諸星大二郎「瓜子姫の夜 シンデレラの朝」(2013年12月30日第1刷発行)

 収録作品

・「瓜子姫とアマンジャク」(「ネムキ」2012年7・9・11月号)
「アマンジャクは夜、瓜長者のお屋敷に忍び込む。
 彼の姿は人間には視えないはずであったが、瓜子姫は彼を視ることができた。
 彼女はアマンジャクに彼が住む裏山に案内するよう言い、二人は森の奥深くに向かう。
 以来、アマンジャクは瓜子姫を森に連れて行くようになるが、彼女は森の精霊たちの話を聞きたがる。
 彼女は巫女ではあったが、生理が始まった頃から神様が来なくなり、予言ができなくなっていた。
 このままでは「新しい瓜子姫に代えられて」しまうため、彼女はどんなことでも未来に関することを知ろうとする。
 山姥に注意されたこともあって、彼女は森に来る回数を減らすも、精霊たちから天候について聞き、それでどうにか凌ぐ。
 ある日、彼女のもとに都からの使者が来るのだが…」

・「見るなの座敷」(「ネムキ」2009年7月号)
「ある晩、小作の与兵衛の家に旅の女が一夜の宿を求める。
 小夜と名乗る女はそのまま、彼の女房になり、以来、彼の生活はとんとん拍子。
 家のことは全て彼女がやってくれ、家の中では彼は囲炉裏の前でゴロゴロしていればいい。
 ある日、山仕事が中止になり、彼はいつもより早く帰宅する。
 家に小夜はおらず、彼が落ち着かないでいると、納戸が目に入る。
 小夜が家に来た頃、彼女が納戸を使っていいのか尋ねたことがあった。
 以来、彼女は納戸で何かしている様子であったが、いつもはぐらかされる。
 ここに小夜の秘密があると思い、彼は納戸を開くと、そこには…」

・「シンデレラの沓」(「ネムキ」2012年3月号)
「シンデレラは沓をなくしてしまう。
 お城でなくしたようだが、捜しているうちに王子様に沓がないことがばれてしまい、沓が見つからないうちはお城で働くことができなくなる。(ちなみにシンデレラの職場は第三秘書室。)
 友人からアドバイスされ、彼女は「窓際の隠者」に相談すると、遺失物を調べるよう告げられる。
 遺失物は門衛に届けられるが、門衛は遺失物保管庫に移したと話す。
 遺失物保管庫は地下にあり、それに続く廊下にはガラスの破片や鋲がいっぱいで、裸足の彼女には通れない。
 再度、窓際の隠者に尋ねると、遺失物保管庫に行くには「騎士」が必要と教えられる。
 騎士詰所で血気盛んな一人の騎士を捕まえると、彼におぶさって、彼女はようやく遺失物保管庫に到着。
 自分の沓を捜すものの、なかなか見つからず、そのうちにおチビな保管庫係やスナ※キンっぽい旅人やら集まってくる。
 結局、見つかったのはガラスの沓だけなのだが…」

・「悪魔の煤けた相棒」(「ネムキ」2011年7月号)
「娘が川面の前に佇んでいると、奇妙な男がやって来る。
 彼は「悪魔の煤けた相棒」、また、「自分の王様」と名乗り、地獄から来たと話す。
 彼女は彼に旅籠を聞かれ、かささぎ亭を教えるが、彼女はそこの主人の娘であった。
 夜更け、先程の娘が彼の部屋を訪れる。
 彼女は彼と寝に来たのだが、本当の目的は彼の背嚢であることを打ち明け、彼女が来なければ、夜に父親がナイフを持って殺しに来ると教える。
 彼は自分は相棒である悪魔との契約により「七年間体を洗わず髪をくしけずらず爪も髪も切ったことがない顔にかかる髪を指で払ったことも目から涙をぬぐったこともない」身体で、それでも、自分と寝るのか尋ねる。
 娘は父親の指図に従うつもりと答え、彼の顔から髪を払ってあげる。
 ことの後、娘は彼から背嚢を盗むも、中にはゴミだらけであった。
 ひどく怒った父親は男を殺すと息巻き、その後、絶望した娘は川に身を投げる。
 気が付くと、彼女はあの男と一緒に「地獄」にいた。
 とりあえず、彼女は彼の仕事を手伝うこととなるが、それは釜の火を絶やさないようにすることであった。
 男は他の釜を見てくると言って、彼女に釜を任せて出かける。
 彼は釜の中は見てはいけないと警告するが、この釜は彼女に関係があるらしく…」

・「竹青」(「Nemuki+」2013年5・7・9月号)
「魚客は湖南の長沙出身の青年。
 彼は科挙を受けるために上京するも、試験に失敗し、帰りの旅費も尽き、二進も三進もいかなくなる。
 呉王廟で行き倒れていると、女性の話し声がして、彼は呉王(甘寧)の前に引き出される。
 「黒衣隊」に一名欠員があるとのことで、黒い衣を着せられると、彼はカラスになっていた。
 彼は黒衣隊としては呉王廟やその周辺の監視という仕事を受け持つが、それ以外はカラスの仲間たちと気ままに暮らせばよい。
 彼がカラスの生活にすっかり馴染んだ頃、竹青というカラスが彼に話しかけてくる。
 竹青は彼を呉王に紹介してくれた雌カラスで、彼に三年前に漢陽で起きた鄭一家殺人事件について何か知らないか尋ねる。
 彼は全く心当たりがなかったものの、それ以来、竹青のことが妙に気にかかるようになる。
 実は、竹青も彼と同じ人間で、鄭一家殺人事件の唯一の生き残りであった。
 その殺害現場には目を射抜かれたカラスの死骸がたくさん落ちており、彼女はカラスなら犯人を知っているのではないかと考える。
 そこで、彼女は呉王にカラスにしてくれるよう祈ったところ、その願いが聞き届けられたのであった。
 魚客も彼女に協力し、いろいろなカラスから聞き込みをする。
 ある日、遠出をした帰り、彼は餌をもらおうとある船に近づくと、矢で射られる。
 矢は外れたものの、逃げる途中で力尽き、墜落。
 目が覚めると、人間に戻っていた。
 彼はそこで郷里の友人と出会い、郷里に戻るも、竹青のことが忘れられない。
 ある時、父親の商用のお供で岳州府に行くが…」

 「グリムのような物語 トゥルーデおばさん」の続編のような内容ですが、今回は日本もの・中国もの・西洋ものといろいろとバラエティ豊かに取り揃えております。
 もちろん、どれも傑作なのですが、個人的には「瓜子姫とアマンジャク」「シンデレラの沓」がお気に入りです。
 特に「瓜子姫とアマンジャク」は大傑作!!で、あまりに切ないラストは何度見ても心を揺さぶられます。(最後のページの瓜子姫の表情が素晴らしい!!)
 一方の「シンデレラの沓」は開放的かつユーモラスな内容で、原作の要素がほとんどありませんが、心温まる雰囲気に癒されます。

2024年7月24日/8月31日/9月2日 ページ作成・執筆

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