伊藤潤二「脱走兵のいる家」
(1991年3月20日第一刷・1995年11月10日第六刷発行)
収録作品
・「いじめっ娘」(「月刊ハロウィン」1990年8月号)
「好きな男の子を見るために、毎日公園に通う栗子。
彼女は、最近、このあたりに引っ越してきた女性から、年下の男の子、直哉と遊んでくれるよう頼まれる。
お菓子をもらった手前、直哉の相手をするが、直哉は栗子にべったり懐いてしまう。
栗子はそんな直哉に苛苛するようになり、次第にいじめ始める。
最後には大怪我をさせてしまい、その後、家族は引っ越したらしい。
そして、十数年後…」
ラストを見るたびに、元・モダン・チョキチョキズの○○○○さんを思い出してしまい、困ってしまいます。
・「脱走兵のいる家」(「月刊ハロウィン」1990年9月号)
「ある農村、兄と姉妹の三人家族。
彼らの住む家の隣の土蔵の二階には、脱走兵がかくまわれていた。
彼は、夕方に食事をとる為に出てくる以外は、ずっと土蔵に閉じこもったきり。
しかし、実はもう戦争は終わって、五年も経っていたのだった…」
・「生霊の沼」(「月刊ハロウィン」1990年10月号)
「美化委員達による、学校裏の沼の清掃。
その沼は幽霊が出ると噂の沼だった。男に捨てられて自殺した霊が、男を引きずり込むのだと言う。
アイドル的人気のある小島も清掃に加わるが、彼は沼の上の崖から足を滑らせ、沼に転落、その死体が上がることはなかった。
しかし、後日、その沼で美化委員長と副委員長の溺死体が浮かんでいた…」
・「赤い糸」(「月刊ハロウィン」1990年11月号)
「運命の人と信じていた女生徒に振られた、男子生徒の石井。
傷心の彼は、三日家に引きこもって、心の傷を癒し、登校する。
が、彼の手首には、赤い糸が縫い付けてあった。
その縫い付けは身体にどんどん広がっていく…」
こういう突拍子もない話が大好きです。怪現象に振り回される主人公や家族、友人達の描写等に、ブラック・ユーモアな味付けが冴えてます。
・「中古レコード」(「月刊ハロウィン」1990年12月号)
「クラスメートのアパートに、ひたすらレコードを聴くためだけに訪れる少女。レコードには、スキャットだけの歌が収録されていた。
彼女は、そのレコードの音楽に魅惑されるが、クラスメートはレコードを貸すのはおろか、カセットへの録音もさせてくれない。
遂に口論となり、クラスメートは邪険に少女をアパートから追い出すが、少女はレコードを盗み出していた。
気付いたクラスメートは少女を追い詰めるが、少女によって石で殴られ、死んだようになる。
少女はクラスメートに手近にあった布をかぶせ、レコードを聴くために、レコードプレイヤーのある場所を探し求める…」
・「贈る人」(「月刊ハロウィン」1991年1月号)
「徹底した利己主義で冷血な男を、社長の座から降ろすために、雇われた催眠術師。
彼はその男に、以後は、「他人のために自らの身をもって他人に奉仕したくなる」ように催眠をかける。
数年後、催眠術師は、人々に木彫りの人形を配って歩く青年を公園で見かける。
青年にもらった人形は、彼が催眠術をかけた男性にそっくりだった。
そして、その人形を配っているのは、その男の息子であった…」
平成27年2月5日 ページ作成・執筆