曽祢まさこ「新・呪いのシリーズA 天使の館」(2011年8月30日第1刷発行)
カイは呪殺専門の呪術師。
彼は依頼者の寿命十年と引き換えに、憎い相手を呪殺してくれる。
さて、今回の依頼は…?
・「エンジェルハウス クライシス―前編―」(「HF倶楽部」2011年1月号)
「1940年代。
シカゴ市にあるカイの事務所に「J」がやって来る。
Jはデトロイトに住む、白黒の影を使い分ける「守り屋」であった。
彼は人形のマリーに、ドロシー・アン・マケイン(六歳半)という少女と友達になってくれないかと頼む。
マリーはサーカスに連れて行ってくれることを条件に引き受け、Jと一緒にデトロイトのエンジェルハウスに向かう。
エンジェルハウスは「エンジェルフーズ」の会長であるマケイン老の邸であった。
マケイン老は今、不治の病で死にかけ、屋敷中に親戚達が集まっていたが、彼らの注目は孫娘のドロシーに集まる。
ドロシーは会長の一人息子と貧しい女性の間に生まれた女の子で、父親が鉄道事故で亡くなった後、母親とドロシーは屋敷から追い出され、下町のアパートで暮らしていた。
ある日、母子がマケイン老のお見舞いに行くが、ドロシーは祖父に敵意をむき出しにする。
それをマケイン老がいたく気に入り、遺産の相続人をドロシーに変えたのであった。
以来、ドロシーは親戚中から命を狙われることとなる。
Jは母親から依頼を受け、ドロシーを守るが、監禁同様の生活は早や三か月。
ドロシーは気が強く元気な性質の為、ストレスがたまり、ヒステリーを起こしまくる。
そこで、Jはマリーを遊び相手にして、ドロシーを慰めようと考えたのであった。
だが、マリーもドロシーも気の強い者同士で…」
・「エンジェルハウス クライシス―後編―」(「HF倶楽部」2011年2月号、3月号)
「マリーはドロシーの身が如何に危険にさらされているか知り、彼女を守りたいと願う。
だが、ドロシーの寝室にカイの黒猫が姿を見せる。
更に、「闇の狩人」の黒フクロウも現れる。
ドロシーの運命は…?」
・「火の山―前編―」(「HF倶楽部」2010年8月号)
「N市での仕事の後、カイは部屋に戻ろうと、時空間に入ったとたん、時空嵐に巻き込まれる。
流れ流され、辿り着いた先は、十万年ほど前のヨーロッパあたり。
カイはひどく消耗しており、体力を回復しなければ、もとの世界には帰れない。
彼があたりを調べていると、川で傷ついた少年を発見する。
彼は小柄な体つきの旧人であった。
カイは少年を助け、手当てをする。
少年は「ヒノテゾク」のカリテ(狩人)の「タム」。
彼は一つ年上のカリテのキリと火の山に火をもらいに行く途中、崖から転落したのであった。
しかし、カイはタムの首飾りから真相を知る。
そこで、彼はタムにある提案をするのだが…」
・「火の山―後編―」(「HF倶楽部」2011年10月号)
「タムから一年分の寿命を先払いしてもらい、カイは仕事を進める。
一方のタムは火の山から降りてくるキリを待ち受けて、一緒に山を降りるのだが…」
「火の山」は「呪いのシリーズ」の中でもかなりの異色作です。
あとがきで曽祢まさこ先生は「原始時代が大好き」で、「一度やってみたかった」とのこと。
設定はキテレツですが、ストーリーはしっかりしていて、堅実なところに曽祢まさこ先生の凄さを感じます。
2023年5月10・12日 ページ作成・執筆