでに憑依されていることに気付くのだが、時すでに遅く…。
 顔面の中心に穴の開いた僧侶の霊の正体とは…?」

・「五郎坊の祠」
「栃木県K町。
 ここにある五郎坊の祠は丑の刻参りをすれば、必ず憎い相手を呪殺できる場所として知られていた。
 よくない評判が立つのを恐れ、町会長の村田は涼を呼んで、相談する。
 涼はこの場の凄まじい霊気を感じ取り、一人で祠に向かう。
 寛政年間、五郎丸という行者がここで村人に惨殺されたというのだが…」

 オカルト漫画の隠れた傑作です。
 オカルト漫画は実にピンキリでありますが、この作品は作者の「本気」が違います。
 よく詳しく説明すると、芝田英行先生はこの作品で「『霊の世界』に対する自分の考え」を表現しようと最大限の努力を払っているのです。
 その考えの基本は「人は霊 霊は心」(一巻の前袖より)というスピリチュアリズム的なもので、「全ての霊は救われるべき」と全編にわたって訴えております。(主人公も「除霊」師ではなく「浄霊」師です。)
 そのため、おどろおどろしい内容の割りには温かみがあって、読後感も爽やかです。
 また、内容は幅広いオカルト的知識を駆使しながらも、小難しくなく、エンターテイメントとして成立している点に、作者の力量を感じます。
 処女作ということで、絵はぎこちなさがありますが、決して下手ではなく、非常に丁寧に描かれているもの好印象。(小山田いく先生のファン?)
 こんなに作者の「真心」を感じる漫画ってなかなかありませんよ。

2023年8月3日 ページ作成・執筆

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