志水アキ「雛接村」(2019年3月30日第1刷発行)

・「第1話」
「美川大学廃墟部の四人の学生(湊、タカシ、日葵、怜奈の男女二人ずつ)。
 彼らは、戦前の失われた村落を求め、G県の雛接山(ひなつぎやま)に登る。
 しかし、廃墟は見つからず、雨に降られて立ち往生する。
 更に、地滑りに巻き込まれ、怜奈が負傷。
 そこに、ビッコをひいた少女が現れ、彼らを村のお屋敷へ案内する。
 その屋敷は、女主人の神屋藤子とその娘、女中のスエ(ビッコの少女)の三人暮らしであった。
 怜奈は、女中のスエが「処理」するために、別の部屋に連れて行く。
 残された三人はスマホで連絡を取ろうとするが、全くつながらない。
 タカシが隣の部屋を覗くと、そこには雛人形が飾られていた。
 しかも、雛人形はツギハギだらけで…」

・「第2話」
「オカルト誌(「NUU」)のライター、見野新次郎と拓海は雛接山を取材で訪れる。
 雛接山は、麓の住人には「神隠しの山」として恐れられていた。
 結局、何の収穫もなく、山を下りようとした時、二人の前に、人間と犬がごっちゃになった動物が現れる。
 その動物を追うと、二人は古びた村に着くのだが…」

・「第3話」
「高木咲夜(さや)は民俗学を研究している学生。
 彼女は、大学の卒論のために、雛接山について調べていた。
 麓の村人によると、この山には「恐ろしい女の鬼」がいると伝えられていた。
 山頂に古い村があったと聞き、咲夜は山に登るが、崖から滑落。
 気が付くと、彼女は見知らぬ屋敷に寝かされていた。
 そこに、霧子という、白髪に白い肌の美しい娘が現れ、ここは雛接村と教える。
 霧子の母の勧めにより、咲夜はその屋敷に一泊することとなる。
 咲夜が露天風呂に行くと、先に霧子が入浴していた。
 その身体はあちこち縫合の痕だらけで…」

・「第4話」(第1話の続き)
「湊が目を覚ますと、そこは岩窟の牢屋の中であった。
 戸惑う彼に、壁に張り付いた人の顔の皮が話しかけてくる。
 彼によると、湊は、霧子の次の婿候補に選ばれたという。
 霧子は雛接村を治める神屋家の娘であるが、彼は彼女を人間ではなく、悪魔か鬼と呼ぶ。
 彼自身も婿候補に選ばれたのだったが、用済みになった後は、こんな姿にされてしまったのであった。
 そこに、若い娘の首をした猫が、鍵をくわえて、現れる。
 その鍵で牢を脱出し、猫の後をついていくと、神屋の屋敷で霧子と出会う。
 彼女に隠れるよう言われ、身を潜めていると、霧子の部屋に母親の藤子が大変な剣幕で入ってきて…」

・「第5話」
「渚は拘束され、十六歳になった霧子と「雛祭りの儀式」を行うこととなる。
 ここで彼は霧子の婿に相応しいかどうか試されるらしい。
 神社の鳥居を一人でくぐり、先に進むと、祠の前に着物姿の霧子が待っていた。
 霧子は彼に「ふたりの子供をつくりましょう」と言う。
 どうやら、彼女が子を持つことができれば、彼女の呪いが解けるらしいのだが…」

・「第6話」
「昔々、ふじという女性と武吉という武士が道ならぬ恋に落ちた。
 二人は、人の目を避けるため、禁忌の土地で逢引をする。
 だが、彼女にできた赤ん坊は、とても人間とは思えないような姿であった。
 赤ん坊が原因で武吉の心は彼女から離れ、切羽詰まった彼女は、さらってきた赤ん坊の手足を切断し、自分の子供に縫い付ける。
 化け物として追われる身となった彼女は、ひどい傷を負いながらも、禁忌の土地に逃げ込む。
 洞窟の中の奇妙な箱の前で、赤ん坊とふじが死にかけていると…」

・「第7話」
「祠の中で、湊が見たものとは…?
 彼は霧子達の「過去を断ち切」り、解放させることができるのであろうか…?」

 おったまげました。
 「伝奇ホラー」の傑作です!!
 もしかしたら、木々津克久先生の傑作「フランケンふらん」の影響があるかもしれませんが、些細なことです。
 民俗学の知識を散りばめた、奇想に満ちたストーリーを、美麗とグロの狭間を行く仄暗い絵柄で、巧みにまとめ上げた腕前、唸らされます。
 ホラー好きなら、読んで損は絶対にしません!!
 もしも、この文章をきっかけに多少なりとも注目が集まるようなことがありましたら、内容をもっと補足する番外編が描かれることを祈っております。

2021年9月21日 ページ作成・執筆

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