杉山祐子「サークルゲーム」(1990年12月20日初版発行)

 収録作品

・「サークルゲーム」(1987年「ミステリーハロウィン」号)
「本橋麻美は小学校の教師になって三年目。
 同じ小学校教師の青山俊一は婚約して幸せの絶頂にいたが、彼女のクラスで自殺者が出る。
 それは長谷川勉という生徒で、朝、校舎の屋上から飛び降りたのであった。
 彼は明るく、クラスのまとめ役で、自殺をするとはとても思えない。
 一応、事故扱いになるものの、マスコミはこの事件を大きく取り上げる。
 更に、翌日の昼、彼女のクラスの小林たかしが体育倉庫で首つり自殺を図る。
 そして、次はクラスの田中マリがプールで溺死体で発見される。
 麻美は追い詰められ、退職願いを提出。
 彼女が学校を去ろうとした時、体育倉庫からクラスの子供たちの声が聞こえてくる。
 そこでは…」

・「シンデレラは眠らない」(1988年「殺人事件(女子高生編)」)
「聖マリア女子学園一年の竹末翠は親友の岬百合子の死に疑問を抱く。
 彼女はビル中の花壇に横たわり、白いドレスで着飾って、薬物で亡くなっていた。
 彼女の死は自殺とされるものの、翠は土曜日の晩に百合子が出かけた「シンデレラ・マジック」というサークルを不審に思う。
 「シンデレラ・マジック」は「MAGIC」というバーで開催されており、有名私立校の生徒たちがウィークデーを中心に集まっていた。
 代表は有吉香織という美しい娘で、彼女が百合子が言っていた「とってもすてきな人」らしい。
 また、将という不愛想な若い店員がいたが、彼は百合子の死について何かを知っている様子であった。
 翠は彼に百合子が何故死んだのか単刀直入に尋ねようとすると、彼から余計なことに首を突っ込まないよう警告される。
 彼によると、あの夜、百合子はシンデレラ・クイーンに選ばれるが、シンデレラ・クイーンは今までに三人亡くなっていた。
 土曜日の夜、彼女に身に何が起こったのであろうか…?」

・「それぞれの殺意」(1988年「殺人事件(女子高生編)」Part2)
「私立名門白蘭女子学園。
 演劇部は文化祭で「眠りの森の美女」を演じる。
 演出・脚本は草薙時子。
 悪い魔女は渡辺梨花。
 照明は白石法子。
 王子は松浦哉子。
 そして、オーロラ姫は美人で優等生の清原杳子であった。
 劇は順調に終わるものの、カーテンコールで清原杳子がこける。
 急いで幕を下ろそうとした時、照明のライトが外れ、杳子の頭を直撃し、彼女は亡くなる。
 杳子の死は事故扱いされたが、哉子は「(永遠に)眠れる森の美女」という脚本の落書きからこれは殺人だと確信する。
 また、劇は哉子のいとこの夏樹がビデオカメラで全て撮影していた。
 哉子は二人の後輩部員を時子に部室に連れて来させ、ビデオテープに杳子を殺した犯人が映っていると話す。
 そして、本当のことを言わなければ、テープを警察に持って行くと脅すのだが…」

・「セピアの追憶」(1989年「純愛ミステリー」)
「栗尾翼に突然届いた茶色の封筒。
 差出人は昔、隣に住んでいた総一からであった。
 総一は翼の四歳年上で、彼女の初恋の相手であったが、六年前、家庭の事情で北海道に引っ越してしまう。
 その際、彼は彼女に彼女の16歳の誕生に会いに来ると約束していた。
 彼女の誕生日、待ち合わせ場所に総一が現れる。
 彼はバイクに乗り、煙草を吸い、とても大人びていた。
 総一の面影は残っているものの、彼に対する違和感が次第に募っていく。
 それでも、翼は彼と一緒に思い出のある灯台へ向かうのだが…」

・「今夜は眠れない」(1987年「LaLaDX」)
「星月女子高校の上邑葉月はグラフィックデザイナー志望の少女。
 同時に彼女は「SHA-KA」というバンドのボーカルをやっていて、どちらの道を選ぶか悩んでいた。
 ある日、広告大賞の予選通過名簿に桐生基(きりゅう・もとい)という名前を発見する。
 桐生基はG大一年生で、「エッフェル」というバンドのリーダーであった。
 実は彼は葉月の憧れで、大学に彼の様子を見に行くが、彼が課題のパネルを手抜きしているのを見て、失望する。
 だが、彼女に非難されたことで基に心境の変化が…」

・「Parallax-Vie」(1988年「Cindy」春の号)
「火浦杜夫と佐々木星郎は美大の立体映像科の学生。
 この世界では立体映像専用コンピューター「ヴィジュア」により「立体映像」という新しい分野が確立されていた。
 中でも「Vie」という謎のアーティストはその分野の最先端を行くヴィジュア操者で、杜夫と星郎の憧れであった。
 ある日、杜夫と星郎が看板描きのバイトから帰ろうとすると、ビルの上階の窓から少女が跳び下りてくる。
 杜夫は彼女をキャッチし、彼女が追われている様子なので、自分たちのアパートに連れ帰る。
 少女の名は彩川遊(13歳)で、わけあって家出中だという。
 杜夫たちは彼女と一緒に暮らすことになるのだが…」

・「特別版・遊TOPIA通信A」(描きおろし)
 杉山祐子先生が漫画家になったきっかけを描いたエッセイ漫画。

 サスペンス・ミステリーが三編、ノスタルジックな再会ドラマが一編、芸術をテーマにした作品が二編、収録されております。
 個人的にはサスペンス・ミステリーものがやっぱり面白く、三編の中では「それぞれの殺意」が最も出来が良いと思います。
 杉山先生は美大に行き、劇団にも所属していたことがあるので、それらの経験が作品にダイレクトに反映しているのが非常に興味深かったです。

2024年5月15日 ページ作成・執筆

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