芝田英行「闇の密霊師B」(1985年10月20日初版発行)

 鷲羽涼は稲田大学の考古学助教授(?)。
 彼は迷い苦しむ霊に光への道を教え諭す霊能者でもあった。
 彼の遭遇する様々な事件とは…?

・「吸血鬼 PART.1」
「裕子は友人の北村たちと瀬戸内海を旅行する。
 北村の運転するボートで瀬戸内海を遊覧していると、頭の潰れた死体が浮かんでいた。
 その死体は突然、ボートに手をかけ、乗り込もうとする。
 逃げるものの、今度はボートが操縦がきかなくなり、F島に突っ込み、ボートは大破。
 この島は北村の村の共同墓地で、吸血鬼伝承が伝えられていた…」

・「吸血鬼 PART.2」
「F島から逃げ出した吸血鬼、クルト・ゾミエール。
 彼は水商売の女性を奴隷にして、島の仲間の仇を討とうとする。
 大学の学生が次々と毒牙にかかる中、涼は考古学資料室の中で一人待つ。
 裕子は異変を察し、誰かを呼ぼうとするのだが…。
 涼に勝算はあるのだろうか…?」

・「前世」
「石田三郎は先輩の涼を北関東のある山中に連れてくる。
 彼にとってこの風景は既視感があり、妙に惹きつけられて仕方がない。
 涼に霊視してもらったところ、彼は身体にアザがないか尋ねてくる。
 石田のへその左側にアザがあり、見ると、そこから血が流れだしていた。
 彼は操られるように山道を行き、洞窟の中に墓を見つける。
 墓のそばには刀を握った落武者の骸骨があり、彼は刀を持って、洞窟を走り出る。
 涼は追おうとするも、落盤で洞窟に閉じ込められてしまい…。
 石田の前世とは…?」

・「樹霊」
「町中のある家。
 そこの主人は家の建て増しをするため、樹齢何百年もある木を切る。
 以来、奇妙な老人が現われたり、切り株から血が流れ出たりと奇怪なことが連続。
 その夜、主人は庭で三人の老人と会う。
 彼らはこの庭の木々に棲む樹精で、主人を精霊界に引きずり込む。
 主人は精霊界で木に変えられ、更に、二歳の息子のタケシも精霊界に連れてこられ…」

・「ゾウ」
「上野田動物園。
 象舎で三晩続けて、怪事が起こる。
 象が暴れるような物音や象をつなぐ鎖が飼育員を襲ったりするが、原因は全くわからない。
 園長は涼に霊視を依頼するのだが…。
 一方、象の飼育係を60年も続けた老いた飼育員の斉藤には何か心当たりがあるようであった。
 彼は彼にとって恋人同様だったメス象の咲子があの世から迎えに来たと考えていたが…」

・「青木ヶ原」
「涼はある男性から妹の文江を捜すよう頼まれる。
 文江は受験勉強の重圧に加え、愛犬のジロを亡くしたショックから、遺書を残して失踪していた。
 涼は彼女が青木ヶ原の樹海にいることを知り、急いで向かう。
 その頃、文江は睡眠薬自殺を図っていた。
 自殺者の霊たちは文江の幽体を取り囲み、歓迎する。
 その時、彼女のスカートを引っ張るものが…」

・「ペテン師」
「裕子の友人の薫の様子がおかしい。
 彼女は友人達に借金を申し込んでいたが、その額は百万円であった。
 彼女は不幸続きで、恋人に捨てられ、両親の自営業は業績不振、更に、彼女は毎晩、金縛りにあっていた。
 裕子が霊能者を紹介しようと言うと、薫は既に霊能者のもとに通っているという。
 ところが、除霊を受けたはずなのに、彼女はますます憔悴していく。
 不審に思い、裕子は薫の後をつけ、その霊能者の家に行く。
 彼女が家の中を覗くと…」

・「霊能者」
「牙原三狼は大天使ガブリエルの守護を受けている霊能者。
 しかし、悪魔祓いに失敗し、母親と恋人を悪魔に殺される。
 失意の彼が町を歩いていると、亜々留が彼を霊能者と見抜き、励ましてくれる。
 悪魔は亜々留にとり憑き、三狼を罵るが、裕子は鷲羽涼を倒してから、大きな口を叩くようピシャリ。
 三狼、亜々留、裕子の三人は涼のもとを訪れるのだが…」

 「闇の密霊師」シリーズは一応、これで完結です。
 最後の最後の登場する牙原三狼は次の「闇の密霊師外伝 光の霊記」にて重要な役回りです。
 最終話のラスト三ページに作者の考えがつらつらと書き記されておりますが、作者のマジメかつ良識的、そして、思いやり豊かな人柄が伝わってきます。

2023年8月5・6日 ページ作成・執筆

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