諸星大二郎「夢みる機械」(1978年6月30日初版・1983年3月28日9版発行)
収録作品
・「夢みる機械」(「週刊少年ジャンプ」1974年11月号)
「健二は平凡な中学生。
彼は毎日がひどく単調で味気ないと感じていた。
ある日、彼は意外な事実を目の当たりにする。
彼の母親はロボットだったのであった。
母親だけでなく、学校の教師も隣人もロボットに入れ替わっており、彼は誰が人間でロボットなのか疑心暗鬼に襲われる。
これにはどうやら「世界財団 ユートピア配給会社」が絡んでいるらしい。
健二は「新宿の目」の奥にある新宿地下街営業所に行くのだが…。
この会社の目的とは…?」
・「浸蝕惑星」(「週刊少年ジャンプ」1974年9月号)
「西暦2085年。
地球は莫大な人口を抱えて、どこもかしこも人であふれていた。
人々は地下に暮らし、家族ごとにあてがわれた部屋が「家」となる。
外出する日も決められていたが、小学生の原田守・ケン・サチコには秘密の場所があった。
それは通風管を抜けた所にある空調整備室か何かで、ここで三人は誰にも邪魔されず遊ぶことができる。
ある日、ケンはこの場所で機械を操作すると、扉が開くことを発見する。
彼らが入った場所はエレベーターで、彼らを乗せて、延々と降下していく。
最下点まで着くと、そこは機械だらけの広々とした空間であった。
ケンは恐れをなして帰るが、守とサチコは新しい冒険に夢中になる。
だが、守はまだここより地下があることを知り、以前、ケンが話していたことを思い出す。
食糧庁ではあらゆるものを原子に戻し、それをもとに合成食糧を作っているというのだが…」
・「奇妙なレストラン」
「繁盛しているレストラン。
ただ、客は入っても、出ていく客がいない。
一人の男が不審に思い、ある夕方、レストランに入ってみる。
中には何だかうまそうに食べている客が一人いて…」
・「ティラノサウルス号の生還」
「2052年。
外宇宙からの恒星間宇宙船が発見される。
この宇宙船は地球を目指しており、あらゆる周波数で呼びかけるも応答がない。
また、そのような宇宙船は存在しないはずで、唯一、考えられるのは「ティラノサウルス号」という2002年に記録にある宇宙船であった。
ところが、ティラノサウルス号は名前だけしか記憶に残っておらず、性能、目的、目的地…何もわからない。
国際宇宙統制機構本部のカワノは国際資料センターで手掛かりを求める。
ティラノサウルス号が発進したのは1995年〜2015年の間、混乱期であった。
この混乱期には地球上で子供が生まれず、人類は滅亡すると考えられていた。
そこで、人類最後の希望、『黄金時代』計画が立てられ、これにティラノサウルス号は関わっているようなのだが…。
ティラノサウルス号に乗っているのは…?」
・「コッシー譚」
「ある喫茶店のコーヒーの中から突如、恐竜が現れるようになる。
この恐竜はあちらのカップ、こちらのカップと出没し、店内は大騒ぎ。
更に、この『コッシー』調査のために、調査隊、学術探検隊、報道記者が喫茶店に押し寄せ…」
・「ど次元世界物語」
「林元太はど立第三元中学校一年リーチ組の生徒。
彼は優れた(?)「どじ相」の持ち主で、いつものように廊下に立たされていると、努々山博士という奇怪な科学者が現れる。
努々山博士は「ど次元」の研究者で、林元太のドジを利用して「ど次元」に行くことが目的であった。
「ど次元」は博士曰く、「なにげなくふと存在する世界」とのことだが、彼らが「ど次元」で目にするものとは…?」
・「地下鉄を降りて…」
「ある中年のサラリーマン。
彼の帰宅の際のルーティーンは決まっていたが、ある日、名店街の賑やかさに惹かれ、八重洲地下街を訪れてみる。
地下街を一通りぶらついてから、東京駅に戻ろうとするも、地下街は入り組み、案内板も役にたたず、人に尋ねても曖昧な答えしか返って来ない。
とりあえず、銀座を目指すが、方向感覚は完全に狂っていて、迷子になってしまう。
地下街を数時間彷徨った後、彼は地上を目指すのだが…」
・「ぼくの日記帳」
「〇月×日 東京駅前にて〜ある青年が東京駅前でエル・グレコの聖母、キリコの絵、ベネチアのゴンドラ、パイプをくわえモーニング服を着た蟻といったものを空想する。彼は立ち去る際に空想をそこに置き忘れてしまい…。
〇月31日 アパートにて〜夜中の一時、青年はカレンダーを換えようとしたことをきっかけに、部屋中が大混乱に陥る。あまりの騒ぎにアパートの住人がとんで来て、彼は強盗に入られたと嘘をつくが…。
×月△日 お茶の水の喫茶店にて…〜喫茶店「プティ・ヤック(「小さなヨット」の意味)」は映画館とバーの間にあった。マスターはヨット・マニアらしく、内装はヨットを模していて、ヨットにまつわる品々が飾られていた。青年が本(「エクソシスト」)を読んでいると、店内が揺れ出し…。
・「猫パニック」
「1975年、夏の蒸し暑いある日。
小学校四年生の木村憲一郎は登校途中、いつも見る公園の猫があくびをした後、三回顔をふくところを二回しかしなかったので訝しく思う。
ちょうど公園にいた大学生の渋川立彦(もしかして澁澤龍彦がモデル?)はその話を聞き、「動物がきゅうに習慣をかえるのは異常のきざし」と言って、憲一郎と共に猫を観察しに行く。
二人は猫を追うが、猫は行く先々で交通事故、電車の脱線事故、暴動、アナーキストの蜂起を起こし、東京は大混乱に…」
SF、ホラー、ファンタジー、社会風刺、ナンセンス、不条理ギャグ、ブラック・ユーモア…と幅広い作品を収録した、諸星大二郎先生の初期作品集です。
諸星大二郎先生に関しましては、あまりに巨大で私ごときが口をさしはさむ余地は全くなく、薄っぺらな感想を述べることしかできないのですが、とりあえず、「猫パニック」は大々々傑作です!!
「パニックもの」というジャンルがもしもあれば、トップクラスに位置する名作だと思います。(黒田みのる「大地震」に匹敵するテンションの高さです。(個人の感想です))
2025年1月2日・6月11日 ページ作成・執筆