阿部ゆたか「放課後のラビリンス」(1989年6月20日初版発行)
収録作品
・「空の青 薔薇の赤」(1987年「ホラーハウス」8月号)
「道淵牧子は、転入早々、木の枝に引っかかった猫の死骸が落ちて来るというトラブルに見舞われる。
そんな彼女に、美術顧問の福本は優しく接し、今度、絵のモデルになってくれるよう頼む。
牧子は離婚した母親に引き取られていて、画家の父親と福本先生を重ね合わせる。
だが、大原という女子生徒は牧子に絡み、意地悪をする。
彼女の姉は福本と教師・生徒の恋愛をして、結婚の予定まであったが、一年前、姉は交通事故死してしまう。
以来、姉の肖像画は描きかけのままであった。
福本は、絵を完成させるためには「薔薇の赤」が必要だと言うのだが、その色とは…?」
・「校舎は燃えている」(1988年「殺人事件」)
「放課後、久美子とめぐみは、校舎の玄関で、真喜子が来るのを待つ。
真喜子は園芸部を辞める旨、話に行っていた。
様子を見るため、久美子は、園芸部のミーティングをしている第一視聴覚室へ向かう。
途中、煙草を持った男子生徒とぶつかるが、彼の胸のシャツには赤い液体が付いていた。
第一視聴覚室に入ると、血まみれの真喜子があった。
背後から殴られ、気を失った彼女は、生徒会長の兄に起こされる。
しかし、そこにあったはずの死体がない。
兄によると、悲鳴を聞いて、すぐにかけつけたが、彼女しかいなかったという。
それでも、久美子は、真喜子が殺されたと確信し、独自に調査を開始する。
特に怪しいのは、煙草を持った男子生徒、三年の辻出で、彼は真喜子の中学の先輩で、過去、園芸部にいたこともあったらしい。
久美子は、めぐみや兄が止めるのも聞かず、殺人の証拠を集めようとする。
そして、次なる死人が…。
真喜子は何故、殺されたのか…?
そして、死体消失のトリックは…?」
・「スターダスト・めもりい」(1988年「ホラーパーティ」Vol.2)
「大石泰子と林田裕子は、日も暮れた学校に、ノートを取りに行く。
そこで、天文学部の藤臣柊一という青年と出会う。
校舎の屋上で、彼は二人に星座について教える。
そして、彼が小さい頃、星になった両親のように、彼もまた夜空の星になりたいと話す。
翌晩、二人は校舎の屋上に出かけ、彼から星のレクチャーを受ける。
次の日、泰子は、彼に「こわいもの」を感じ、男友達の木内と一緒に帰るのだが…」
・「放課後のラビリンス」(1988年「殺人事件 PART2」)
「日野良子、マリ、聖音は中学からの仲良し三人組。
日野良子は、帰宅部のとりえのない女子高生。
マリは、三人のリーダー格で、陸上部のホープ。
聖音は、性格も顔も可愛い、男子生徒の人気者。
ある日、良子は、聖音に、学校裏の雑木林に落とした学生証を捜すよう頼まれる。
いくら探しても見つからず、あきらめて立ち去るが、後で、体育用具置き場からマリの死体が発見される。
死体には、良子のなくしたはずのスカーフが巻き付けられていた。
彼女はアリバイを尋ねられるが、聖音から秘密にするよう懇願されていたため、雑木林にいたことを言い出せない。
その時、吉久知延(よしひさ・とものぶ)という生徒が現れ、彼女と一緒に雑木林にいたと言って、彼女にキスする。
こうして、疑いは晴れた良子は、聖音、良子に想いを寄せる西川、吉久知延と共に、マリを殺した犯人を突き止めようとする。
まず、怪しいのは、体育用具置き場から歩いてきた不良の市川真弓。
しかも、市川真弓は、吉久知延に話があると彼を呼び出す。
更に、吉久知延は生前のマリに何度もあっていたらしい。
吉久が犯人なのか…?
なら、どうして良子をかばうのか…?
謎は深まるばかりで…」
阿部ゆたか先生は怪奇マンガをかなり描いておられます。
ベテランらしく内容はそつがないのですが、恐怖描写があっさりしていて、個人的には物足りません。(それでちょうどいいという方もおられるとは思います。)
「空の青 薔薇の赤」では力の入った残酷描写(女子生徒が首を切られるシーン)があるものの、たったの2ページだけ…。(描いたのはアシスタントさん?)
作者としては、残酷描写よりも、ストーリーに重点を置いていたのかもしれません。
1988年7月で、阿部ゆたか先生はプロになって十周年ということで、牧村久美先生、野口弓子先生、杏崎もりか先生から1ページずつ、お祝いのページをいただいております。
詳しいことはわかりませんが、かなり顔の広い方なのではないでしょうか?(青山剛昌先生とのつながりもあります。)
2021年6月29日 ページ作成・執筆