まつざきあけみ「踊る死仮面」(1993年1月20日初版発行)
収録作品
・「ナイト・チャイルド」(「月刊ハロウィン」1992年5月号)
「エリートを目指し、進学校に通う子供たち。
真紀の弟の友洋も彼らと同じ塾に通っていたが、子供たちの殺伐とした心が気になって仕方がない。
ある日、彼女は一人の老人を近所の犬丸公園へと案内する。
この公園は昔からあるが、今の子供たちは塾に忙しく、無人であった。
老人は過去に旅一座の芸人をしており、タイミングさえつかめば、子供たちは遊ぶ方法を思い出し、公園に戻ってくると話す。
その夜、外から子供の笑い声を聞こえ、真紀が窓を覗くと、「正ちゃん」と名乗る少年が姿を見せる。
以来、友洋は急速に勉強に熱心でなくなり、遊びに興味を持ち始める。
それは他の子供たちも同様で、夜中、子供たちは公園で遊んでいるところを警察に補導される。
「正ちゃん」という少年が彼らを遊びに誘っているというのだが…」
・「他人の空似」(「月刊ハロウィン」1992年6月号)
「ある中学校のC組に北見真理子という少女が転入してくる。
クラスメートたちは彼女の名前を聞き、沢田まり子という少女を連想する。
沢田まり子は半年前、川に流され行方不明になっていたが、北見真理子と違い、器量よしではなかった。
だが、北見真理子の好みや考え方は何から何まで沢田まり子と同じで、しかも、クラスメートの好みさえも知っている。
クラスメートたちは北見真理子に、皆から好かれていた沢田まり子の面影を重ね合わせるが、森田典夫は徐々にそれに疑問を抱き始め…」
・「掌の夢」(「月刊ハロウィン」1992年7月号)
「千春は学校の「環境保護クラブ」のメンバー。
彼女は環境破壊を憎み、また、父親が交通事故で亡くなっているため、自動車に敵意を抱いていた。
ある日、彼女白神山が宅地造成されることを知る。
白神山は町に唯一残された自然であった。
環境保護クラブのメンバーたちは白神山の保護に向けて署名運動を始めるが、この計画は市議会で決定されたことで簡単には覆らない。
それでも、千春たちは地道に署名活動を続ける。
ある日、白神山で彼女が環境汚染のない時代に思いを馳せていると、いつの間にか自然に溢れた土地にいた。
そこは明治時代の頃の町で、空気はおいしく、山には動物がいっぱい住んでいる。
これを境に、彼女の署名活動は実を結び始め、彼女は身も心も明治時代にいるようになるのだが…」
・「思惑」(「月刊ハロウィン」1992年8月号)
「黒川財閥の姉妹。
姉の信江は先代が女中に生ませた子で、財閥の実権は全て妹の綾子が握っていた。
綾子は身体が弱く、信江は彼女に甲斐甲斐しく尽くすも、返ってくるのは侮蔑の言葉のみ。
それでも、信江は絶え、いつか自分が建てる孤児院を夢見る。
また、彼女は姉の恋人の保彦に片想いをしていた。
彼は綾子からの援助を断り、苦学していたため、信江は彼のため、高価な医学書を安い値段で譲る。
そして、信江の思いが綾子に通じる時が来るのだが…」
・「呪い仮面」(「月刊ハロウィン」1992年9月号)
「中学二年の夏休み。
原田たちの班は、自由研究のテーマが仮面だったので、仮面研究家の滝川秀平の家を訪れる。
彼から仮面についての話を聞くが、原田はつい魔がさして、仮面を一つ家に持ち帰ってしまう。
それでも、自分が変わるなら、と考え、彼女はその仮面を付けて、憧れの榊原に電話をかけ、デートの申し込みをする。
彼は承諾し、当日、デートの待ち合わせ場所に行くが、そこには榊原と一緒に同じクラスの富岡もいて、彼女に彼をあっさり奪われてしまう。
二人が立ち去った後、原田に友人の嶋野が声をかけてくる。
嶋野は元・登校拒否児で、シンナーをやったり荒れていたが、原田だけは彼女に優しくしてくれた。
嶋野はいいものがあると言うが、それは滝沢の家にあった「呪いの仮面」であった。
この仮面は人の顔の皮で作られており、この仮面で呪いをかければ、それが成就する代わりに、呪った本人にも返ってくると言われる。
原田は嶋野から仮面をとり上げ、滝沢の家に帰しに行く。
ところが、この呪いの仮面をつけた何者かが次々と事件を起こしていく。
被害者は皆、原田にひどいことをした人物で、嶋野が疑われるが…」
・「蛙のお姫さま」(「月刊ハロウィン」1992年10月号)
「北上康一は銀行に入社して二年目、美砂子と出会い、大恋愛の末、結婚する。
そして、二人の間に娘が生まれるが、彼は赤ん坊の顔を見て、北上摩弥とそっくりなことにショックを受ける。
北上摩弥は彼が学生の頃、あるきっかけで知り合った女性であった。
彼女はひどいブスであったが、非常に料理が上手く、彼は「こんなおいしい料理を毎日食べたらどんなに幸せか」とお世辞を言う。
それを真に受けて、彼女は彼のアパートに毎日料理を持ってくるだけでなく、彼の留守宅に上がり込んで料理をするようになる。
彼がどう言っても、彼女は彼と結婚する気満々で、死んでも離れる気はない。
だが、彼女は川に落ちて行方不明になり、これで彼女から解放されたかに思えたが…」
個人的な好みを言うと、「掌の夢」と「呪い仮面」がベストです。
「掌の夢」はあまりにも皮肉なラストで、環境保護活動家の連中に是非とも読んでほしいものです。
「呪い仮面」はよくある話ではありますが、仮面をつけた怪人物の描写はかなりのインパクトで、その凶行がなかなかに愉快です。
にしても、「思惑」は救いのない話だなあ…。
2024年2月26・28日 ページ作成・執筆