伊藤潤二「ミミの怪談 完全版」(木原浩勝・中山市朗:原作/2022年1月30日第1刷発行)
・「電柱の上にいるもの」
「雨模様の日。
ミミは直人の運転する車に乗っていた。
曲がり角を曲がったところで、彼女は奇妙なものに気付く。
老婆が電柱のてっぺんに立っており…」
・「隣の女」
「ミミが住んでいるのは築四十年の文化住宅の一階の一番端。
当然のことながら、壁が薄く、階上の住人の音楽がうるさくてしようがない。
ある日、耐えかねて、二階の住人に文句を言いに行く。
住人は若い男だが、隣の部屋からは苦情がないと涼しい顔。
隣から苦情があれば考えると言われ、ミミは隣の部屋のドアをノックをしても反応がない。
しばらくして出てくるが、それは全身黒づくめでサングラスをかけた女性で、無言で立ち去る。
どうやらこの部屋には姉妹らしき女性が二三人住んでいるようだが、服装はいつも同じ黒づくめで、挨拶も全くせず、謎に包まれていた。
しばらくして、ミミの部屋の上の騒音がぴたりと止む。
階上の男は隣人に怯えていて、ある日、急に引っ越してしまう。
ミミは二階の方が静かだと考え、二階のその部屋に引っ越すのだが…。
隣人の女の正体とは…?」
・「草音」
「ミミは直人と早朝の散歩をする。
散歩道は林に囲まれ、とっても清々しい。
すると、草むらの方から何かが落ちたような音がする。
音の方に行くと、若い女性の首吊り死体があった。
降ろそうにも、踏み台は周囲に見当たらず、しかも、死体は時間が経っていた。
そのうちに、再び何かが落ちる音がする。
何が落ちたのか訝っていると…」
・「墓相」
「ミミが今度引っ越したアパートは条件はいいのだが、ただ、ベランダの向こうが墓地であった。
引っ越した最初の夜、「ゴゴッ ゴゴッ」という奇妙な音が墓場から聞こえてくる。
目を凝らしても、暗闇で何も見えず、翌朝、隣に住むボディービルダー男に尋ねても、気が付かなかったとの答え。
気になって墓場の中を歩くと、棹石が斜めにずれている墓があった。
以来、毎夜、墓場から奇怪な音が聞こえてきて、ある夜には人魂をミミは目撃する。
更に、大勢の視線を感じるようになり、気が付くと、ベランダの向こうの墓石が全てこちらを向いていた。
直人はミミの部屋に泊まり込み、ことの真相を突き止めようとするのだが…」
・「海岸」
「夏、ミミは直人、古澤、田中と海に行く。
海には夜中に着き、車の中で休んでいると、ミミは車の横を腐乱した溺死体が歩いていくのを目撃する。
翌日、ミミは昨夜のこともあり調子が悪く、また、気温も低いので、海に入る気分には全くなれない。
浜茶屋で時間を潰していると、バイトの娘がこのあたりでは水死事故が多く、幽霊がよく出ると話しかけてくる。
古澤が彼女をナンパをすると、何故かOKをもらい、彼女は彼らと浜辺で写真を撮る。
直人が彼女は仕事中だと古澤をたしなめると、娘は今年の夏は暇だから構わないと答える。
そして、暇だといろいろなものが見えると話すが、それは過去、この海岸で命を落とした死者の姿であった。
彼女は古澤に注意するよう警告して、その場を立ち去る。
日暮れ、古澤の様子がおかしい。
彼は一足先に車で休むが、突然、車から出て来て、海へと駆けていく。
彼は助けるよう頼まれたと言うのだが」
・「ふたりぼっち」
「正月。
ミミが実家に帰ると、見知らぬ女の子がいた。
少女は(多分)恵子という名で、母親が急死したため、初七日の間だけ預かっているのだという。
恵子はミミにべったりまとわりつき、決して離れようとはしない。
また、恵子には時々、顔に黒いススが付いている。
黒いススは家の廊下にも付いていたが、どこからススが出てきたのかがわからない。
その夜、ミミは恵子に何故一人でいられないか尋ねる。
恵子は一人になると横に「くろいひと」がいて、その人とふたりぼっちになりたくないと答える。
恵子が寝た後、ミミは「くろいひと」について両親に話すのだが…。
「くろいひと」の正体は…?」
・「朱の円」
「幽霊の存在の是非で、ミミは直人と大喧嘩し絶交する。
直人と別れた後、ミミが親友の美砂に幽霊を信じるかどうかを聞くと、彼女は信じると答える。
それどころか、最近、彼女の身の回りで奇妙なことが起きたと言い、ミミを祖父母の家に連れて行く。
家は取り壊しの途中で放置されていた。
台所の床には深い穴があり、美砂とミミがその穴へ降りていくと、穴の底に部屋がある。
四方は壁で床は畳だが、相当古いもので、誰が何のために作ったのかわからない。
そして、壁の一つには朱色の円が描いていった。
美砂によると、この部屋は彼女の祖父母と伯父の失踪と関係しているらしい。
数日後、美砂はミミにこの部屋について発見があったと話し、家に招くのだが…」
・「畑のあぜ道」
「ある晩、バスに乗り遅れ、ミミは駅まで歩く破目となる。
近道のため、畑のあぜ道を歩いていると、水路工事中の看板があり、その影が…」
・「『ミミの怪談』あとがき」
・「お化け人形」
「桜井は少女時代、男友達と取り壊し中の廃屋に忍び込む。
二階の部屋の真ん中に襖が置かれてあり、その下には誰かがいるようで、襖の外に黒髪がざんばらに伸びていた。
男友達が襖に手をかけようとした時、襖の下から「むぉーん」という声が聞こえ、彼らは逃げだす。
長じて、彼女はあるイベント会社に勤めることとなる。
葵坂遊園地のお化け屋敷の仕事で彼女は子供時代の体験をもとに「襖の下の幽霊」のアイデアを出す。
それをきっかけとして、次々と奇怪な出来事が起こることに…」
・「『ミミの怪談 完全版』あとがき」(文章)
「ミミの怪談」(メディア・ファクトリー)に未収録だった「お化け人形」(ミミが登場しない読み切り作品)を加えた完全版です。
「お化け人形」を読んで、楳図かずお先生亡き後、伊藤潤二先生にお化け屋敷を担当してもらったら楽しいだろうな〜と思いました。
2025年2月21・22日 ページ作成・執筆