楳図かずお「木の肌花よめ」(1991年4月20日初版発行)

 収録作品

・「木の肌花よめ」(1966年「別冊少女フレンド」掲載)
「黒部家のあや姫は美しく、そろそろお嫁に行くお年頃。
 だが、良縁と思われた縁談がまとまった頃から、あや姫に異変が起こる。
 彼女の両手の両腕は、まるで木の皮のように変化して、彼女は臥せるようになる。
 そのため、婚約は破談し、また、その噂は町中に広まってしまう。
 ただ一人、水上という侍は、あや姫を嫁にくれるよう毎日訪れ、彼女の病気も意に介さない。
 両親は彼のもとにあや姫をやることにするが、その時から、彼の身に度々危険が起こる。
 彼は、この家にあや姫を置いていてはよくないと考え、姫を彼の家に連れて行こうとする。
 しかし、彼女を迎えに来た日、病気はあや姫の全身に広がり、姫は水上に襲いかかる。
 あや姫に害をなすものの正体とは…?」

・「悪魔の手を持つ男」(1965年「別冊少年マガジン」掲載)
「五郎の兄は「いくら食べものを食べてもそれが血にならないふしぎな病気」に侵され、病院のベッドで餓死を待つ身であった。
 兄は痩せ衰えていくが、五郎はある時、兄の右手が異様なほど、膨れ上がっているのに気づく。
 以来、夜毎、病院の患者が一滴も血のない変死体として発見される。
 そして、死体には巨大な掌のような痕が残っていた。
 五郎は、この頃元気になった兄に対して不審に思い、ある夜、病室を脱け出した兄の後をつけるのだが…」

・「青い大きい鹿の死」(1962年「東邦出版」)
「新米バスガールの浜あけみは、先輩の緑野に指導を受けることとなる。
 二人が乗るバスは「鹿号」という名であった。
 緑野はこのバスを愛し、「鹿号」の手入れを怠らない。
 あけみが一人前になった頃、仕事帰りの緑野は代議士のお抱え運転手の運転する車に轢き逃げされ、死亡。
 以来、あけみが「鹿号」を受け持つことになるが、「鹿号」は以前と違って、不調が目立つようになる…」

・「呪いの面」(1965年「佐藤プロ」)
「あや子と雪子は美人で、大の仲良し。
 交通事故をきっかけに、二人は、お面を集めるのが趣味の老人とお知り合いになる。
 この老人のコレクションには、朝霧面、夕霧面という美人を描いた面があったが、二つの面は互いに嫉妬して、争い合っていた。
 同じ場所に置いておくと良くないと考えた老人は、あや子に朝霧面、雪子に夕霧面をプレゼントする。
 だが、それぞれに帰宅後、二人が戯れに面をかぶると…」
 「百本めの針」(秋田書店)にも、同じ作品が収録されておりますが、絵柄に若干の差異があります。
 ハロウィン・コミックの方は、初出に忠実なのでしょうか?

・「大怪獣ドラゴン」(1966年「少年画報」掲載)
「天文十二年(1542年)、ある小さな漁村。
 漁師の息子、小助は海で不思議な卵を拾う。
 小助が卵を孵化させると、中からは竜の子供が出てきた。
 小助は竜に「太郎」と名付け、育てるが、太郎はぐんぐん成長する。
 ある日、腹をすかせた太郎は物置小屋をぶち破って、村で大暴れ。
 小助の一家は村人達に惨殺され、家には火がつかられる。
 そして、太郎は片目を爆薬で潰され、海へと姿を消したのであった。
 時は流れ、現代。
 その漁村があったところには小助村となり、小助の遠縁となる子孫の一家が住んでいた。
 そこの息子の一雄は、壊れた小助地蔵の中から、古びた着物を見つける。
 時を同じくして、海から片目の竜が現れ、小助村に向かって前進し始める…」

 1960年代半ばに描かれた短編を集めた単行本です。
 時代ものから怪獣ものまで幅広く収録されておりますが、目玉は中編「大怪獣ドラゴン」でしょう。
 一応、ストーリーはあるものの、「怪獣の暴れっぷり」がメインで、東京の被害は甚大です。(怪獣の通った後は全てガレキの山と化しております。)
 名作だとは思いますが、怪獣が悲惨過ぎるのと、現代編に出てくるガキんちょのせいで被害が拡大したにも関わらず、本人はまるで他人事なところが引っかかって、個人的には好きな作品ではありません。

 あと、余談ですが、目次のページに、新しく描き起こされた「木の肌花よめ」のイラストがあります。
 このイラスト、雰囲気満点で、個人的に、かなりいい出来だと思います。
 ただ、カバーの方は「しょぼ〜ん」でありますが…。

2018年8月1・9日 ページ作成・執筆

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