浅野まいこ「邪霊界」(1992年3月20日初版発行)

 収録作品

・「邪霊界」(1990年「サスペンス&ホラー特集号」掲載)
「若者達が墓場で肝試しをする。
 賢司と優子の組が出発するが、賢司は好奇心からある迷信を試してみる。
 その迷信とは墓場でお経を読んではいけないというものであった。
 友人が拾った、般若心経の本を墓場の真ん中で読むと、墓場の奥から、坊主の霊が現れ、賢司は憑依される。
 その際に、墓石が倒れ、彼は右足に怪我をする。
 更に、その夜の丑三つ時、坊主の霊が彼のベッドに現れ、足のケガに手を突っ込んで抉り、彼は病院に運ばれる。
 翌日、彼は病院を抜け出し、墓場で般若心経の本を見つけ、電話で優子に助けを求める。
 だが、経本は坊主の霊に燃やされてしまう。
 彼は優子に霊能者を紹介され、坊主の霊と戦うこととなるのだが…」

・「追われる」(1989年「サスペンス&ホラー特集号」掲載)
「鷹岬高校二年の美樹はストーカーに悩まされていた。
 一か月もの間、脅迫めいたラブレターに隠し撮り写真が送られ、また、しばしば何者かにつけられる。
 ただし、写真は中学三年生の時から高校一年の時までで、今年のものはない。
 友人達と相談した結果、ストーカー相手は、美樹に中学三年の時にラブレターを渡した高久卓巳らしいことがわかる。
 高久卓巳は頭はいいが、性格が暗く、中学浪人をして、今は植物人間であって病院で寝たきりであった。
 しかし、美樹は襲われた際、ストーカーが高久卓巳だとはっきりと知る。
 また、彼女のボーイフレンドが轢死した時も、高久卓巳が彼の足を掴んでいるのを美樹は目撃する。
 あの高久卓巳は生霊なのであろうか…?」

・「呪いの薔薇」(1989年「サスペンス&ホラー特集号」掲載)
「夏休みの間、美香の家に従兄の卓志が、東京の夏期講習に参加するため、滞在することとなる。
 彼は最近、両親を事故で亡くしたばかりであった。
 ある日の本屋からの帰り、理香の帽子が風に飛ばされ、バラの庭に入ってしまう。
 ここは女優の榊麗子の屋敷の庭であったが、彼女は屋敷の火事で焼死し、バラの庭だけが残ったのであった。
 卓志はバラの庭に帽子を取りに行くが、以来、彼はどこか人が変わってしまう。
 彼はしばしば一人で外出するようになり、様々な女性と付き合い始める。
 しかも、その女性達は皆、行方不明となる。
 美香は彼の様子を探るのだが…」

・「夢少女」(1988年「サスペンス&ホラー特集号」掲載)
「高校生の藤木有(たもつ)と大学生の兄は、海外に出かけたおじの邸を住み込みで管理することとなる。
 二人が地下室に降りると、有はビー玉を見つける。
 その夜、彼は、木下早苗という少女の夢を見る。
 彼女は、母親からもらったビー玉を探していて、彼がビー玉を渡すと、自分のことを話し始める。
 彼女は三年間、おばのもとで母親を待ち続け、遂に家出をしたのであった。
 彼女は彼のことを貢と呼び、人が来たと姿を消した直後、有は奇怪な容貌の外人に背後から肩を掴まれる。
 次の日の夜、彼はまた彼女の夢を見る。
 家出人の彼女を彼は地下室の一室に匿うも、再びあの外人が現れ、外人に首の骨を折られたところで目が覚める。
 実際、おじの前の住人はアメリカ人で、地下室で何らかの解剖実験をしていたらしい。
 また、貢というのは、ここの使用人の息子で、窓から落ちて、首の骨を折って亡くなっていた。
 彼は夢と現実の境目がわからなくなりそうで、早苗のことは夢だと考えようとするのだが…」

・「霊界からの訃音」(1990年「サスペンス&ホラー特集号」掲載)
「洋子・咲子、京子は仲良し三人組。
 高校の卒業記念に三人はスキーに出かけるが、バスが転落事故を起こし、洋子のみが助かる。
 病院にいた彼女は二人の葬式に行こうとするが、彼女の前に、咲子や京子の幽霊が現れ、洋子は災難にあう幻覚に襲われる。
 それはどうやら警告らしく、洋子が行動を変えると、災難から逃れることができた。
 洋子は二人が彼女を守ってくれると考えるのだが…。
 そして、彼女のうなじを舐めるものの正体とは…?」

・「ほんとうにあった(ぜんぜん)怖(くな)い話」(描き下ろし)
 霊感ゼロの浅野まいこ先生の霊体験を描いたエッセイ漫画。

 浅野まいこ先生(主にハーレクインで活躍?)の「初作品集」です。
 「別冊少女フレンド サスペンス&ホラー特集号」に掲載された作品が何故か、朝日ソノラマの「ハロウィン少女コミック館」にて単行本化されました。
 イケメンの表紙で、期待する人は少なそうですが、これは拾い物です!!
 恐らくは、新人だった浅野先生は怪奇マンガに対する興味はなかったのでしょうが、手抜きなどは一切せず、全力投球しております。
 その結果、凄惨なグロ描写と強烈なバッド・エンドが映えるトラウマ作品ばかりになってしまいました。
 どれも素晴らしいですが、個人的には、「夢少女」が一押し。
 清々しいまでのバッド・エンドには頭を抱えます…。
 「霊界からの訃音」も面白いのですが、うなじを舐める理由が不明で、非常に残念…。

2022年7月1〜3日 ページ作成・執筆

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