伊藤潤二「墓標の町」(1994年11月20日第一刷発行)
収録作品
・「肉色の怪」(「月刊ハロウィン」1994年5月号掲載)
「ある幼稚園。
滝川百子の担当するクラスには、一人、川辺チカラという問題児がいた。
カサカサに乾燥した皮膚に体毛というものがないという異様な風貌に加え、性質は極めて粗暴。他の園児達は皆、怯える。
他の園児への暴力が問題となり、出迎えの女性に家庭訪問をしたい旨を述べると、その女性は母親の妹であった。
母親の妹に案内されて、家を訪ねるものの、家の壁紙は至る所が剥げ、母親にはどこか異様な雰囲気があり、百子は圧倒される。
その数日後、川辺チカラは他の園児の顔の皮を剥ごうとして、遂に退園処分。
しかし、幼稚園の周囲をうろつき、滝川百子は家につれて帰ろうとするが、頑なに嫌がる。
アパートにまで付いて来たチカラを、偶然居合わせた百子の父が診ると、全身の皮膚が薄くなっているらしい。
何故なのだろうか? そして、あの姉妹の秘密とは?」
このマンガが与えた影響はかなり大きかったのではないでしょうか?
皆が心の底に抱いている理科室の隅にある、人体標本の気味悪さを、斯様な素晴らしいマンガに昇華させた才能と手腕には頭が下がります。
・「墓標の町」(「月刊ハロウィン」1994年7月号掲載)
「手紙によると、親友の泉が引っ越した町は不思議な町だという。
剛とかおるの兄妹は、その町を訪ねるために、車で出かける。
が、町に入ったあたりで、前方不注意により、少女を轢いてしまう。病院まで運ぶ途中で、少女は死亡。
剛は死体をトランクに詰め、どこかに捨てようとするが、道路の真ん中に立っている石柱に車をぶつけ、乗り上げてしまう。
町の人達が集まってくるが、その石柱は墓だと言う。
この町では、死人は息を引き取ったその場所に安置し、時間が経つと、墓標へと変化していくのだった。
しかし、墓標になり損ねると…」
・「許し」(「月刊ハロウィン」1993年4月号掲載)
「早尾恭介は、深津美鈴は愛し合っていたが、美鈴の父も兄も決して結婚を認めようとしなかった。
散々屈辱に耐えた後、恭介は美鈴と別れることを決意する。
恭介の心の傷は深かったが、職場の同僚であった谷口祐子のお陰で立ち直る。
生活が落ち着きを取り戻しかけた時、美鈴の兄が彼を訪ねてきて、掌を返したように、美鈴との結婚を応援すると言う。
美鈴の父を説得するように言われるものの、恭介の心は揺れる。
その夜、恭介のアパートを美鈴が訪れ、恭介は父にまた結婚の許しを請うが、父親の態度は変わらない。
恭介は、美鈴と、現在付き合っている谷口祐子の板挟みになるが、彼は谷口祐子を選ぶ。
しかし、祐子が美鈴と会った翌日…」
・「アイスクリームバス」(「眠れぬ夜の奇妙な話」1993年Vol.13掲載)
「土曜日の夕方にやって来るアイスクリームバス。
このバスに乗ると、町を一周している間に、アイスクリームを食べ放題だと言う。
子供達は皆、アイスクリームバスに夢中だが、徐々に子供達に異変が起こる…」
怪奇マンガ史上に残る、バッド・テイスト炸裂の最凶作品の一つ。読むだけで腹を壊しそうな素敵なマンガです。御用心のほどを…。
「首吊り気球」と並ぶ、傑作単行本。
ただし、前作よりもグロ描写がきついので、怪奇マンガを嫌う方々には向かないかもしれません。こんなに面白いのに、勿体ないなあ〜。
平成27年2月7日 ページ作成・執筆